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毛玉幻獣グリ子さん  作者: ふーろう/風楼
第三章

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精神修行




 ひとまずの魔力放出が可能になったというところで、授業は一旦終了となった。


 かなりの魔力を消費したし、一度苗場なりの飲み込みをする必要があるしということでの解散だ。


「……一度、うちの道場にも通わせた方がいいでしょうねー」


 その帰り道、運動場で遊び疲れたらしいフェーを抱えたユウカがそんなことを言ってくる。


「体術習得のためかな?」


 そうハクトが返すとユウカは首を振ってから言葉を返す。


「いえ、精神を鍛えるためです。

 あれだけの力、使い方を間違えたら大惨事ですから、道場で性根を鍛えないと危ないです。

 体を鍛えて力を持ったからって聖人になる訳じゃないんです、そう言う力を持って尚自分を律することが出来るかどうかが分水嶺で、出来るからこそ尊敬される存在になれるんです」


「ああ、そういう……。

 確かにそういった修練は道場に行くしかないんだろうねぇ。

 俺もそういうのは不得手だからなぁ、その辺りのことは風切君に任せよう」


「はい、お任せください。

 力を持たせた以上は責任は取らないとですから、責任もってビシビシ鍛えます。

 鍛えて鍛えて、魔力無しでも戦えるくらいにしてあげますよ。

 あの魔力を普段から使うのはヤバそうですからね」


「まぁ、確かになぁ……。

 ちょっとした仕事に大砲ぶっ放すようなものか。

 そういった器用さも鍛えてあげたい……が、器用さについてはどう鍛えたら良いかがよく分からないからなぁ」


「いや、糸を操れる先輩なら最適解じゃないですか。

 自分がどうやってそれが出来るようになったのか、教えてあげたら良いんですよ」


「……夏休み一日も休まず、寝食風呂トイレ以外の全ての時間を費やしたなら出来るようになっていたかな」


「あ、それは無理ですね、教えるも何もないですね。

 しかも苗場さん真似しそうで怖いです、ちゃんとそこら辺も師匠達に教えてくださいって頼んでおきます」


 なんて会話をしながら徒歩で家に向かい……いつものように商店街で買い物をして帰宅。


 多少遅くなった夕飯を食べて日課を済ませて……翌日から苗場は道場通いを始めたようだ。


 ユウカの言う通り素直に従って……ハクトとしてはこれで誰かを教えたことになるのか? という疑問もあったが、しかし変に拘って間違った教え方をしては元も子もない。


 こうして魔力を鍛えていけばいずれは苗場も召喚者となるはず、そのためには精神を鍛えることも重要と言えて……しばらくはそちらに集中するのも大事なことだろう。


 果たして苗場はどんな幻獣を召喚するのだろうか?


 その魔力に相応しいものか、その人格に相応しいものか……それかまた突飛なことになるかもしないなと、ハクトはそんなことを思ったりもしたが……そう何度も続くまいと、その考えを振り払った。


 そうしてしばらくは何事もない日々が続いた、いつも通りの日々、仕事と帰宅と商店街での買い物を繰り返す日常。


 平和で誰にとっても不満のない日々。


 そんなある日のこと、苗場からの電話があってハクト達は孤児院へと向かうことになった。


 何かがおかしい、魔力が勝手に流れている……電話先で苗場はそう言っていて、何かが起きているらしい。


 ハクトは事前にユウカや役場の課長にも連絡していて、現場につくと二人もほぼ同時に到着していた。


 運動場には既に魔力の大きな渦が出来上がっていて……何かを感じ取っているのか、その中央で苗場が両腕を振り上げている。


「……召喚じゃないな?」


「違いますね」


 ハクトがそう声を上げて、課長が続く。


「そうなんですか?」


 と、ユウカ、それにハクト達が頷き、足元を指し示す。


 そこには魔法陣はなく、渦巻く魔力は排水口のように地面に吸い込まれていて……その一点で何かが生まれようとしている。


「……フェーやフォスのようにこちらで生まれようとしているみたいだな。

 ……いや、違うな? 前からあそこに何かいたのか、それが魔力を吸って目覚めようとしている??」


 そうハクトが呟くと、課長も頷き……ユウカが不安げに呟く。


「えっと、大丈夫なんですか? それ?

 何かとんでもないものが復活したらとんでもないことになるんじゃ……?」


「いや、どうでしょうね。

 そんなとんでもない存在なら眠っていたとしても封印されていたとしても、誰かが気付くはずです。

 ましてやここは孤児院です、様々な検査が定期的に行われています、学校や保育園、幼稚園、子供がいる施設はどこも同じです。

 ……そうなると……」


 と、課長がそう続いた時だった。


 ボコッと地面から何かが生えてくる。


 それは四角い土の塊だった、立方体の土の塊だった。


 四角いそれの下に小さな体があって手足があって……立方体はどうやらそれの頭らしい。


 そんな立方体にはつぶらな瞳があり、横に広がる大きな口もあり、その口は口角が上がってにっかりと笑っているようで、それを見てユウカが声を上げる。


「……えぇー……ちっちゃい」


 確かにその通りだった、全長1mあるかないか、そんな土の人形が魔力を吸い上げながらちょこちょこ歩いている。


「……ゴーレム、かな、多分。

 ゴーレムが眠っていた……のかな、あるいは核かそれに類するパーツがあそこに埋まっていたのだろう」


 と、ハクト。


「……運動場の土を採取した場所に、その破片があったという所でしょうねぇ。

 ゴーレムは魔力を失うとただの土ですから、こうやって紛れちゃうんですよねぇ」


 と、課長。


「……で、それが魔力を吸って蘇ったと。

 ……ゴーレムって凄い幻獣なんですか?」


 と、ユウカ。


「……いや、見ての通り土だからね、土が動いたとしてどれだけの力を持つのか、想像してみると良い。

 しかもあの小ささだ……無力とまでは言わないが無害な幻獣だろうねぇ」


 それにハクトが返し……グリ子さんが、


「クッキュン!!」


 と、続く。


 その声はとても嬉しそうで……グリ子さんは新しい仲間の誕生を喜んでいるようだ。


 フェーもフォスも一緒に喜んでいて……そして渦中にある苗場もまた目の前に現れた幻獣のことを喜んでいて、膨大な魔力を吸い上げたなんでもないゴーレムを彼はなんとも素直に受け入れて、その体を抱き上げるのだった。




お読みいただきありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
何故かゴーレムというよりロボットのイメージが浮かびました。 クランクは四角くないし、ダンボーは口が三角、とすると、パルタか…… はてさて、どんな活躍するのやら。
ダンボーを思い浮かべてからイメージが固定されてしまった… 魔力の内包量というか扱える量次第ではゴーレムもヤバそう
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