ゴーレム
ゴーレムは幻獣に分類されはするが、異世界生まれとも限らないので他の幻獣とは扱いが違ってくる。
まずはどこ生まれなのか、その土や核がどこで作られたものかの調査が始まる。
異世界の技術を使ってこちらの世界で作り出された可能性の方が高く、そうなると召喚幻獣とは全く別の扱いを受けることになる。
在来種と外来種のような扱いで、様々な書類提出が免除され主の登録もかなり緩いものとなる。
だからと言って誰にでも管理権限が与えられるというものではなく、こういった偶発的起動においてはほとんどの場合、停止や解体などの措置が取られることになっている。
今回の件がどうなるのか……それは調査が終わってからの判断になる予定だが、こちらの世界産の場合は、問題なく苗場の幻獣という扱いになるだろう。
苗場自身がゴーレムを受け入れているし、ゴーレムを苗場とその魔力を受け入れている。
更にはハクトやユウカといった有資格な上に、貢献度の高い召喚者が監督しているため、何の障害も問題もない状態となる。
苗場が多少の試験を受ける必要はあるが、そこまでの難度にはならないだろう。
しかし異世界生まれとなると話が変わってくる、完全な召喚幻獣で実力がなくとも正式な幻獣として登録される。
そうなるとハクト達の監督があってもそう簡単にはいかない、苗場は資格取得のための試験をいくつも受ける必要があるし、山のような書類を申請する必要があるだろう。
それかハクトかユウカが召喚者として登録し、苗場に貸し出すという形を取るか……どちらにせよ、そう簡単に済む話ではない。
「……と、言う訳で数日は調査を待つことになるかな。
その間苗場さんは風切君と共に道場で修行を積むことになる……だから俺達はしばらくは用無し、空いた時間はゆっくり過ごすことになるかな」
役所での手続きなどを終えて数日後、仕事を終えて自宅に帰ってきて、課長からの報告を電話で受けたハクトが、グリ子さんにそう報告をする。
リビングで夕食となる牛肉たっぷりハヤシライスを用意し、グリ子さん達の食器に盛り付けて……それから自分の分も用意して盛り付けて、サラダとヨーグルトドリンクも用意して、それから席について、
「いただきます」
「クッキュン!」
「プッキュン!」
と、声を上げて食事を開始、ゆったりとした食事を楽しんでいく。
溢れるほどの牛肉を堪能したならサラダやドリンクも楽しんで……そうやって一段落したところでグリ子さんが声を上げる。
「クッキュン? クキュキューン」
「俺でもゴーレムを作れるかって? まぁ作れるかな。
ただ作る意味がないんだよね。
核を作るのにも金と手間がかかって、起動には魔力がかかって維持も大変。
……想像してみると良い、この家の中を土の塊が歩いたらどうなるか、グリ子さんの羽毛に埋もれたらどうなるか、お気に入りのベッドに寝転がったらどうなるか。
魔力である程度固定したと言っても土は土だからねぇ……衛生的にかなりの問題があるんだ。
それでもどうにか活用出来ないかと、消毒済みの特別な土や、余計な成分を抜いた土なんかでゴーレムを作る研究をしている人達もいるけど、どういう訳なんだか不自然な土になればなる程、ゴーレムが安定しなくなるんだよねぇ」
「キュン!? クッキュン!!」
「そうだねぇ……しかも乾燥や破損にも弱くて大変なんだ。
土であるために適度な湿度がいるし、定期的に土を補充する必要もある、中に虫がいすぎると土の成分が変わって能力が変化しちゃうことがあるしで、こういうと欠点だらけだけども、手軽に魔力を動力に簡単に変換できるという可能性を秘めているんだ。
土と魔力だけがあれば良い、何も人型である必要はない、たとえば歯車型のゴーレムにして魔力で動かせば魔力機関のようなものが出来上がる。
しかもエコ……いやまぁ、核はあんまりエコじゃないんだけど、核はいくらでも使い回せるからね。
あとは土があれば良いっていうのは色々な可能性を秘めているんだ、現状は可能性だけだけどね」
「キューン、クッキュウン、キュン?」
「核の材料かい? 昔は色々と問題のある材料を使っていたらしいけど、今はそうでもなくなっていてね……そのおかげでコスパが極悪なんだよねぇ。
ルテチウムっていう金属とか、他にも色々とね……。
ルテチウムはまぁ、お高い金属かな、金やプラチナとは比べ物にならない金額で、数グラム買うだけで俺の貯金が綺麗さっぱりなくなるだろうね」
「キュン!? キュンキュン、キュゥーン!」
「そう、そんなに高い素材を使っているならゴーレムは高く売れるんじゃないかって思うよね?
だけどゴーレムの核として一度安定しちゃうともう元の金属には戻せないし、解体なども出来ない。
魔力やらの作用で他の金属になっちゃうって認識で良いかな。
そしてゴーレムは研究的価値はあるけど、現状実用性は皆無……関連する研究が終了したなら価値は出るかもしれないけど、あの大きさだと価値はなさそうだなぁ」
「キュン!」
なら安心とグリ子さんはそう言って安堵のため息を吐き出す。
どうやら希少な金属が使われていると聞いて、あのゴーレムの誘拐を心配していたようだ。
「キュンキュン!」
多少は大変な相手かもしれないけど、可愛らしい生まれたての子供、ならば自分が守る対象だとグリ子さん。
それを受けてハクトは敵わないなぁと笑ってから、食器の片付けを始める。
そうしてハクト達はいつも通りに過ごして……数日後、課長からの連絡が届いた。
苗場のゴーレムは地球産、しかも珍しいことに完全国産のゴーレム。
希少金属は極めて少なく、よく核の安定化が出来たものだと驚くレベルで、これが実用化されたなら安価なゴーレムを量産出来る可能性を秘めている……が、同比率での核安定化実験は失敗。
つまりは偶然の産物。
なんらかの偶然で出来上がってしまった安価ゴーレムが苗場のゴーレムということになる。
『珍しいことは珍しいですが、価値があるかどうかは……。
一応窃盗誘拐などの可能性を警戒して、核の比率は学会を通じ公開情報としました。
これによりわざわざあの子を狙う必要はないでしょう。
今後、研究に協力する必要などは出てくるかと思いますが、それ以上の義務は必要なし、苗場さんの資格などは特別措置として既に完了となりました。
……特別なゴーレムを発掘、かつ起動させたことに対する学会からのご褒美のようなものです。
……あのゴーレムの核は起動だけでかなりの魔力を必要とします、通常ではあり得ないレベルです。
他の誰かがあの核を見つけたとしても、通常の魔力を流して起動しないからと、故障を疑い破棄していたに違いありません。
いや、破棄されたからこそあの運動場にあったのでしょうね。
……そういう訳で、明日には引き渡しなどが完了するかと思います』
と、そんな電話が来て、苗場にとってはなんとも幸運な結果となった。
「分かりました、ありがとうございます。
お手数をおかけしました」
そう返したハクトは、引き渡しに同行しようと決めて……課長との電話を終えたなら苗場の孤児院へと電話をするのだった。
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