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毛玉幻獣グリ子さん  作者: ふーろう/風楼
第三章

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魔力について



 翌日。


 ハクト達はそれぞれの仕事や鍛錬を終えて孤児院へと向かい……18時。


 入口を通って運動場に向かうと、ジャージ姿の苗場がやる気満々といった様子で待っていて、早速ハクト達はそれぞれ用意したテキストを渡す。


「よろしくお願いしま……ってえ? 教科書ですか?」


 やる気満々、これから格闘訓練でもする気といった様子だった苗場だったが、突然の本の登場に驚き困惑し、上ずった声を返す。


「はい、資格を取るとなるとどうあれ学科試験を受ける必要がありますから、とりあえずこちらを渡しておきます。

 空き時間に使う自主学習用と考えてください、それとあくまでお貸しするだけなので大切にしてください。

 そしてちゃんと実戦訓練のようなこともしますから、そのジャージは無駄にはなりませんよ」


 と、ハクト。


「こっちは普段からやっておくべき鍛錬と柔軟ストレッチなどのテキストと、格闘術、制圧術に関する教科書です!

 特に柔軟は大切なので、毎日欠かさずやってくださいね!!」


 と、ユウカ。

 

 どちらの言い分にも「なるほど、ごもっとも」と納得した苗場はそれを受け取り……とりあえず一旦事務所に持っていき、どこかにしまったのだろう、すぐに猛ダッシュで戻ってくる。


「では改めてお願いしまっす!!」


 そして元気いっぱいに声を上げて、それに応えたのはグリ子さん達だった。


「クッキュ~ン」

「ぷっきゅん!」

「わふ~」


 それぞれ態度は違い、グリ子さんはゆったりと構え、フォスはやる気満々、フェーは駆けっこしたいといった様子で、実戦の場ではないからか、なんともまとまりのない様子だ。


 これまでずっとハクト達が挑んできたのは真剣に挑まなければならないような場ばかり。


 鍛錬のような場もあったが、孤児院でゆったりものを教えるというのは初めてのことで、幻獣達の気は完全に緩みきっているようだ。


 しかしそれは悪いことではなく……まだまだ夕方で遊びたい盛りには遊び回りたい時間なのだろう、そんなグリ子さん達を見つけた子供達がわぁっと駆け集まってくる。


「グリ子さんだ!」

「今日は違うのもいる!!」

「おれ、幻獣はじめてかも!!」


 普段からグリ子さんと遊んでいる子供もいるようで、すぐさま幻獣達は子供まみれとなる。


 しかしグリ子さんは慣れたもので、普段からグリ子さんと一緒にいるミニグリ子さんであるフォスも慣れたもの。


 ユウカと一緒に行動しているフェーは少しだけ戸惑っていたが、それでも元々の性格が良いからなのか、すぐに慣れた様子で一緒に遊び始める。


 それを見て表情を緩めるハクト達と苗場だったが、授業は授業、しっかり真面目に取り組まなければと、改めての挨拶をし、お互いに一礼をしてから……まずは魔力についての授業が始まる。

 

 魔力とは何なのか、どうして存在するのか、利用するとどんなことが出来るのか、出来ないのか。


「……基本的に科学で使うものには魔力は影響できませんし、されません。

 その理由は様々な説が唱えられていますが、一番有力なのは科学はこの世界の力で、魔力は別の世界の力だ、という説です。

 元々は別の世界の、交わらないはずの力だった……それが召喚によって交わったが、生まれた世界が違うからかお互いに影響することがない。

 お互いにお互いを無視している状態とでも考えると良いでしょう。

 そのため科学的な力で魔力を検知することは難しく、防ぐことも簡単ではありません。

 逆に魔力にも同じことが言えるのですが……たとえば魔力でもって土に働きかけ、土の壁を作れば科学的な攻撃を防げるということがあります、この辺りのことを覚えておくと、今後の授業の理解がうんと楽になるはずです」


 運動場で机も椅子も黒板もないところで、いかにも学校のような口調で語り始めるハクト。


 その説明には足りない部分があり、正確ではない部分もあったのだが……最初の理解にはその辺りの細かい話は不要だと省いてしまっている。


 そのことにユウカとグリ子さんは気付いていたが特に突っ込んだりはせずに、静かに耳を傾けている。


「えっと……魔法の攻撃とか魔法の防御とかはなんとなく分かるんですけど、科学の攻撃とか防御って具体的に何なんです?

 土って自然のものですけど、土に関する研究とかそういうものも科学で行われていたりしますよね?

 土もこの世界由来のもの、科学的なものでもあると考えると結局同じ扱いになるんじゃぁ?」


 しかし苗場はすぐにそのことに気付く。


 これにはハクトも目を丸くすることになる、いつも教えていたのは学院の後輩達で、普通の生徒達はそこまで考えないし、考えたとしても声は上げないしで、ハクトにとってそれは初めての経験だった。


 ……なるほど、大人相手に教えるとこういうこともあるのかと、そんなことを考えたハクトは、冷静さを取り戻して説明を続ける。


「その質問の答えを教えることは凄く難しいことです。

 何しろ未だに学会でも正確な答えが出ている訳ではありませんから……。

 しかしその確認は簡単です、実際にそれを手にとって魔力を流してみれば良いんです。

 魔力が流れないのならそれは科学的なもの、流れるのなら非科学……と、いう言葉は少し不適切ですが、そういった扱いになるという考えで構いません。

 という訳でこちらの二つを手にとってみてください。

 今から俺が魔力を流します」


 と、そう言ってハクトは持ってきたカバンに入れておいた二つの物を取り出し、苗場に渡す。


 一つは赤みを帯びた石で、一つはホームセンターで買ってきた鉄の塊、値札シールがまだ残っている、仕事帰りに買ってきた代物だった。


 それを素直に受け取った苗場な右手に石を、左手に鉄を持って……その上にハクトが手を載せて魔力を流し込み始める。


 石には魔力がよく通っているようだ、ハクトの手から出る淡い光が中に吸い込まれて……そのまま苗場の手の平に伝わってくる不思議な感覚を、魔力に関してまだまだ素人の苗場も感じ取ることが出来ている。


 逆に鉄には一切魔力が通っていないように見える、ハクトの手から出た魔力が弾かれ、そのまま霧散し……苗場の手には届いてこない。


 その現象を起こし、確認させたハクトは、その状態を維持したまま言葉を続ける。


「この石は鉄鉱石です、そしてこちらは精錬した鉄です。

 元々は同じ物質なのに片方は魔力が通り、片方は通らない。

 人の手が入ったらそうなるのか? その答えは違います、素手などでの原始的な加工をしたものには通りますので。

 料理などといった加工も……本来なら科学のはずなのですが、しっかり通ります。

 他にも手作り化粧水とかも魔力が通ります、ところがそれを瓶詰めにして少しの時間を置くと魔力が通らなくなります。

 ……なんでそんなことに? という質問は俺にはしないでください。

 一生をかけて研究している人にもまだ答えが出せない分野なので……魔力とはとにかく不思議エネルギーだという理解で、とりあえずは構いません」


 と、説明されて苗場は、口をポカンと開けながらしばらくの間呆然とし……理解したのかしていないのか、とにかく急に笑顔となってウィンクをして、


「オッケー! 任せて! 多分大丈夫!」


 と、やたらと元気いっぱいな返事をする。


 それを受けてハクトが不安そうな顔をする中、ユウカはなんとなく仲間っぽい、似た性格かもしれないと、そんなことを思い……勝手にシンパシーを感じ始めるのだった。



お読みいただきありがとうございました。

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