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帰宅


「とりあえず、報酬の件はしっかり話をつけておいたぞ。

 十分な量がそっちの役所を通して入金されるはずだ……もちろん功績もちゃんと評価されるからな。

 ……んで、こっからが大事な話なんだが、こっちの役所や役人から連絡が来ても、相手をしないようにな。

 もしどうしてもお前達の力を借りたいとなったら、この金太郎様が直接連絡をするから、それ以外は相手をしなくていいぞ」


 ソファに腰掛け、ユウカが用意した茶を一口飲んでから金太郎はそう話を始めて……運転を続けるハクトに変わって、ユウカが声を返す。


「分かりましたー。

 ……まぁ、いくら仕事でもこんな遠くまで来るのは元々無理ですけども」


「よしよし、それで良い。

 ……こっちにはそういった他人の苦労を考慮しないバカが多いんでなぁ……。

 色々と活躍しちゃったお前達の力に目をつけて、利用しようとする奴らが出そうなんだよ。

 もちろんこっちでも対策しておくが、そっちでも気をつけて欲しい。

 目の前に現れた日にはぶん殴っちまって良いからな」


「はい! 分かりました!」


 元気な返事をするユウカにハクトは、分かりましたじゃないよと内心で突っ込むが……高速道路での運転中なので何も言わず、正面を向き続ける。


「よしよし、それで良い。

 幻獣達は手出さないようにな、色々と面倒なことになるから、荒事は嬢ちゃんにまかせておけ。

 それと……こっちの神さん達もあの事件を見ていたようでな、結構なお歴々からお褒めの言葉をちょうだいしたぞ。

 よくやった、だそうだ……近いうちにその関係で何かあるかもしれないが、まぁ、悪いことにはならんだろうから、素直に受け取っておくと良い」


「了解です!」


 またも元気な返事、それを受けて満足そうに頷いた金太郎は、


「また何かれば顔を出すからよろしくな、歓迎の菓子は柏餅が良いな」


 と、そう言って、まるで車が停車中かのようにドアを開けて外に歩いて出ていってしまう。


「またー!」

「クッキュン!」

「プッキュン!」

「わふー!」


 と、一同が別れの挨拶をするとドアが何事もなかったかのように閉まり……平穏が訪れる。


 そこからは何事もない平和な旅路が続くことになった。


 美味しいものを食べ、お土産を買いにあちこちに寄って、宿でしっかり体を休めて……少しずつ家に近づいて。


 そして竜鐙町へと戻ってきたなら、ガソリンスタンドでガソリンを満タンにし、改めて車内の掃除を行い……それから我が家へ。


 我が家についたなら荷物を片付け、忘れ物はないかの確認をしたなら再度掃除。


 それから業者に連絡すると車の受け取りにスタッフがやってきてくれて……特に追加請求が行われることなく、無事の返却となる。


 家についたならまず軽い掃除、それからブレーカーやガスの元栓などの確認をし……そうした作業が終わったら着替えなどの洗濯を行い、最後に手洗いうがいをし、リビングで腰を落ち着ける。


 先にリビングで休んでいたグリ子さん達は、あっさりと眠りについてしまっていて……ハクトも昼寝でもするかなと考えていると、庭に何者かが降り立つ音がする。


「うん?」


 なんて声を上げながら確認のために窓際に向かったハクトは、思わず「あっ」と声を上げてから窓を開ける。


 そこに立っていたのはブキャナンだった、何故だかいつもよりくたびれて、羽もボロボロになってしまっている。


「えぇっと……大僧正、何事ですか?」


 と、ハクトが問いかけるとブキャナンはぐったりした様子でグリンと表情をハクトの方に向けて、弱々しい声を上げる。


「……向こうの方々、お偉いさん達に捕まってしまいまして、色々と問い詰められていたというか、吊り上げにあっていたんでやす。

 やれハクトさん達のことを教えろだの、どうやったら仕えさせることが出来るだの……。

 いえ、責めている訳ではございやせん、あの状況なら参戦するのが当然でしょうし、おかげで助かった部分はあるんでやすが……もうちょっとだけ、目立たない形にしていただけたら嬉しかったですねぇ」


「……それは、どうもご迷惑を……。

 色々と手を尽くして頂いたようで、ありがとうございます」


「いえ……。

 それで、ですね、お疲れの所お邪魔しやしたのは、グリ子さんがまた魔石を生み出してやいないかの確認でございやして……。

 もしあればお預かりしますが……金庫に納めておくもよし、アタクシに預けるもよし」


「ああ、はい、預けるつもりで保管しておきました、流石に量が量なので」


 と、そう言ってハクトは家の中に戻り、旅行カバンの中に押し込んでおいた、魔石用の保管箱を取り出し、ブキャナンの下へと持っていく。


 それから蓋を開けて中の確認をし……ブキャナンにも確認してもらい、それをブキャナンへと託す。


「……普通は、こんなあっさりと手渡すようなものじゃぁないんですが、さすがハクトさんと言っておきやしょう」


「まぁ、家にあっても何かに使える訳でもないですから。

 管理や使用は大僧正にお任せしますよ」


 と、そう言ってからハクトは、家の中へと入るように促すが……ブキャナンは用事があるからと簡単な挨拶をして去っていく。

 

 それを見送ったハクトは家の中に戻り……それからソファに体を預けてウトウトとし始める。


 ……そうして気付けば夕方で、目をこすりながら起きたハクトは、今晩は出前にするかと、出前用のチラシの束を取り出す。


 と、その瞬間、チラシを入れておいたカゴの音なのか、チラシの音を聞きつけたグリ子さんが目を覚まし、ガバっと起きてハクトの下へと駆けてくる。


「キュンキュン、クッキュン!」


 そして自分が選ぶ! と、主張してチラシの束をクチバシで挟み上げて……その中からお気に入りの一枚を選び出す。


 それはピザ屋のチラシだった。


「ピザか……確かに向こうではこういうのは食べなかったねぇ。

 我が家で食べる典型的な出前って感じもするし……これにしようか。

 ……今日は少し多めでもいいよ、好きなのを選ぶと良い」


 と、ハクトがそう言うとグリ子さんは大喜びでチラシを眺め始める。


 そのうちそれに気付いたフォスもやってきて選び始め……グリ子さんとフォスで、それぞれ一枚ずつのピザを選び出す。


 更にハクトもこれという一枚を決めて、電話で注文。


 そうしてハクト達は旅行の最終日を、家ピザで締めて我が家でもってゆったりと体を休めるのだった。


お読みいただきありがとうございました。

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