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毛玉幻獣グリ子さん  作者: ふーろう/風楼
第三章

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吹き出す魔力



 魔力に関する授業が終わって、早速苗場は魔力を制御しようと鍛錬を始めたのだが、中々上手くいかず、苦戦が続くことになる。


「……なんか上手くいきませんね?」


 自分にとってはそう難しいことではないからとユウカがそんなコメントをすると、ハクトが苗場の邪魔をしない程度の声量で説明をしていく。


「体内の魔力は膨大だが、彼はそれに気付かず今までを過ごしてきた。

 体内の魔力があまりにも大きすぎたせいで周囲の魔力にも気付けなかった。

 つまり彼にとっては魔力がない世界こそが当たり前の世界だったんだ。

 そうやって20年以上生きてきて、今更魔力がそこにあると言われても認識も把握も、コントロールも難しいんだよ。

 長年培われてきた習慣と常識を打ち破る、まずはそこから始めないとね」


「……えーっと、なるほど?」


「風切君でたとえるなら、急に呼吸が真逆になったと考えると良い。

 酸素が欲しい時には吐き、そして吸う、そうやって真逆になったとして順応出来るかと言われるとほとんどの人が出来ないだろうね」


「私は多分なんとかなります!」


「いやまぁ……うん、そうかもしれないのが怖いところだ」


「しかしそうなると、かなりの訓練しないといけなさそうですねぇ。

 訓練した後も簡単には魔力使えない感じになりそうです」


「まぁそうだね、それが彼が放置されていた理由かな。

 幼い頃から鍛錬しておかないと魔力をうまく扱えず、才能があってもどうにもならないと多くの人が考えていて……折角の才能を放置しているという訳だ。

 リスクとリターンという考えもそれはそれで大事なんだろうが、俺に縋る程人手不足だと言うのなら、こういう人をすくい上げたらどうなんだろうなぁ。

 ……あの生徒達よりはやる気に満ちていると思うんだけどね」


「辛辣ですねー……あの子達も学生と考えれば普通だと思いますけども」


 と、そんな会話をしていると早速コツを掴んだのか、苗場の体から魔力が吹き出し始める。


 蛇口を解放したまっていたものが吹き出すように勢いよく、怒涛の如く吹き出して、慌ててハクトは糸を操作してその流れを制御し、周囲に魔力が飛び散らないようにしていく。


「……先輩、苗場さん気付いてないですよ、吹き出してるのに」


「あー……まぁ、うん、コントロールを学ぶなら残量が少ない方が良いから、しばらくは様子を見るとしよう。

 他人の魔力なら気付けるが自分の魔力となると急激に鈍感……体が慣れきってしまっているんだろうねぇ」


 そう話しているうちに苗場の魔力はどんどんと流れ出ていって……そして残量が少なくなってきたのか、その勢いは落ち着いていく。


 そんな状況の中でも苗場は気付くことなく自分なりの鍛錬を……何故か踊ったり拳法の構えを取ったり、駆け回ったりとしていて、魔力関係なしにそのせいで疲れたのか、息を切らしながらハクト達の下に戻ってくる。


「ど、どうですか、上手くできてますか!」


 そう言ってやる気満々の表情を見せる苗場に、ハクトは先程からかき集めている魔力の塊を近付けてみるが……それに気付くことはまったくない。


 これは大変なことになったかもなと戦慄しながらハクトは、邪魔になるからと集めた魔力を散らし、それから息を切らす苗場の背中に手の平を押し付けて、自分の魔力を流し込んでみる。


「魔力の流れを感じてください。

 そしてこんな風に自分の魔力も流れているのだと自覚してください。

 苗場さんには規格外の魔力があります、こんな風に感じ取られるはずです」


 そしてハクトがそう声をかけると苗場は、


「なるほど! カンフーだね!」


 と、よく分からないことを元気いっぱいに言ってその状態のままカンフーのモーション映画を真似し始める。


 どこがどうカンフーだと言うのか。


 突っ込むのも否定するのも、質問するのも面倒でハクトは放置して……それよりも魔力の制御に意識を向ける。


 するとカンフーが良かったのか何なのか、


「お! これかな!」


 と、苗場がそんなことを言い始め、突き出した拳の先に魔力を集め始める。


「ああ、それですね」


 ハクトがそう返したことで確信を得て、直後かなりの魔力が拳に集まり……苗場は何を思ったか魔力で拳を形成していく。


 拳がいきなり数倍の大きさになって、更に大きくなって、まるでアニメのような比率となって……そして苗場はそれで運動場の地面を叩く。


 すると衝撃音と共に地面が凹み……拳の形がくっきりと出来上がる。


「おお! 魔力凄い!!」


 それを見て苗場がはしゃぐ中、ハクトは冷や汗を浮かべる。


 魔力で地面を攻撃すること自体は可能だ、自然物に干渉すること自体は難しいことではない。



 しかし魔力をそんな直接的な攻撃手段に使うというのは聞いたことがない。


 たとえば風を操る、水を操る、目に見えない粒子を操るといった方法で攻撃を可能にすることは出来るが、直接というのは中々無いことだった。


 あり得ないとは言わないが、少なくともハクトには出来ない、だから糸を操っている。


 ユウカでさえ己の拳を強化することで攻撃を可能にしていて、拳なしでの攻撃は不可能だ。


 これも才能かとハクトが戦慄する中、


「クッキュ~~ン!」

「プッキュン!」

「わふ~~!」


 と、幻獣達は大はしゃぎ、魔力の源流であり、より濃厚な魔力がある異世界出身の幻獣には魔力がよく見えているようで、幻獣達にも苗場の凄さが伝わっているようだ。


「えー、何あれ、真似したい!」


 そしてユウカはそんなことを言いながら苗場の真似をする形でカンフースタイルでの鍛錬を始めていて……それを見て苗場は気分を良くしたのか、更に激しくカンフースタイルでの鍛錬を始める。


「……魔力の鍛錬光景とは思えないなぁ」


 そんな二人を見てハクトは、そんなコメントを口にし……しばらくの間、様子を見ることにする。


 何かを言おうにも、助言をするにせよ他の鍛錬が良いと止めさせるにせよ、状況を理解しきれていないでは不可能で……そうして今日の授業はまさかのカンフー尽くしで終わりとなるのだった。


お読みいただきありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
カンフーというか功夫は体内の気を練り上げる為の修練とも言われてたような それが偶然にも魔力を練り上げる、操作する事に繋がったんではなかろうか かめ〇め波とか気〇砲とか撃てそう
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