表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
261/270

神の戦い


「これは凄まじいな……」


「神様ってやっぱり凄いんですねぇ」


 金太郎の戦いが始まって、相応に距離の離れたビルの屋上に着地したハクト達は、グリ子さんが張ってくれた結界の中からその様子を見守っていた。


 まさかりを片手で振り回し、その衝撃波でもって次々にスズメバチ型幻獣を破壊していく。


 倒すと言うより破壊と言う方が正しい光景で……スズメバチ幻獣は硬い甲殻に覆われながら、その中はほぼ空洞となっているようで、金太郎に倒されると粉々となって砕け散っていく。


 しかしスズメバチもただやられるだけではなく、次から次へと巣から現れることでやられながらも数を増していって、金太郎を包囲していく。


 そうやって周囲を完全に包囲され、危うく針に刺されるとなって金太郎は、まさかりを振り回しながら真上に跳び上がり……落下しながら地面にまさかりと叩きつけることで、周囲に広がる衝撃波を発生させ、自分を包囲していたスズメバチを一掃する。


「え、ちょっ……なんですか今の!? 地面叩いてもああはなりませんよ!」


「……魔力、いや、魔力に似た何かを炸裂させたのだろう、神力とでも言うべきなのかな……」


 その光景を見てユウカが悲鳴を上げる中、ハクトは淡々と冷静に観察をし……そうしながら糸をゆっくりじわじわと放って巣に近付けていく。


 金太郎がまさに神がかり的な強さなのは分かったが、あれではキリがない……つい先程全滅させたはずのスズメバチがもう金太郎を包囲しつつあるようだし、巣を潰さないことには話にならないようだ。


 そう考えてのハクトなりの対策だったのだが……そんなハクトの糸がたどり着くよりも先に、鎧姿の熊が……金太郎の神熊が巣へと突撃していく。


 巣の大きさは高層ビルを覆う程、ちょっとやそっとの攻撃では破壊しきれないが、果たして神熊はどうするのか……ハクト達が見守る中、神熊はただただ突撃し、その爪で引き裂き、その牙で噛みちぎり……そして巣材をモシャモシャと食べ始める。


「……えっと、巣って美味しいんですかね?」


「いや、材料は泥とかのはずだから美味しくはないはず……まぁ、神様ならば美味しく出来てしまうのかもしれないけども」


 ユウカがそう言ってハクトが返して……それから二人は黙って見守っていたが戦況が変わることはなかった。


 スズメバチは尚も数を増やし、巣は食べきれない。


 それどころかスズメバチの増加速度は上がり続けていて……もはやまさかりだけでは間に合わないと考えたらしい金太郎は、まさかりと四股踏みでもって衝撃波を起こしていた。


 右の足、左の足、それからまさかりと三連撃、それでも倒しきれない程の数となっているのだから、今回の幻獣災害はかなりの厄介度のようだ。


「うん、援護するとしよう。

 負けるとは思えないが、勝つまでに時間がかかりすぎると被害が広がる可能性もあるし、新たな巣を作られては手に負えない。

 ただし神様相手でも苦戦するような相手だ、無理はしないようにしよう。

 グリ子さん達の結界から出ずに、焦らず慌てず、慎重にじっくりと敵を倒していく。

 そのうち四聖獣か国から派遣された誰かがやってくるだろうから、とりあえずその時までの時間稼ぎができれば良し。

 あくまで俺達の仕事は援護であって、事態の解決ではないということを忘れないように」


 そんな様子を見て意を決したハクトがそう言うと、ユウカは拳を握りながらコクリと頷く。


 それを見てかフェーとフォスは、それぞれユウカの右肩と左肩に掴まるなり乗るなりし、二頭がかりでの結界を構築する。


 そしてグリ子さんはハクトに寄り添っての結界を構築し……そうしてそれぞれ現場へと、スズメバチの巣へと向かっていく。


 2つの丸い結界が突然戦場に現れたことに驚いたスズメバチ達がすぐさま攻撃を仕掛けようとするが、結界に阻まれてその針が刺さることはない。


 熊のように大きいスズメバチの針は、これまた相応に大きく針というより大型の突撃槍といった代物だったが、結界は問題なくその攻撃を防いでくれている。


「せいっ!!」


 そんな結界の中から、ユウカの拳が振るわれる。


 金太郎のマネをしてか、魔力が込められたその拳から衝撃波が放たれ、その衝撃波を受けたスズメバチはあっさり四散する。


 一方ハクトは結界の中から糸を伸ばし……スズメバチを慎重に解体することで数を減らしていた。


 針を縛って抑え、羽をもぎ、足をもぎ、最後に首をもぎ、丁寧に解体していく。


 ハクトにしては容赦のない戦い方だったが、それには理由があり……戦いが始まった頃から抱いていた違和感をハクトが言葉にする。


「こいつら幻獣じゃないな。

 幻獣が作り出した……武器と言ったら良いのか、眷属と言ったら良いのか、幻獣から射出された体の一部なのだろう。

 爪や針を飛ばす幻獣と似た感じで、スズメバチのような形をしたものをただ放っているだけなんだ。

 つまり……巣が本体、なのか?」


 その言葉はグリ子さんの魔力によって拡散され、ユウカや金太郎、ビルに隠れて様子を伺っていた対策のために駆けつけた県職員の耳にも届き……金太郎とユウカの動きが変わる。


 金太郎はスズメバチを相手をするだけ無駄だと見切りをつけて、巣に向かって移動しながらまさかりを振り回し始め、ユウカはその援護をすべくスズメバチへの攻撃を激化させる。


 金太郎を援護するため、金太郎が負っていた役目を受け取るため……金太郎の真似をしてどんどん衝撃波を放っていく。


 特に気に入ったのが地面を叩いての衝撃波らしく、意味があるのか金太郎のように跳び上がり、空中でくるりと体をひねって回転をし……その勢いと落下の勢いでもって地面を強く拳で叩き、周囲のスズメバチを一掃する。


 言ってしまうとそれは無駄な動きが多く、隙だらけで危険な技だったのだが、そこは上手くフェーとフォスがカバーをし……そしてハクトの糸もしっかりと援護をする。


 スズメバチの動きを阻害し、倒し……ついでに巣にも近付き破壊の準備をしていく。


 そうやってハクト達が巣へと迫る中、巣にも動きがあり……熊に食べられるのを嫌がったのか何なのか、激しく振動し始め……そうやって張り付く熊を見事なまでに振り払ってしまうのだった。


お読みいただきありがとうございました。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ