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まさかの二度目の


 釣りが終わって、ハクトが帰ろうとすると狙ったかのようなタイミングで管理人の、ロゴ入りのバンが近くを通りかかる。

 

「釣れましたか?」


 そして車から降りて笑顔を浮かべながらやってきて声をかけてきて……ハクトが山のような真鯛を見せると、高齢の男性管理人はシワだらけの顔をくしゃりと歪めてバンから食料運搬用と思われるカゴを持ってくる。


「下処理や調理はお任せください。

 何かご希望のメニューはございますか?」


 そう言って真鯛をカゴに入れ始めた管理人にハクトは、


「お任せします、余ったものは管理人さんの方で上手く使ってください。

 持ち帰ってくださっても構いませんよ」


 と、返す。


 すると管理人は更に笑顔を深くして……手早く真鯛を回収し、バンで走り去っていく。


 それを見送ったハクトはユウカ達と宿に戻り……使った釣具の洗浄なんかを終えてから、シャワーを浴びての休憩時間。


 夏の日差しの下、海でたっぷり遊んだからかなんとも気だるく、クーラーの冷気もあってあっという間に眠気に包まれて……それぞれソファやクッションの上でウトウトとする。


 それからどれくらいの時間が経ったか……チャイムの音で目を覚ましたハクトが玄関に向かうと、管理人が待機していて……キッチンワゴンでもって料理を室内に運んでくれる。


 刺し身、塩焼き、アクアパッツァ、天ぷら、鍋、などなどなどなど。


 ハクトが見たこともない料理も並び、驚く程の量が運ばれてくる。


「料理人達もご相伴に与れるとなって張り切ったようでして……このような形となりました。

 管理人一同、矢縫さんのご好意に感謝しております、本当にありがとうございます。

 明日の朝食も気持ちを込めたものとさせていただきますので、ご期待ください」


「ありがとうございます、楽しませていただきます」


 管理人の言葉にそう返したハクトは、帰っていく管理人を見送ってから食器などの準備をしていく。


 そうこうしているうちにまずグリ子さんが目覚めて、フェー、フォスと続き……ユウカは大口を開けたまま眠り続けて……ハクトが肩を揺さぶるまで眠り続けた。


「おはよう」


 そう言って起こしてやると、慌てて居住まいを正し……顔を洗うためか洗面所へと駆けていって……数分後、すっきりさっぱり整えた状態で戻ってきて、食卓につく。


 それからハクト達は、これ以上なく美味しい食事を楽しむことになった。


 普通の真鯛とは全く別物の味と新鮮さ……こんなに美味しいものがあるものかと箸が進む。


 この旅行もそろそろ終わりに近づいてきていて……その終わりにふさわしい料理だとも言えて、満足度は驚く程に高い。


 適度に運動をし、体が疲れているのもあるのか、箸や口が止まることはない……ハクトもユウカも幻獣達も存分に楽しんで……運ばれてきた料理の全てを食べ終えたなら、大画面のテレビを見ながらの食後の休憩タイムを楽しむ。


 お笑い芸人達が練りに練った笑い話を披露するというその番組を、ダラダラと楽しんでいると……笑い話が突然中断されて画面が切り替わり、軽く微睡んでいたハクト達の意識を無理矢理引き戻す。


「え? え? 何事ですか?」


「……どこかで地震でもあったかな?」


 切り替わった画面の先には真剣な表情のアナウンサーの姿があって……どこかの映像を流しながら原稿を読み上げていく。


『緊急速報です、旧都で幻獣災害が発生しました。

 違法な手段で召喚された―――』


 どうやら誰かが不法に幻獣を召喚し、その幻獣が暴れているらしい。


「……まさかの幻獣災害とは。

 しかもよりにもよって旧都で……。

 どこよりも防備がしっかりとしている上に、人材、幻獣共に豊富……すぐに鎮圧されることだろうねぇ」


「お、おぉ……幻獣災害が起きるとこういう感じになるんですね。

 番組の続きも見たかったけど、災害ならしょうがないですかねぇ。

 ……やっぱり神様とかが頑張る感じですか?」


 ハクトがそうコメントすると、ユウカが言葉を返してきて……ハクトは首を左右に振ってから言葉を返す。


「いや、この程度では動かないだろう。

 今回の旅行ではどういう訳だか、縁あってお会いすることが出来たけど、普段はお見かけることすら稀な存在だからね……。

 普通の災害で出てくることはまずないかな……被害が甚大で多くの人が望めばもしかしたらという感じだけども、そこまでの被害になることなんて、それこそ歴史に残るレベルの稀さになるからねぇ」


 そんなハクトの言葉を受けて納得したユウカは、それ以上は何も言わずに緊急特番をじっと見やる。


 グリ子さん達幻獣組も緊急事態とは考えていないのだろう、大あくびをしたりゴロゴロしたりと、興味を示さずにゆったりと体を休めている。


 もしその幻獣が危険な存在だったなら、なんらかの反応を示すはずだが、それもなく……ハクト達は特に慌てることもなく、テレビを眺め続ける。


 ……と、またもチャイム。


 ワゴンの回収にでも来たのだろうかとハクトが玄関に向かってドアを開けると、ドアの向こうには古臭い甲冑姿に大きなまさかりを肩に乗せた男の姿があり……その男性はなんとも気軽な声をかけてくる。


「よう、幻獣倒しに行こうぜ」


 気軽過ぎるその言葉にハクトはどう返したものかと困ってしまうが……、


「わぁ、行きたいです! 一緒に戦って色々勉強したいです!!」


 と、ユウカが元気いっぱいな声を上げたことで悩む余地がなくなってしまう。


 その上グリ子さん達が、


「クッキュン~」

「わふー」

「プッキュン~」


 と、やる気満々な様子で玄関に向かってしまったので、もう行くしかなくなってしまう。


「……せめて装備はしっかりしていこう」


 ハクトに言えることはそのくらいのもので……そんなハクトの言葉を受けてユウカは、自分が今室内着であることに気付き……戦闘のためのスーツ姿に着替えるために、自室へと駆け戻り……ハクトもまた、緊急時のためにと車に積み込んでいた狩衣を取りにいくために、車へと足を向けるのだった。


お読みいただきありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
軽いなこの人(神)
のりが、「ひと狩り行こうぜ」w
玄関前にクマが待ってたらいいな(≧▽≦)
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