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37 自分のものなのに、自分より他人によく使われるものってなーんだ?②

【忍】

 恥ずかしいです。舌がヒリヒリします。

 急に話したせいか、あるいは、やはり先輩たちに囲まれて緊張しているのでしょうか。緊張を少しでも和らげるために物理的に距離を置いて座ってしまいましたが、みなさんに変に思われてはいないでしょうか。

 ともあれ、盛大に噛んでしまった舌は動くのでまだもう少し頑張れそうです。しかして、小声になってしまった私の名前は伝わったでしょうか。

「Si,(シィ) S'il nom des choux?(シノォデシュー)なぜ急にフランス語?怜、キャベツ持ってる?」

「いや持ってないけど!?なぜにキャベツ?」

「だってシノが、怜がキャベツに名前付けたら名前教えてくれるって。」

「おまえは俺に何をさせるつもりなんだ!?」

 先輩に向けられた視線と言葉はまともに受け取ることができず、曖昧な愛想笑いを返すことしかできませんでした。

(ふ、フランス語?・・・クロエ先輩ってやっぱりフランス人なのかな?)

「その、名前・・・」

「あ、シノって嫌だった?」

「いえ!あだ名って今までなかったので嬉しいです!そうではなくてですね・・・クロエ先輩ってフランス出身とかですか?」

「へ?」

 予想外、といった表情です。これはどうやら何か勘違いをしていたようです。

「指宿・・・こいつはChloeクロエじゃなくて黒江だ。ついでに名前が朱だ。」

「黒江朱・・・黒と赤・・・」

「おっ!言うねえシノ!黒と赤の厨二カラーネームだとでも言いたいのかな?」

「い、いえ!そんなつもりは!」

 どうやら私の思考は黒江先輩の日本人離れした見た目に引っ張られていたようです。

(真紀ちゃんのときもそうだったけど、見た目で人を判断しちゃだめだよね・・・)

 偏見を抱える気持ちに楔を打ち込み自戒とし、頭を整理しました。

「ま、シノも好きに呼んでよ。」

 そう言う黒江先輩はさっきまでの意地悪な表情を引っ込めて、カラっとした笑顔を浮かべていました。

 後腐れのないその表情は、ひとつのことに固執しない性格を表しているのでしょうか。

 黒江先輩に続き、五月雨式に自己紹介してくれた先輩方に応えつつ、何と呼ぼうか考えます。

(せっかくならあだ名が良いかな・・・?私がシノなら・・・)

「では・・・朱ちゃん先輩、恋ちゃん先輩、しーちゃん先輩でいいですか?」

「モーマンタイ。」

「イチカそれ気に入ってるのですか?・・・わ、私もモーマンタイです。」

「うん!オーキードーキー!あ、怜はどうする?」

 先輩方に賛同をもらい一安心、残すは鬼門のみです。

「先輩は・・・」

「え、なに・・・?」

「先輩は・・・先輩です・・・っ!」

「ああそう・・・」

「はい・・・」

 先輩は、ただ何となくですが、先輩がしっくりする気がしました。

 苦笑いする先輩は否定的でも肯定的でもない、曖昧な表情を浮かべています。

 それ以上何も言うことができなかった私は、先輩に、あるいは似たような表情を向けることしかできませんでした。


【恋】

 今までずっと、しぃとふたり穏やかな日々だった。

 ギターを弾いて、しぃとおしゃべりをして、そうやって過ぎていくのだと思っていた。

 しかし目の前にあるのは穏やかさとは無縁の大騒ぎ。

 いっそ狂騒とも言えるそれは、それでも、嫌な気持ちはしなかった。

「さーて、宴もたけなわではありますが、下校時刻も近いのでこのへんでいったん締めたいと思います!」

 朱が注目を集めるように立ち上がる。そしてそう言うや否や帰り支度を整えはじめ、いの一番に準備を終えていた。

 途中、「合鍵渡しておくね!」としぃに鍵を手渡していた。秋津が鍵を持っているかは知らない。しかし、たとえ持っていなくても朱と秋津はクラスが同じだし、クラスが違うしぃに渡しておくのは妥当な線だろう。

「よーし二次会いくぞー!私に続けー!」

 勢いよく片手を掲げる朱に続く者はいなかった。

 ただ大きなため息だけが聞こえ、その主、秋津はこめかみを抑えていた。

「おまえどんだけ打ち上げ好きなんだよ・・・行かねえよ。」

「なんだとー!じゃあ怜は来なくていいよ!シノ行こう!」

「あ、すみません。このあと家の手伝いがあって・・・」

「げげんちょ!?汐は!」

「スーパーのタイムセールがあるので無理です。」

「・・・れ、恋は?」

 私か。

 今日は特に用事はない。用事はないけれど、何もないということは練習をする時間があるということだ。だから私の答えはこうなる。

「練習が終わったらいいよ。」

「遠回しな拒否!?わ、私ってもしかして人望ない!?だめだ怜くん慰めて・・・」

 会話をしながら全員で部室を出て、廊下に溜まる。

 朱がひとり窓に向かってしな垂れているのを尻目に、しぃが部屋の鍵をかけていた。

「・・・・・・はあ。どこ行くんだよ?」

「やったー!怜くんやっさしー!私ドリア食べたい!」

「この前も同じもん食ってただろ・・・」

「サイゼは神!」

(別に拒否したつもりはなかったけれど。まあ、練習が終わってから向かってまだ居るようなら合流すればいいか。)

 今までは穏やかな日々だった。

 そしてそれ自体、私は嫌いではなかった。むしろ、ずっと続けばいいとさえ思えるほどだった。

 しかし。

(こういう騒がしいのも悪くないのかもしれない。)

 私は今日の練習メニューを組み立てつつ、傍らではサイゼのメニューを思い出して先行して歩くみんなの背中を追った。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 ふう、やっと演算が終わりました・・・さすがにこの量は全知全能な私でも堪えますね・・・

 一段落したところですし、少し様子でも見ましょうかね!うーん。どれどれ。

 やは☆ようやく仲間をゲットしましたか。よかったですねー。

 しかし遅々として進んでいませんね。彼にもう一度会える日はいつになるのか・・・

 まあ、最近はずっと楽器を弾いているようですし、これならこのまま音楽の道に進みそうなので遠からずといったところでしょうが・・・ああ、そういえばこの間の演奏はクールでしたね。良い暇つぶしになりました。

 さてそろそろ作業に戻りますか。はあ、ほんとになんで宇宙って存在するのでしょう。いや知ってますが。

 私の癒しのためにも、期待していますよ。

 もっと私を楽しませてください茜。

Si,S'il nom des choux?

グーグル翻訳、フランス語、音声再生→◎


20230525サブタイトルの附番を変更しました。

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