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毛玉幻獣グリ子さん  作者: ふーろう/風楼
第二章

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帰還


 近くの商店街までソフトクリームを食べにいったなら、施設に戻り、大浴場へと向かうグリ子さんとユウカと、幻獣達を見送り……それからハクトは役所へと向かい、タダシと役所の人間が中心となって行われていた送還準備を手伝った。


 体育館のように天井が高く広く、暴れる幻獣にも対処できるよう、分厚いコンクリート壁に覆われた建物の床に魔法陣を描き魔力を流し込み……戻すべき世界を隣の部屋に配置されたコンピューター群で演算し……。


 そんな中でハクトに出来ることは、ハクトが考えていた通りに無いに等しかったのだが……それでも出来る範囲のことを手伝って……夕暮れ時。


 美容マッサージを終えてその毛をつやつやと光らせた一行が施設の送迎バスで役所へとやってきて……三幻獣を一匹ずつ順番に送還陣に配置しての送還儀式が開始となる。


 開始となってすぐにハクトが、三幻獣それぞれに、頭や翼、手などにグリ子さんの羽毛が飾られていたり握られていたりすることに気付き、タダシ達に「あれは大丈夫なのか?」との視線を送るが、タダシ達は「まぁあのくらいは構わないだろう」という軽い態度で流し、儀式は順調に進められていく。


 そうしてまずは雷獣、次に氷鳥、最後に炎猿が送還されることになり……それぞれ満足そうな笑みを浮かべて、ハクト達が見守る中、魔力と陣が放つ光りに包まれて……何の問題も起こることなく元の世界へと帰っていく。


 あんな連中に召喚されて、役に立たないから別の幻獣に乗り換えるなんてことを言われて……その手伝いなんてことまでやらされて。


 恐らくはまともな扱いを受けなかったのだろうし、まともな食事も環境も与えられなかったのだろうけど……それでも最後には笑みを浮かべてくれて……。


 そのことにハクトはどこか申し訳なさそうな表情をし、グリ子さんとミニグリ子さん達は満足そうにうんうんと頷き……ユウカは少しだけ寂しそうな表情をし……タダシや職員達はとりあえず無事に終わって良かったと安堵の表情をする。


 そんな風に送還が終わったなら、片付け作業が始まり……モップなどを使っての清掃作業が始まり、清掃作業まで手伝ったハクト達は、すっかりと暗くなった夜道を歩いて施設へと戻っていく。


 明日になれば旅行は終了……色々とトラブルもあったりもしたが、大体については楽しめた、良い旅行だったと言える内容で、グリ子さんの食に関しての発見などもあり……ハクトはなんとも言えない満足感に包まれていた。


 グリ子さんもまた美味しいものをいくつも見つけられたという満足感があり……ミニグリ子さん達も同様で……そんな中一人だけユウカは、送還に関して思う所があるのか複雑そうな表情を浮かべてはいたが……それはそれで、これから幻獣を召喚する身としては良い経験だったと言えるだろう。


 あの連中を見て、振り回された幻獣を見て、ユウカであればそのことを反面教師とするはずで……良い糧とするはずで。


 色々と思うことに対して、考え、悩むことすらも将来のためにはプラスになるはずだと考えてハクトは何も言わずに足を進めていく。


 そうやって施設に帰り、部屋へと帰ると……施設の人が気を使ってくれたのか、それとも例の教育者が手配してくれたのか、豪華な料理が囲炉裏の周囲に用意されていた。


 エビではなくタコを使ったタコしんじょに、干し柿を薄く切り、同じく薄く切ったバターを重ねたという風変わりなデザートに、山盛りいっぱい季節の野菜いっぱいのサラダに、囲炉裏での焼き魚に。


 更にハクト達は部屋に到着すると同時に、囲炉裏の自在鉤に吊るす鍋や、タコを中心とした刺身の盛り合わせ、野菜たっぷりのタレにつけて食べるためのソバや、イノシシ肉を使っているらしい、小さなすき焼きセットなんてものまでが運ばれてくる。


 それらは明らかにハクト達とグリ子さんのために用意された代物で……あれこれと問いかけるのも無粋かと頷いたハクトは、黙ってそれを受け入れ、ユウカもまた困惑しながらもそれに続き……グリ子さんとミニグリ子さん達は目を見開き、キラキラと輝かせながら、それらの料理を見やり……ハクトの「いただきます」という掛け声に合わせて「クキュン!!」と声を上げてから、元気よく勢い良く、昼間にも散々食べたばかりなのに飽きたような様子を見せることなく食べていく。


 その量はサービスのしすぎというか、気の使いすぎというか、明らかにハクト達には多すぎるものだったのだが、いざとなれば食べたものを魔力に変換できるグリ子さんがいることで、全く問題なく食べ進めていく。


 そうして完食したなら……淹れたてのお茶が運ばれてきて、ついでに職員から、


「大浴場は何時まででも使って良いとのことで……マッサージの方も、このあとすぐなら対応しますよ」


 との声が上がる。


 至れり尽くせりというか何というか、流石にここまでしてもらえることはしていないと思うハクト達だったが、施設側の善意を断るのもどうかと思われて、ハクトもユウカも笑顔でその声を受け入れる。


 受け入れて茶を飲んで……腹が落ち着いたなら着替えを持って、それぞれ男湯、女湯へと足を運んで……それぞれの方法で疲れを癒やしていく。


 ハクトはサウナで、ユウカとグリ子さんは美容マッサージで。


 それぞれ存分に堪能し、少し過剰なくらいに堪能し……ぐったりと体が重くなるまで堪能したなら、水分補給をしっかりした上で寝床へ。


 あとはもう目をつむった瞬間眠ってしまったというような熟睡具合となって……そうして朝。


 身支度を終えたハクト達は、帰るための荷造りと……部屋の簡単な清掃を行っていく。


 本来であれば清掃まではしなくて良いはずなのだが、ハクトにとって今回の旅行は修学旅行、あるいは合宿のようなものとなっていて……そうした目的の宿泊であれば使い終わったあとの清掃もまた大事な学びであると言えて……施設の職員から清掃道具を借りてまでしっかりと清掃を行い……終わったならすっきりとした顔で、青空の下、なんとも軽い足取りで駅へと向かっていく。


「……さて、明日からはそれぞれ仕事と学院といつもの日常に戻る訳だな。

 ……ううん、十分に休めたしリフレッシュも出来たし、良い経験も出来た。

 風切君も学業に身が入ることだろう」


 その途中ハクトが、なんとも爽やかな笑顔でそんなことを言い出して……それを受けてユウカは、旅行の最後の最後に、


「そう言う話はせめてお家に帰ってからにしませんか!?」


 と、そんな悲鳴を上げることになってしまうのだった。


お読み頂きありがとうございました。

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