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49 楽器屋③

【汐】

(機材の話は小難しくて苦手ですね・・・)

 秋津くんもあえて難しく話しているわけではないのでしょうが、それでも、知らない単語が飛び交う会話というものは疲れるものです。それに耐えられる忍さんと私の違いは何でしょうか。

(やはり好きなのでしょうか・・・)

 好きなのは間違いないと思うのですが、その思いがどこに向いているのかはこの短時間ではわかりませんでした。ギターなのか、あるいは。

(いずれにしろ、この件は要追跡ですね。)

 乙女パワーが足りないこのごろ、忍さんには邪魔にならない程度にデバガメさせてもらいましょう。

 さても、いつまでもお邪魔しても良くないかと、ギターを見て回るふたりとわかれてイチカのもとに足を向けました。イチカはギター弦のエリアにはすでにいなくなっていたので、少し探すことになりましたが、ワンフロアの店舗です。程なくしてイチカの華奢な背中を発見しました。

「イチ・・・」

 声をかけようとしたその時、ちょうど朱さんがイチカと合流しました。

 ふと、私と一緒にいない時のイチカはどういった話をするのか、そんな疑問が鎌首をもたげました。

 当たり前のことですが、私がいないところでの話は知りようがなく、わかりません。

 わからないという感情は、上手くいけば先ほどのように知的好奇心を満たしてくれます。しかし、それと同時に不安にもさせるのです。

(イチカは私がいないところでどんな話をしているのでしょうか・・・?)

 私のいる位置はふたりからは死角になっています。私は行儀が悪いことは承知の上で、陳列棚越しに、ふたりの会話を聞いてみることにしました。

「あ、恋。お団子ないから一瞬わからなかったよー。」

「お団子はギター弾く時に髪が邪魔だからやってるだけ。」

「そっかー。じゃあいっそ短くすれば?」

「・・・いや・・・」

「もしかして、汐にセットしてもらうのがいいの?登校してる時はストレートだもんね!」

「そんなことは・・・」

「否定しないんだ?恋ちゃんかわいいー!」

「・・・・・・忍のギターは何がいいと思う?」

「その話を本人がいないところでやってもなー・・・何このギターメーカー。マヨネーズ?」

「これはMAYONESメイワンズ。弾きやすくて好き。抱えやすいし、忍にいいかもしれない。」

「いやいや50万円は高校生には荷が重いでしょ!何年ローン組ませる気だよ・・・」

「あ!しーちゃん先輩おいていかないでくださいよー!」

 正面に向いていた意識が急激に後ろに引っ張られました。

 ビビっと電撃が走ったかのような背中、肩まで伝播したその衝撃で大袈裟なほど震えたような気がします。

「し、しーちゃん先輩、顔赤いですよ!体調悪いとか・・・?」

「だ、だいじょうぶです・・・何でもありません。」

「お?シノはっけーん。」

 忍さんの声で私たちに気づいた朱さんがイチカを伴ってやってきます。

(え、えっと・・・っ!)

「し、しーちゃん先輩?どうしましたか?」

 困惑する忍さんには悪いですが、今は取り繕っている余裕がありません。私はこちらに向かってくるふたりから視線を切るように忍さんの背中に隠れ、身を隠しました。身長が低く、何かと不便なこの身体ですが、今この時だけは小柄で良かったと思いました。

「しぃ、どうかした?」

 しかし、私の抵抗も虚しく、忍さんの肩越しにイチカがひょこっと顔を覗かせました。

 小首を傾げるイチカの髪が揺れます。それは、ほんの数時間前、鼻歌混じりにセットしたお揃いの髪型です。

 先ほどまで感じていなかった羞恥心が追ってきて、その勢いに圧された私はつい半歩、踵をさげてしまいました。

「な、なんでもありません・・・よ?」

「・・・そう。ならいいけど。」

 イチカのこの表情は、どのような感情からきているのでしょうか。

 少し寄った眉根。キュッと引き結ばれた唇。その顔は不思議そうな、あるいは寂しそうな、ともすれば不安そうなものに感じました。

 イチカにどう思われたでしょうか。

 私の顔は引き攣っていないでしょうか。

 イチカを傷つけはしなかったでしょうか。

(私は明日からどんな顔をしてイチカの髪を梳けばいいのでしょうか・・・)


【朱】

「で、なにかいいのあった?」

 シノたちと合流してこれにて全員集合。いよいよ今日のメインディッシュが来たようだ。

「その、ギターが多すぎて迷っています・・・」

 シノとの付き合いは短い。知っていることの方が少ないくらいだ。しかし、そんな私でもシノが優柔不断なのは何となくわかる。

 だからこそ、多すぎる選択肢は混乱させてしまうかと思って近場の楽器屋を選んだつもりだったけど、シノにはまだまだ選択肢が多すぎたようだ。

 自信なさげに「何か選ぶ基準はあるのでしょうか?」と小声で問うその視線は泳ぎ、怜の前で止まっている。他力本願する気満々だ。釈迦もびっくり。

「そんなものはなーい!ビビっときたものを選ぶ!」

「投げやりすぎるだろ・・・あながち間違いでもないけど。」

 怜の反応は渋いものだが、結局こういうのは直感だ。良いと思ったものを買う。それだけだ。

 だいたい、何を買っても弾いているうちに必ず何かしらの不満は出てくるものだ。だとしたら、一目惚れして買ったとしてもなんら問題ない。

 しかしながら、ここで突き放すのならここまでついてきた意味もない。「そうは言いますが・・・」と口元をもにゅらせて困り顔を晒すシノに助け舟を出してやろう。

「選ぶ基準。いてあげるとしたら、怜は何だと思う?」

 ここは機材マニアで音楽ダイスキ、ついでに二次元オタク、略してマダオを頼ろう。ああ、なんだかチーズ蒸しパン食べたくなってきた。

「値段。」

 怜の答えに思わず、さすがはマダオだと感心してしまった。面目躍如も甚だしい。釈迦も納得。

(身も蓋もないな・・・ひとつの正解なんだろうけど・・・夢のないやつ。)

 しかし感心してばかりもいられない。若者が夢を見なくなったら終わりだ。

 まあ、確かに子どものなりたいものランキング上位に公務員がくるくらいだ。現代の子どもに夢がないのは確かなのだろう。いっそ義務教育で、なんなら今からでも遅くない、浦安のネズミに師事して、夢の何たるかを学ぶ授業を作ってもらいたいものだ。決して私がプロメテウーに登りたいから言っているわけではない。本当だよ?

 さても、その極めて現実的な言葉で納得するなら、答えは出来の悪い物か中古品となってきまう。それは助け舟ではなく泥舟になってしまう。

「もう!真面目に答えて!」

「真面目に言ってるんだけど・・・」

「じゃあ他は?ネクスト!」

「モチベーションだと思う。」

(そうそう!そういう経験者っぽいアドバイスを求めていたのだよ!)

 しかしモチベーションときたか。私もいまいちピンとこない。

 そしてわからないことを考えても、わからない。当然だね。

「モチベ?音が良い個体とか弾きやすさとかじゃなくて?」

 だからこういうのはすぐ聞くに限る。得意顔の怜に延々のご高説を賜ることになるかもしれないが。

「全てはこれに回帰する。音が良くなくても、弾きにくくてもやる気が起きないからな。だから練習に対するモチベーションを保てる楽器かどうかってことが重要だと思う。」

 しかし私の予想とは違い、怜は得意気にもならなかった。あたかも1+1が2であることを話すような、そんな顔だった。

「モチベが保てる楽器じゃないと練習に耐えれないと?」

「ああ。ギターに限らず楽器の練習が地道なのは否定できない。だから楽しくなる前に諦めて辞める人が多い。」

 なるほど。モチベとはそういう意味か。意外と理にかなっている。

「唯一の例外はギターをやりたくてギターを買うやつだな。」

「ギターをやりたくて・・・それって当然じゃないですか・・・?」

 怜のその言葉にシノは首を傾げて困り顔だ。字面だけ見れば確かに当然のことしか言っていないだろう。

 しかし、私には怜の言いたいことがわかった。

(音楽をやりたくてギターを買うのではなくて、ギターをやりたいからギターを手にするってことか。)

 確かに、どうしてもギターが必要だというやつは、たとえそのギターが弾きにくかろうが弾くし、誰かに習わずともひとりで勝手にギターを弾く。なんなら、持ってる才能分は勝手に上手くなるというおまけ付きだ。

 そういう意味ではシノは前者だと思うし、ならば尚更に買う際のアドバイスはしてあげた方がいいだろう。

「モチベーション・・・あの、私だけかもなんですが、余計わからなくなってしまって・・・それって好きなギターを選ぶのとどう違うんですか?」

 シノが迷うのもわかる。怜の言葉どおり、話が回っているのだ。

「何も違わない。好きな形、色、音。高いギターだとやる気が出るって人もいるだろうし、かえって高級品は触りたくないって人もいるだろう。人それぞれってことだな。」

「えっと、つまり・・・?」

 未だ困惑から抜け出せていないシノに、唯一後悔しない基準を教えてやろう。

「フィーリングでおっけー!ビビっときたものを選ぶってことなのさ!」

「朱の言い方はともかく・・・まあ、これが良さそうって思ったギター試奏させてもらうといい。」

 わかったような、わからないような。シノはそんな曖昧な表情を浮かべて頷いた。

 その表情は私の最初の質問の時と似ていた。しかし決定的に違うのは視線。

 そうしてシノが見つめる先は一点。

(なんだかんだと遠回りしたけど、結局は直感なのよ!)


【怜】

「あのすみません。ギターを試奏したいんですが・・・」

「はい喜んでー!!どのギターですかー?」

「あ、あっちの方にあるギターなんですが・・・」

 品出しをしていたであろう店員のお兄さんは元気でハキハキとして人当たりが良さそうだった。どうやら優しそうな雰囲気の人を選んで声をかけたようなので、ある意味当然なのだが。

「では準備しますので、おかけになってお待ちください!」

 勧められたスツールに腰かけつつ、指宿はどこか所在なさげにソワソワしている。チラチラとこちらを見上げるその視線は何かを求めるようだった。

「ギターのチューニングやアンプのセッティングをして弾く環境を準備してくれているんだ。任せて待っていればいいんだよ。」

 テキパキと準備する店員の姿を尻目に、指宿の視線に応える。

 指宿の周りには朱も橘もいるし、そんな中で俺と話したいわけでもないだろう。それでも積極的に話してやるのは初心者への最低限の配慮だ。

 他人への気遣いなんて、形以上の何もないし、普段なら我関せずを貫くところだが、店の中を連れ回した手前、少しの情も湧くというものだ。

 しかして、そんな思惑もこいつらには関係ないらしい。朱はそもそも戦力に数えてはいけないし、橘はさっきから何やら考え込んでいるようで、一言も発していない。

(あの不思議ちゃんに至ってはこの場にもいないし・・・)

 大方、弦をレジにとおしに行ったのだろうと思うが、気が付いたら姿がなかった。ついでに協調性もなかった。

「ギター買うのは初めてですか?このギター弾きやすくていいギターですよ!彼氏さんは経験者ですか?いいですよね。ギター仲間がいると心強いですよね!」

「か、彼氏さんではにゃいです!あ・・・」

 よほど緊張しているのだろうか。指宿は、ギターのチューニングをしながら話しかけてきた店員のお兄さんの言葉に、盛大に舌をもつれさせた。

 ふうっと伏せられた顔、俯いた拍子に垂れ下がった髪の隙間から覗く耳は、その端まで真っ赤に染まっていた。

(わかるぞー。どもってしまうその気持ち。)

 普段まともに人と会話できていないと自負している俺は、今の指宿の気持ちがよくわかった。

 知らないやつが相手だと緊張してうまく口が回らないし、何なら頭も回らない。

 言葉を噛んで平然としていられるのは、厚顔無恥な人間と迷える怪異の少女だけだ。大好きでしたよ。蝸牛かたつむりさん・・・

(だいたい、朱も橘もいるのに彼氏は適当すぎるだろ・・・)

 楽器屋の店員に求めることではないとはいえ、この人も大概適当だなと心の中でため息をついた。

「そうでしたか失礼しました!準備できましたよ。どうぞ!」

 どうやら俺が迷い子との別れの感涙に浸っている間に試奏の準備ができたらしい。指宿は渡されたギターを抱えて居住まいを正していた。

「おおーそれっぽいじゃん。何か弾けよー。」

「おいそこ茶化すな。指宿、ピックは持ってるか?なければここにあるやつ借してくれるから。」

「え、ピックって常に持ち歩くものなんですか?」

「そんなの怜だけじゃない?」

「いや、ギタリストは割と持ってたりするよ。」

「そうなんですね・・・すみません。ピック借りてもいいですか?」

「はい喜んでー!・・・あ、ごめんなさい。ちょっと呼ばれたので外しますね。終わったら声かけてください!」

 指宿の「あ、はい・・・」と呟かれた言葉は中空に消え、捨てられた子犬のような視線はインカムを抑えながら去って行くその背中を見送っていた。初心者だと伝えたにも関わらず少々放任すぎる気もするが、経験者の取り巻きがいることに信を置いたのだろうか。というか、さっきから喜びすぎだろ。小さな幸せで生きていくタイプですか。

「えっと、何をすればいいんでしょうか・・・?」

 よるべを失った視線は回り、必然的に上目遣いになった指宿と目があった。

 ふとした拍子に流れる亜麻色の髪。緊張からか、ぎこちない微笑みを湛える頬は少しだけ上気して見えた。

(・・・こいつストラト似合うな。)

 覗くは細く繊細な指、メイプル材に劣らない白さのそれは、まるで赤ちゃんの手を握るように柔らかくネックを包み込んでいる。

 身じろぐように動いた足は内向きになって膝が合わさり、その華奢な足にのる白いストラトが指宿に華を添えていた。楚々として控えめな態度は指宿の謙虚さの表れなのだろうか。

(どこかの誰かとは大違い・・・)

 無遠慮な視線を向けてしまったかと、ひとりバツの悪さを感じて顔を逸らしたその先は朱。俺の視線を会話のパスだと受け取ったわけではないと思うが、視線を向けたとほぼ同時、朱が口を開いた。

「適当にコードでも弾けばいいんじゃない?」

「なるほど・・・じゃあとりあえずEmイーマイナーで・・・」

「なぜにそのチョイス?」

「だ、ダメですか?じゃあ何なら・・・?」

「え?メジャーGとか?」

「Gはちょっと・・・指がきつくて、ですね・・・なんでGなんですか?」

(何故Gか・・・ふっ・・・決まっている。真実はいつもひとつだ。)

 ギタリストが曲を作るとキーがGになりがちだからだろう。それすなわち全ギタリストに刻まれたいにしえ聖痕せいこん。もろたで工藤!あ、GuitaristギタリストのGだと思った人は反省してください。

「ギタリストのGですか?」

「うん?いやEmの平行調だから言っただけ。特に深い理由はない。」

「え、えっと・・・?」

「おまえは場をかき乱すな・・・もう黙っとけよ・・・」

 朱の首根っこを掴んで指宿から引き剥がす。指宿の邪魔をしていたわけだし、少々手荒になったのは許してほしい。決してドヤ顔晒しておいて推理を外した恥ずかしさを誤魔化したかったわけではない。あと指宿さんは反省してください。

 俺が掴んで乱れた制服をなおしつつ「服が破けちゃうだろ!」と言う朱はカラカラと笑っていて楽しそうだ。

 字面は怒っているように見えるその言葉も、手に持つスティックを振りながら「スティック買ってくるー」と去っていく朱の後ろ姿を見るに全く気にしていないことがわかった。

 もはや試奏に付き合わないのかよという当然のツッコミは朱には通じない。というか、まだレジ通してなかったのかよ。

「Em で問題ない。オープンコードで鳴りを感じられる。」

「は、はい・・・っ!」

 ゴクリンコとでも聞こえてきそうな調子で喉を鳴らした指宿は「失礼して・・・」と呟いてローポジションのEmを響かせた。

「ぉわ!音大きい!」

 驚きの声に打ち切られたギターの音は尻切れ。さっきまでとの表情の落差に思わず苦笑が漏れてしまった。

「わ、笑わないでくださいよ!」

「ああ悪い・・・日常だとこの音量って中々ないもんな。」

「確かに大きいですね。他のお客さんは気にしないのでしょうか?」

 ギターの大音量に触発されたわけではないだろうが、先ほどまで黙っていた橘が小首を傾げて口を開いた。

「私のギター迷惑ですか!?」

「あ、ごめんなさい!そんなつもりはありませんでした!」

 慌てて声を上げる指宿。慌てて否定する橘。ふたりハ同じようにあワあワしていた。略してはわわしていた。

「店の人が設定した音量だから大丈夫だ。ただ逆に言うとこれ以上大きくしてはダメって意味でもある。」

 人の耳とは不思議なもので、音量が大きいと良い音に聞こえるから、その店のできる最大限の音量をセットしてくれる場合が多い。たまに、エフェクターの試奏のときに、エフェクター側で音量をプッシュしてしまって下げてくれと言われることもあるが、それさえ注意すれば難しく考える必要はない。

「お?シノなかなか様になってるねー。ストラトはどんな感じ?」

 ついと視線を上げて指宿の頭越しにその姿を視認する。声の主、朱はスティックをカバンに入れながらこちらへ歩いてきていた。

「なんだか音がキラキラしてます!・・・のようなきがします・・・合ってますか?」

「シノがそう思うのなら、それが正解だよ。」

「なんだか、人を食った言い方ですね?」

 橘が向ける視線は半眼。ねめつけられた朱はすまし顔。微笑を湛えるその表情に、ただ、いつもの適当さは感じられなかった。

「音楽に唯一絶対の答えなんてないんだよ。感じ方なんて人それぞれ。みんな違うものを持ってる。だから、それを持ち寄ったバンドはいいものができるし、でもだからこそ、衝突するんだから。」

 それは当然のこと。みんなわかっていること。でも、ともすれば見えなくなってしまうこと。

 少し温度の下がった一座、誰も二の句を継がない中、店のbgmだけが俺たちの間を流れていった。

「・・・・・・街角の楽器屋で何恥ずかしいこと言ってんだよ。」

 考えることしばし、ない頭を捻って絞り出した言葉は、そんなお為ごかしだった。

「あちゃー怜くんの黒歴史がまたひとつ増えちゃったかー。」

「言ったのおまえだよね!?」

 華麗なるすり替えである。あまりのよどみ無さに例の一族も裸足で逃げ出すレベル。

(やっぱり他人に気を遣っても碌なことがない。俺の気遣いを返せ・・・でも・・・)

 何か、何か引っ掛かりがあった。

 適当なことを言っているのはいつもどおり。声音も、表情も。ただ一瞬、目が笑っていないように見えた。

(・・・気のせいか?)

 一回のまたたきの後、悪戯っぽい笑顔を浮かべる朱はいつもどおりに見えた。

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閲覧ありがとうございます。面白いと思っていただけましたら、
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