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毛玉幻獣グリ子さん  作者: ふーろう/風楼
第三章

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神々の世界


 本体と思われる巣が、神熊をふりはらって蠢き出し……すぐさまユウカとハクトは、そちらに構えを向ける。


 無限にスズメバチ型眷属を作り出してくる本体……巣を倒さなければ話にならないと考えてのことだったが、金太郎だけは構えるのではなく、まさかりを手放し……四股を踏み始める。


「ここまでするつもりは無かったんだが、出張ってきておいて被害を出しましたじゃぁ皆様に申し訳が立たねぇ。

 これもまた良い勉強ってことで、本気ってのを一つ見せてやるよ」


 と、そんなことを言いながら四股を踏み、その度に周囲が地震かと思うくらいに揺れて……四股が終わったのなら、空中に向けて張り手を放ち始める。


 その様は、相撲を取ろうとしているようには見えず、攻撃をしようとしているようにも見えず、なんらかの儀式をやっているかのようで……張り手が終わった瞬間、金太郎の前の空間が弾けて、そこから色が周囲に広がる。


 極彩色、極楽絵で見るような明るい色を基調とした色の世界が一気に広がって、街中の光景を塗りつぶし……なんともおめでたい光景が周囲に広がる。


 虹色の山脈、数え切れない程の桃の木、赤、青、黄色、緑、白と、五つ連なった五色の池には極彩色の睡蓮や見たことのない花々が咲き乱れていて……池の側の岩の上には、ふさふさの毛を尻尾のように生やした亀の姿がある。


 その亀の毛すらも極彩色で……絵画でも見たことのないような世界に、ハクトとユウカ、グリ子さん達が目をぱちくりとさせる中、未だに張り手の構えのままの金太郎が声を上げる。


「これが極楽浄土ってやつよ。

 天上、高天原、十万億土、桃源郷って言っても良いが、とにかく俺等神々の住まう地よ。

 それを呼び出し力を借りる……これが神々たる者の力、神代の頃からこの地を守っていた力ってぇ訳だ。

 お前さん達、正しい行いをした死者は、極楽では働かずに好き放題に飲んで食べて遊んで、それはもう幸せに暮らせるそうだが……その話を聞いて首を傾げたことはねぇか?

 誰もが働かない極楽で、誰が食料や酒を用意してくれるのかってよ?

 ……その答えがこれよ、神々にはこの眷属達を作り出す力があるんだ」


 と、そう言ってもう一度金太郎が四股を踏むと、近くにあった桃の木から桃が落ちて……落ちた桃が割れて中から甲冑姿の何かが出てくる。


 金太郎と同じような兜に鎧、そして刀を腰に差したそれは、のっぺりとした独特の顔をした土人形。


「ハニワだ!?」


 と、ユウカが声を上げた通りハニワで、そこら中の木から桃が落ちて、次々にハニワが姿を見せる。


「正確に言うと、ハニワはこいつらを模した人形だから、ハニワではないんだが……まぁ、今はハニワの方が通りが良いだろうから、ハニワと呼んでも怒られはしないだろう。

 こいつらは神々の眷属……呼び出した神々の力を持って生まれる存在で、俺が生み出せばこの姿、もう少し前の神々が呼び出せば銅剣なんかを持って現れて、現代の神々なんてものがいるなら、銃火器を持った姿で現れるんだろう。

 しかしどの時代であっても……神代でも古代でも現代でも強さは変わらん。

 一体一体がこの金太郎様と同じ戦力……それがざっと一万騎、まさしく無双の軍勢の出来上がりって訳だ。

 ……ただしハニワが戦うのは、邪なる存在だけ……破邪の力を持つ桃から生まれたのがその証拠で、私欲で乱用した日には逆にハニワ達に討たれちまうって訳だな」


 との金太郎の説明が続く中も生まれ続けたハニワ達は、数え切れない程の数となり……金太郎の言葉の通りなら一万騎となったそれらが、一斉に動き出し腰に下げた日本刀を抜き放って、上段に構えながら突撃していく。


 それを迎撃しようと巣は次々にスズメバチを繰り出し、襲いかからせるが、ハニワ達は一切臆せず突撃を続け、巨大スズメバチとハニワの軍勢が正面衝突する。


 そしてスズメバチの針がハニワの顔や体を狙い撃ち、見事に砕いて貫く……が、貫かれようともハニワ達は突撃を止めず、懸命に針を差し続けるスズメバチを容赦なく斬り伏せていく。


「血が流れないのはもちろんのこと、傷つく内臓もない、そもそも痛覚があるのかも分からんハニワに、針一本刺したからって何だってんだ。

 神代のノンブレーキ・ハチャメチャ神々激突破壊大戦をも戦い抜いたハニワ達に、木っ端幻獣なんかが敵うものかよ」


 と、そう言って張り手の構えを解いた金太郎は、まさかりを担ぎ直して、いつでも戦闘に入れるようにと体勢を整え始める。


 それに習ってハクトとユウカとグリ子さん達も、いつでも戦いに突入出来るようにと心構えをし直し……そうしながら目の前で繰り広げられている凄まじい戦いの光景をしっかりと両目で見やる。


 針を刺されても体のあちこちを砕かれても止まらないハニワ達。


 止まることなくスズメバチを粉砕しながら巣へと迫り……巣に辿り着いたハニワはがむしゃらに刀を振って巣を攻撃していく。


 中には巣の表面をまるで地面かのように、完全に重力を無視して駆け回っているハニワもいて……そうしながら良さそうな場所を見つけると、そこに刀を突き立てて巣を掘り進み始める。


 あるいは仲間のハニワを武器のように持って振り回してみたり、一体何の意味があるのか、ハニワが両手で別のハニワの両足を掴んで連結のような状態となって連なって、凄まじい勢いで回転してドリルのように巣を掘り進んでみたり、中には熊のように巣材を食べてしまっているハニワまでいる。


 巣に張り付いて丸い穴のような口を大きく広げて、掃除機のようにズゴゴゴと吸い上げ……明らかに体の大きさ以上の巣材を吸い込んでいるというのに、その吸引力が落ちることはない。


 そんな滅茶苦茶な戦い方をするハニワが1万騎もいると、流石の災害幻獣も敵わないようで……スズメバチを作り出しても作り出しても間に合わず、巣もどんどんと削られ小さくなっていく。


 小さくなるとスズメバチを生み出す速度も下がっていって……スズメバチそれ自体の大きさも小さくなっていく。


 そうして極彩色の世界の中で大暴れをするハニワ達という、とんでもない光景を見ることになったハクト達は……呆然としたり楽しんだりと、それぞれの反応を示しながら、神々の力の一端を目にしたことで、大きな経験を得ることになるのだった。


お読みいただきありがとうございました。

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一万騎のはに丸君… 行動が違うということは、中身に個性あるんかな
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