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毛玉幻獣グリ子さん  作者: ふーろう/風楼
第三章

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カツ丼


 

 色々なことがあって、一気に片付いて……ひとまずハクト達はそれぞれの自宅に帰ることにした。


 新たに得た八咫烏の部下という立場、それは圧倒的なものでありながら、同時に頼りすぎてはいけないものであり、しかし所属しているだけで価値を産むものでもあって、その状況を飲み込むには時間が必要だと思ったからだ。


 自宅に帰ってしばらくすると隣家から大きな楽しげな声が響いてきて、すぐに出前などが運ばれてくる。


 どうやら家族を挙げてのパーティを開催しているらしい……それも当然、国家公務員以上の立場かつ待遇の職に一人娘が就いてくれたのだから、両親としては大喜びだろう。


 両親共エリートと言える家庭の一人娘が、功績は挙げているものの無職に近い状態というのは心配だったはずで、ハクトはさもありなんと一人リビングのソファで頷く。


 すると、


「クッキュン!」


 と、グリ子さんがやってきて声をかけてくる。


「うん? なんだか面倒でややこしいばっかりだったって?

 ……まぁ、そうだね、サクラ先生の一件から立て続けだったからね。

 ……ただまぁ、仕方ないことでもある、最近の異変の様子がおかしいのは事実だし、皆それぞれのやり方で平和を守ろうとしてのことだからね。

 方法も考え方も全然違うけど、それぞれ今の平和を守りたくてちょっとだけ暴走しちゃっただけなんだよ」


「クッキュ~ン」


「そうだね、それぞれが必死に頑張った結果、少しだけ間違ってしまった。

 ただまぁ、それも全く無意味ではなかった。

 苗場さんとゴーレムという成果、俺達の就任……社会的にも個人的にも得るものはあったんだよ」


「キュンキュン、クッキュン」


「……それでこれからどうするか?

 変わらないかな、仕事を続けてたまに課長さんを手伝って、それと苗場さんの手伝いもする。

 俺達は俺達の出来ることを出来る範囲でやる。

 そうやってやれることをやっている以上はどこの誰も文句は言えないだろうしね。

 ……八咫烏様も遊びであんなことをしてくださった訳じゃないんだろうから、それなりの義務は果たさないとね」


「キュ~ン?」


「確かに八咫烏様の言葉をそのまま受け入れて、何もしなくて良いのかもしれないけども、それでは申し訳なさが勝って安眠できなくなりそうだしねぇ。

 無理のない範囲で仕事をして給金がもらえて、安眠が出来るならこっちも文句なしって訳だね」


「キュン!」


「……そうだね、そういう形で決着したなら我が家でもお祝いしようか。

 グリ子さんと、フォスは何か食べたいものはある?」


「キュゥーン」


 その時グリ子さんのクチバシから出た言葉はハクトにとって意外なものだった。


「プッキュン!」


 そしてフォスもそれに続く。


「フォスもかい? いやまぁ、二人が良いならそれで良いけども……」


 ハクトがそう言うとグリ子さんもフォスも立ち上がって早く注文しろと言わんばかりに翼をばたつかせてきて、それを受けてハクトはやれやれと立ち上がり、電話へと足を向ける。


 受話器横に置いておいた出前用のチラシ束を手にとって、その中からグリ子さん達の希望の店を探し出し……受話器を取ったならダイヤルを回し、3人分の注文を行う。


「少し時間かかるけど、他に注文はないからなるべく早く持ってくるってさ。

 だからそれまでにブラッシングなり家事なりしておこうか」


 それからハクトがそう言うとグリ子さん達はそれで良いと頷いて……それからハクト達はブラッシングやら家事やらと忙しく動き回る。


 そうして一時間程の時間が経った頃にチャイムがなり、ハクトは財布片手に玄関に向かい、支払いを受け取りを済ませる。


「今、盛り付けを行うからね、丼のままだと食べ辛いだろうから」


 と、そう言ってハクトは注文した品をリビングのテーブルに並べてから、グリ子さん達用の大きく広い食器を持ってきて、それに盛り変えていく。


 綺麗に整えて盛り付けたならグリ子さん達の前に置き、事前に準備しておいたお茶も水飲みおわんに入れたら完成。


 自分の分はそのまま食べれば良いのにで椅子に座り、いただきますと声を上げてから箸を手に取る。


 ハクト達の目の前にあるのは最近テレビで特集をやっていた店のカツ丼だった。


 分厚い豚肉にサクサクの衣、たっぷりの卵と玉葱と刻み三つ葉。


 テレビで見て以来、食べたくて仕方なかったらしいそれをグリ子さん達はサクサクとろとろと楽しんでいく。


 この店のカツ丼はカツと卵あんを分離させていて、カツはサクサクのままトロトロ卵を楽しめるようにしていて……しっかりと火が通った玉葱の食感と甘さが飽きを遠ざけてくれる。


 グリ子さん達のクチバシもその食感と味をしっかり楽しめているようで、バクバクバクとかなりの量のそれをあっという間に食べ尽くしていく。


 グリ子さんのカツ丼は特上大盛りだったのだが全然余裕そうで、フォスは大盛りだったのだがこちらも余裕そうだ。


 ハクトは並盛……それでもご飯もカツも結構な量で、量だけを見るならハクトとしてはいっぱいいっぱいなのだが、それでもカツも卵も美味しいのでどんどん食べることが出来る。


 そうして全員で綺麗に食べ上げて……お茶を飲んで一呼吸。


「うぅむ、思いの外美味しかったなぁ。

 これだけ量もあって美味しくて普通のカツ丼と同じ値段なんだから驚きだなぁ」


「クッキュン!」

「プッキュン!!」


 グリ子さん達の感想も同じようで、膨らんだお腹を上に向けてなんとも満足げな表情で満足げな声を上げる。


「……このお店、親子丼や中華丼、カキフライ丼なんかも美味しいらしいんだよね。

 今度また頼んでみようか」


「クッキューーーーン!」

「プッキュン!!!」


 ハクトがそんな声を上げると、グリ子さん達はかつてないテンションで大喜びをし、ゴロゴロとリビングを転がり始める。


 それを見て微笑ましい想いでもって笑ったハクトは、何はともあれ一段落したなとため息を吐き出し……明日からはいつも通りの仕事の日々だと気合を入れ直し、意識を日常へと切り替えていくのだった。



お読みいただきありがとうございました。

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