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毛玉幻獣グリ子さん  作者: ふーろう/風楼
第二章

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運動場で


 翌朝。


 小さな窓から注ぎ込んでくる朝日を受けて、一切の眠気の残っていない、爽やかな目覚めを迎えたハクトが起き上がり……顔を洗うべく部屋を出ると、洗面所までの道中の光景が、ユウカとグリ子さんが不在であることを伝えてくる。


 寝室の戸は開けっ放し、そこから除き見える布団は起きた状態のまま、そして洗面所までの道のりにグリ子さんの羽根が落ちていたりして……それを追いかけて洗面所へと向かえば、使ったばかりといった様子で、洗面所のそこかしこが水に濡れている。


「ふむ……」


 朝風呂にでも行ったかな? と、そんなことを考えながらそんな声を漏らしたハクトは、まず顔を洗い歯を磨き、ヒゲを剃って身支度を整え、そうしてから洗面所や寝室を軽く片付けて……着替えを済ませる。


 着替えを済ませたなら昨日着た服や浴衣をまとめ、洗面所に置いてあるランドリーボックスへと押し込み、清掃員が入ってきても良いようにと貴賓室の各所を確認していく。


 朝食を終えたならまたここに戻ってくる訳で、まだそうする必要も無さそうだが……それでも念の為、いつ他人に見られても構わないようにし……そこでようやく時計を目にし、今が何時であるかに気付く。


 朝6時。


 流石にまだ食堂も開いてないだろう時間で、起きるには少し早い時間で……さて、ユウカ達は何処に行ったのかな? と首を傾げたハクトは、玄関側へと向かい、そこにある施設の案内図を改めて見やり……そうしてここかと頷く。


 頷いたなら一旦部屋に戻り、運動用のジャージを取り出し、それに着替え直し……ついでに何枚かのタオルと財布や鍵などを持って貴賓室の外に出て、しっかりと戸締まりをした上でそこへ……室内運動場へと向かう。


 室内運動場は概ね、学校などにある体育館と同じ作りとなっていた。


 板張りで、壁際には木製のハシゴのような器具……そこを登ったり懸垂をしたりする肋木があり、学校などの体育館程天井は高くないが、それなりの高さとなっていて……そして床板には様々なスポーツに使うのだろう、赤、黄、青色の線が描かれ複雑に絡み合っている。


 そんな運動場には何人かの、鍛錬中のものと思われる人の姿があり……そして運動場の中央ではユウカが、朝練のつもりなのか5羽程のミニグリ子さんと追いかけっこのような遊びを一生懸命にやっている。


 ふわふわと宙を浮かぶミニグリ子さん達と、それを一生懸命に追いかけ、捕まえようとしているのか飛び跳ねるユウカと。


 ユウカがいくら駆けても跳ねても手を伸ばしても、ミニグリ子さん達はふわふわと宙を舞って見事なまでの回避をしてみせる。


「ああもうっ、全然捕まえられない!!」


 なんて声を上げたかと思えば、魔力を込めた足で床を蹴り、2mはあろうかという跳躍を見せるユウカ。


 だがそれでもミニグリ子さん達はふわふわと、穏やかな表情で翼を動かすことなく宙を漂い……ユウカの手をあっさりと避けてしまう。


 そんなユウカ達から少し離れた場所には、様子を静かに見守るグリ子さんの姿があり……その側へと歩み寄ったハクトは、グリ子さんのことをそっと撫でて「おはよう」と声をかけてから……ユウカ達の追いかけっこを静かに見守る。


「なるほどな」


 見守り始めてから1分程してからハクトはそう声を上げて……それからグリ子さんを見やり、グリ子さんが頷いたのを受けてユウカの下へと足を向ける。


「風切君、そろそろ交代したまえ、次は俺の番だ」


 その声を受けてユウカはぎょっとしながらも、そろそろ体力の限界が近いことを悟っていたのだろう、静かに頷き、ハクトが差し出したタオルを受け取り、滝のように流れ出る汗を拭う。


「ミニグリ子さん達にからかわれてしまったな」


 そんなユウカにそう声をかけたハクトは、首を傾げるユウカを残して足を進めて……ふわふわと宙を漂うミニグリ子さんの足元へと移動する。


 そうしてハクトは静かに目を閉じて……ゆっくりと落下してきているミニグリ子さんへと目を閉じたまま静かに手を伸ばす。


 するとミニグリ子さん達はハクトに自分達がしていることに気付かれてしまったと慌て始めて、必死にぱたぱたとその小さな翼を動かし始める。


「ん、それはちょっとズルいんじゃないかな?」


 ミニグリ子さん達の動きに気付いてか、ハクトがそう声を上げる。


 そうしてハクトは目を開き、ゆっくりとしゃがみ込んでから床を蹴り、魔力を込めずに筋力だけで飛び上がり……そっとミニグリ子さんに触れて、バスケットボールのゲーム開始時、審判が投げたボールを、選手がそうするかのようにしっかりと捕らえて胸元へと抱き寄せる。


「え、嘘、あっさり!?」


 抱き寄せて床へと静かに落下したハクトが、捕まえたミニグリ子さんの腹をちょいちょいと撫でてくすぐっていると、信じられない光景を見たとばかりにユウカが悲鳴を上げて……そんな悲鳴を受けてハクトは、二度三度と筋力でのジャンプをし、次々にミニグリ子さん達を捕まえていく。


「えーーー! ちょ、えーーー!

 なんでそんな簡単に!? ミニグリ子さん達手加減しちゃってる!?」


 するとユウカの悲鳴がもう一度上がり……5羽全部のミニグリ子さんを捕まえたハクトは、ミニグリ子さん達を抱えた両手を広げて……その両手の中で5羽のミニグリ子さん達をふわふわと宙に浮かべ……まるで磁石の力でそうしているかのように、超能力か何かでそうしているかのように、手で触れることなく操り始める。


「え? あれ? それは一体どういう!? どういうあれでそういう感じに!?」


 三度目の悲鳴。

 いい加減説明すべきだろうと頷いたハクトは、尚も触れることなくお手玉のようにミニグリ子さん達を操りながら口を開く。


「風切君は魔力を全身にみなぎらせながらミニグリ子さん達を捕まえようとしていたが、見ての通りミニグリ子さん達は今こうして、魔力を弾く……魔力に対する斥力のような力を発しているんだ。

 強い魔力であればある程反発し、その力で宙に浮かび……勢いよく伸びてくる人の手を、その風圧を受けて回避するたんぽぽの綿毛のように避けていたという訳だね。

 その対策はとても簡単で、魔力を使わずに捕まえるだけで良い訳で……俺がそうしようとすると一部のミニグリ子さんは翼で羽ばたいて逃げようとしていたが、まぁあれは反則のようなものだろう」


「えー! そんな簡単な方法でー!?

 っていうか、ずるいよミニグリ子さん! そんな力を使っちゃうなんて!!」


 ハクトの説明を受けてユウカが、そんな悲鳴を上げると……ハクトはそれを受けて半目になり嗜めるような声を上げる。


「……魔力の流れをしっかりと目で見て把握していればすぐに分かったことのはずだよ。

 魔力がどういう存在なのか、自然界の中で魔力がどう存在しているのか、漂っているのか……そこら辺をしっかりと把握していればね。

 昨日その辺りを勉強するようにと資料を用意しておいたのだけど、勉強してなかったのかな?」


 するとユウカは、すっかりと忘れていた昨晩のグリ子さんによる授業のことを思い出し「あっ」と、そんな声を上げる。


 声を上げて「あははは」と笑って、照れくさそうに頭をかいて……それを見てやれやれと顔を左右に振ったハクトは、何か思いついたことでもあるのか、ハッとした表情になり、その両手をポンと打ち、ユウカに向けて声を上げる。


「ならば追加授業だ、俺と久々の組み手をするとしよう。

 ……魔力を使って良し、相手を怪我させては駄目、施設を壊しては駄目、それでいて一本と断言出来るような一撃を当てたら勝ち。

 そんなルールでなら中々楽しめる組み手になるのではないかな?」


 その声を受けてユウカは……久しぶりの、本当に久しぶりのハクトとの組み手だと、その目をキラキラと、これでもかと輝かせるのだった。


お読みいただきありがとうございました。

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