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毛玉幻獣グリ子さん  作者: ふーろう/風楼
第二章

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組み手

 

 今回行われる組み手は、ユウカにとってかなり不利な条件となっていた。


 魔力を使って良いとなってはいるが、ユウカが本気を出せば相手に怪我をさせてしまうだろうし、施設を壊してしまうだろうし……その二つを禁止されるということは、本気を出すなと、手枷足枷を付けた条件で戦えと言われているも同然のものだったからだ。


 それでもユウカが不満を口にしなかったのは、その二つがごくごく当たり前の、至って常識的な内容であったということと……ハクトがグリ子さんの力を借りることなく、一対一の組み手を望んだからだった。


 幻獣召喚者であるハクトの全力となると、召喚した幻獣であるグリ子さんの力も含まれるというのが通例で……幻獣の力を借りずに組み手をするという今回の条件は、ハクトにとっても手枷足枷を付けられたようなものだと言えたのだ。


 そしてそのグリ子さんはつい先程、見事なまでにユウカを翻弄していた訳で……その力を使えばハクトがユウカに、楽に勝てたであろうことは明白だ……と、そうユウカは考えていた。


 実際のところはやってみなければ分からない……ユウカもグリ子さんも色々な面が未知数となっていて結果は誰にも……神々にすら予想出来ないものだったのだが、己を過小評価するきらいのあるユウカにとっては、そうではなかったようだ。


 ともあれユウカはその条件を素直に飲み、少しの休憩と水分補給をしてから運動場の中央に立ち……そしてそんなユウカに向かい合って、ジャージ姿のハクトが立っている。


「お願いします!」


 そんなハクトにユウカがそう声をかけると、ハクトも「お願いします」とそう返し、両拳を持ち上げて、顔の前辺りで構えてのオーソドックスな構えを取る。


 幻獣召喚者はある程度の自衛の手段を要求されることが多く、学院でも様々な戦い方を習うことになる。


 その中の一つが空手で、もう一つが柔道で……ハクトはそれらをしっかり学んだ上での護身術を得意としていた。


「えぇっと、先輩は空手と柔道の……有段者なんでしたっけ?」


 そんなハクトに対し、ハクトと似たような構えを取ったユウカがそう声をかけると、ハクトは苦笑しながら言葉を返す。


「有段といっても初段だからね、自慢出来るようなものではないかな。

 ……ああ、後は知り合いに逮捕術をいくらか教えてもらったかな」


「あ……そうなんですね、逮捕術ってことは剣道とか警棒とか、後は杖も習うんでしたっけ。

 それと関節技……?」


「まぁ、大体そんなところだよ」


 と、そんな会話のせいで、これから組み手をするという雰囲気では無くなりつつある空気を引き締めるためか、まずはハクトが正拳突きを放つ。

 

 するとユウカは「んー、どう戦おうかなぁ」なんて声を上げながら上体を反らし、あっさりとそれを避けてしまう。


 学院などで教わったことを忠実に守って戦うハクトと違って、ユウカの戦い方は自由なものであった。


 道場では道場の教えに従うし、学院では学院の教えに従うし……だけれどもそれはそれとして、やってみたいことは全部やってみるというタイプだった。


 映画やドラマなどでスタントマンが格好良いアクションをやっていれば、それを真似して、なんとか実戦で使えないものかと研究し練り上げ……結果有用でなければあっさりと捨ててしまう。


 二ヶ月三ヶ月、半年という時間を使ったものでも、捨ててしまう時はあっさりしたもので……一度捨てた技を再び使うことはほとんど無かったのだが、今回のような組み手であれば、気心の知れたハクトであれば、そういった技を出しても受け入れてくれるはずと、そう考えてユウカは「うん」と声を上げながら頷き、早速とばかりに技を放つための行動を開始する。


 反らした上体を更に仰け反らせ、勢いよく振り上げた両手を床について、両足でもって床を蹴り、その勢いで下から上への蹴り技を放ちながら、ピンと真っ直ぐに伸びた逆立ちの状態に移行する。


 そしてその蹴りを避けたハクトに対しユウカは、逆立ちのまま足を大きく広げて、足を広げたまま『両手』で床を蹴り、大回転をしての連続蹴りを放とうとする。


 それを受けてハクトは、後方に飛び退っての回避をし、ユウカの次の動きに対応するために静かに構えるが……ユウカはすぐには回転を止められないのか、しばらくの間回転し続ける。


 回転し続け、ゆっくりと動きを緩め……回転を止めたならさっと立ち上がり、自らの口を両手で抑えて「うぇっ」とえづく。


「いや、まぁ……うん、そんな風に回転したなら当然目を回してしまうのではないかな……?

 サーカスの団員さんなんかは、普段から目を回さないようにトレーニングしているそうだが……」


 そんなユウカに対しハクトがそう声をかけると、口を抑えたままのユウカはこくりと頷いて……今度は先程とは逆方向に回転しながらの、華麗な連続回し蹴りを放っていく。


 素早く、上中下段にしっかりと蹴り分けて、それでいて必要以上の力は込めないようにしての手加減をし。

 

 運動靴でもってキュッキュキュッキュと音を立て、先程とは逆回転だから目は回らないはずと、そんなことを考えているらしいユウカに対しハクトは、同じくキュッキュと音を立てながらの後ずさりを繰り返し……そうして冷や汗を浮かべる。


 逆回転だから目が回らないなんてことがあるはずもなく、むしろ先程よりも速く回転しているからにはひどく目を回してしまうはずで……ハクトがそうやってユウカのことを心配していると、何度かの回転蹴りを放ったユウカは、


「うん! 治った!!」


 と、そんな声を上げてから、しっかりと両足で立って構えを取って……流石に懲りたのか回転はせずに、軽く鋭く、拳を放ち蹴りを放ち……怪我をさせないようにと手加減をした、手加減をした分だけ手数が増えた連撃を放つ。


 そんな連撃をハクトは冷静に避けて、構えた拳や足で受けて弾き、直撃しないように対応していく。


 軽く鮮やかに跳ね飛びながら連撃を放つユウカに、重く堅実に確実に連撃を防ぐハクト。


 ユウカ程ではないにせよ、ハクトもまた相手に怪我を負わせないようにと手加減をしていて……そのまま勝負が付くことなくユウカの連撃が繰り返されていく。


「クッキュンクッキュン!」


 すると観客のグリ子さんがそんな感嘆の声を上げてきて……同じく運動場を利用していた面々や、職員の視線を受けながらハクト達の組み手は更に激しさを増していくのだった。


お読みいただきありがとうございました。

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