57 藪蛇に水①
「なんだ。」
「あ、出るの遅いです。ワンコールで出てくださいよ。大女優を待たせないでください。」
「・・・切るぞ。」
「わわっ!切らないでください!」
「だいたい、誰が大女優だよ。おまえまだ駆け出しだろうが。」
「ふふん。確かに私は駆け出しですが、最近は女子高生を中心に人気が出ているのですよ!すなわち私は優良物件!今のうちにツバをつけておいた方がいいと思いますよ?ですから、私の曲作ってください!」
「またその話か・・・何度も言わせないでくれ。もっとちゃんとしたやつに作ってもらえ。」
「自分がちゃんとしてない自覚あったんですか!?」
「要件はそれだけか?それだけだな。じゃあな。」
「ところで、今私どこにいると思います?」
「こいつ・・・はあ。風呂だろ?」
「あたりです!なんでわかったんですか?もしや、仮に外れても「これで正解になっただろう?ぐへへ」とか言って、私をお風呂に連れ込むつもりでしたね?」
「電話先の女をどうやって風呂に連れ込むんだよ・・・またやってんのか?」
「ヤルだなんてやらしーえっちー」
「ウザ絡みうぜぇマジうぜぇあとうぜぇ・・・あんまし強くねえのに、風呂入る前に飲むなよ。」
「うへへ。そうでーす。お酒飲んでまーす。私のことなんでもわかっちゃうんですね!幸せだなー!もう死んでもいい!」
「それは・・・冗談でもやめてくれ。」
「あ・・・ごめんなさい。失言でした。ごめんなさい・・・」
「いや・・・こっちこそ悪い。おまえには関係のないことだ。」
「か、関係ないなんて水くさいですよ。私を頼ってください!今日は何を言っても無礼講ですよ。なんでも水に流しちゃいます!あ、無礼講と排水溝ってなんだか似てませんか?」
「おまえなんなの?水使いなの?スプラッシュウーマンなの?」
「まだまだありますよー!私の胸で泣いてもらって、さらに涙で枕を濡らすまでがセットです。あ、泣きたいと言えば私、今日久しぶりに泣いちゃいまして、それでお酒飲んでたんですけど・・・」
「おいおい待て酔っ払い。さっきから話が突飛すぎだ。とりあえず風呂から出て酔いを醒ませ。それからなら・・・話くらい聞いてやる。」
「でもでも悲しい気持ちにさせてしまいましたし・・・」
「何がでもなのか全くわからないが、いいんだって。気にするな。」
「でも茜さんのこと・・・あ、昔の女のこと思い出しちゃいましたよね?」
「なぜ言い直した・・・あいつは昔の女じゃないし。俺の嫁は小町だけなの。あいつのは小町の墓参りのついでだ。ついで。」
「そこまで奥さん一筋だと私の立つ瀬がないんですが・・・ああ、私もさっき小町さんに会いに行ってきましたが、お供えにスズランは良くないんじゃないですか?」
「いいんだよ別に。小町はスズランが好きだったんだ。」
「そうですか・・・」
「ああ・・・」
「・・・ま、まあ!歴史を紐解いてもすごい人って短命ですし、だめだめな私なんかよりおふたりともずっとすごい方でしたし!って何言ってんだろう私・・・あれおかしいな・・・」
「おい泣いてんのか?大丈夫かよ?」
「ご、ごめんなさい!なんか暗い話になっちゃって。私あがりますね!また今度愚痴聞いてください!あ、でも作曲のことはお願いしますね。私、宗次郎さんの曲が好きなので!」
「ちょっとまt・・・切りやがった・・・・・・はあ・・・もしもし多羅尾さん?舞衣がまた泥酔して・・・そうです。こっちからかけても出ないし、あいつ今風呂入ってるみたいで・・・いやあんたマネージャーなんだからそれくらい面倒見てやってくださいよ・・・は?嫌ですよ。なんで俺が行かなきゃ・・・って、切りやがった!あいつ!・・・はあ・・・」
「すごい人は短命か・・・あいつは・・・茜は本当は何をしたかったんだろうな。」




