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毛玉幻獣グリ子さん  作者: ふーろう/風楼
第三章

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幻獣災害演習


 数日後。


 ユウカが道場での放課後の鍛錬を終えて帰宅すると、母親が手紙が来ているよと、リビングのテーブルに置いてあるよと教えてくれる。


 学生であるユウカに来る手紙と言えば、会員になった薬局の宣伝くらいのものなのだが……母親がわざわざそんな報告をしてくれるということは、そうではないのだろう。


 一体誰からの手紙なのだろうか? と、首を傾げながらユウカは洗面所へと向かい手洗いうがいをすませ、自室に戻って鞄を片付け着替えを済ませ……それからリビングへと向かう。


 そうしてテーブルへと視線をやると、町役場との文字が印刷された茶封筒があり……役場が一体何の用だろうと更に首を傾げたユウカが封筒を開くと……中から折りたたまれた紙が出てくる。


 それを広げてみるとまっさきに目に入ってくるのは『幻獣災害対策演習開催のお知らせ』との印刷文字で……課長名義で書かれたその手紙には、課長が選んだ人物を集め、幻獣災害が起きたらという仮定のもと、大規模な演習を開くことになったと、大体そんなことが書かれている。


 参加は任意、ささやかな参加報酬があり、昼食も用意され……もし良い成績を残せたなら、国営のスポーツ施設やスパ施設など、様々な施設の無料券をかなりの量もらえるようだ。


「……演習かぁ、演習……。

 怪我しないように対策されてるって書いてあるし、悪くないかも……」


 その手紙を読みながらユウカは、あまりの内容の良さに思わずそんな独り言をもらし……そうしながら更に手紙を読み進めていく。


 演習内容としては、幻獣の捕獲と召喚者の鎮圧。


 幻獣に攻撃することは一切許されず、その代わりに幻獣が反撃することもないが、幻獣は全力で参加者の妨害をしてくる。


 そんな幻獣をなんらかの方法で捕獲したなら得点が与えられ……多数いるという分体は1匹につき1点、本体は20点とし、その点数の合計によって成績が決定される。


 召喚主への攻撃は、会場内に怪我の防止を目的とした、強力な結界が張られているため、ある程度までは許容されるが……明らかに重傷を負わせようだとか、命を奪おうだとか、そういった意図を感じる攻撃は即失格となる。


 そして結界があるために召喚主は一切手加減無しの反撃をしてきて……犯人を傷付けずに逮捕するということの難しさをこの演習で経験して欲しい、とのことだ。


 召喚主を鎮圧、逮捕した場合は20点だが、召喚主からの攻撃を受けてしまったなら1点、召喚主に制圧されたなら10点の減点が行われる。


「ふぅん……結界、結界かぁ。

 結界があるなら私も本気で動けるかな? でも怪我を負わせるような攻撃は駄目、かぁ。

 うーん……幻獣への攻撃は駄目で、幻獣は妨害をしてくる……となると、召喚主を速攻倒すとかも難しいのかな。

 んー……召喚主はともかく、幻獣の情報が欲しいなぁ」


 なんてことを言いながら更に視線を滑らせていくと……二枚目に続くとの文字が出てきて、ユウカはその文字に従って手紙をめくり、二枚目へと視線を落とす。


 すると参加幻獣についての文字が出てきて、写真を貼り付けてコピーしたと思われる白黒画像が出てきて……すっかりと見慣れた、ユウカが見間違えるはずもない、仲の良い友人と言っても過言ではない……笑みを浮かべた幻獣の姿が視界に入り込む。


『幻獣 グリフォン亜種

 召喚主 矢縫ハクト

 多数の小型眷属を召喚でき、防御力、跳躍力に優れ、捕獲は容易ではない。

 実績として虫型幻獣災害の鎮圧があり、虫型幻獣をクチバシで捕食し―――町役場の見解としてその保有魔力はかなりの高ランク、最上位に位置する可能性あり』


 更にはそんな説明文まで書かれていて……ユウカは大口をあけて唖然とする。


 一体全体どうして? 何故?


 課長もハクトもグリ子さんも、いつのまにこんなことを……?


 呆然としながらもう一枚ある手紙を確認してみると、それはどうやら特別に、ユウカだけに宛てられたもののようで……まずは課長さんと思われる筆跡の手書き文章が目に入り込む。


 そこにはぜひユウカも参加して欲しいと、大体そんなことを当たり障りのない文章で書かれていて……そしてその後にはハクトの筆跡と思われる文章が続く。


『こんな機会はそうないので可能であれば参加するように』


 端的かつ無感情、なんともハクトらしい文章の後には一体どんな意味があるのかグリ子さんの肉球スタンプがぺたりと押されていて……ユウカはそれを挑戦状だと解釈する。


 この流れでグリ子さんがわざわざこんなことをするのだから、それはユウカに参加を促すものであるはずで……つまりそれは挑戦状な訳で。


 まさかあのハクトとグリ子さんから……道場を通う者として、ちょっとした憧れの対象でもあった挑戦状をもらえるとは夢にも思わず、それを心から喜んだユウカはニヤリと、不敵な笑みを浮かべながら挑戦状兼役所からの手紙を、胸元にしっかりと……変に傷つけたりしないように丁寧に抱き寄せ、そうしてから自室へと駆けていく。


 そうしたならそれを賞状などを飾るための額へと納めて……納めた額を学習机の上に飾り、満足げに眺める。


 日程は今週の週末、会場は町役場。


 午前10時から開始、終了は午後16時。


 相当な長丁場になる、運動用のジャージやスポーツドリンク、タオルや着替えの用意も必要かもしれない。


 武器に関しては特に記載されていないが……まぁ、自分には必要ないだろう。


 防具もいらない……が、ミニグリ子さん捕獲用の道具、網や袋を用意するのはありかもしれない。


 他の参加者と違ってユウカには、グリ子さんとハクトのことをよく知っているというアドバンテージがある。


 何ならハクトと組み手をしたことや、グリ子さんを捕まえようと奮闘したこともあり……有利も有利、最優秀成績者はまず間違いなくユウカになることだろう。


 だけども油断はしない、慢心はしない……週末までの数日間を使って出来る限りの準備をしてやる……何なら誰か助っ人を呼んでしまうのもありかもしれない。


 タダシは参加するのだろうか? ブキャナンはどうするのだろうか?


 そんなことまで考えたユウカは……それから夕食を作り上げた母親が呼びにくるまでの間、自室で仁王立ちになりながら思考を巡らせ続けるのだった。


お読み頂きありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[一言] となりの ラスボスからは にげられない! 眷属あたりで「あっ」てなりました 一体何がはじまるんです? ああ、だいさんじ えんしゅうだ…
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