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毛玉幻獣グリ子さん  作者: ふーろう/風楼
第三章

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223/272

決着


「あー……ご無事ですか?」


 グリ子さんの体当たりを受けて吹き飛び、駄目押しということでユウカが猛ラッシュを叩き込み……叩き込みすぎたせいで粉微塵となり、その残骸を布でもって包み込んだハクトが、グリ子さんに抱きついたままの戸田に声をかける。


 危機を察知し咄嗟に動いたグリ子さんに助けられ、その流れで抱きつくことになり、抱きついたままグリ子さんの戦闘に付き合うことになった戸田は、物凄い力で巨大化したグリ子さんに張り付き続けていて……ハクトに声をかけられたことにより、どうにか冷静さを取り戻し、そっとグリ子さんから離れ、居住まいを正しコホンと咳払いをし……これ以上このことについて触れてくれるなと態度で示してくる。


 一方、戸田に抱きつかれることになったグリ子さんはまんざらでも無かったというか、頼られて嬉しく抱きしめてもらえたことが嬉しかったようで、悪くない気分だっただけに戸田が離れてしまったことにちょっとだけガッガリするが、ハクト達と一緒に一つの仕事を終えられたということを思い出し、満足感に浸り始める。


 そうして良い顔をするグリ子さんの足元では、フェーとフォスも似たような良い顔をしていて……そしてユウカは、せっかくの格好いい篭手が壊れて汚れてしまったことを残念がって肩を落としていた。


「確かにその篭手は風切君の戦闘スタイルにマッチした良い装備だったね。

 戸田さんが落ち着いた後に頼めば予備を譲ってくれるかもしれないし、定期的に購入出来るかもしれないから、後で相談してみると良い。

 役所の装備なら課長さんに相談してみると良いかもしれないね」


 そんなユウカにアドバイスをしたハクトは、改めて周囲を見回し……ワラスボ宇宙人の残骸を見逃していないかなど、丁寧に最終確認を行っていく。


 それらが終わったなら今度は巨大グリ子さんに声をかけ、グリ子さんに手伝ってもらいながらその体の上に乗り……天井に触れての確認だ。


 そこに貼られた結界を調べ、そこに流れる魔力を調べ……一体誰が意図的に結界を薄くするなんていう、とんでもないことをやらかしたのかという調査をしていく。


 ただ結界に触れただけで全てが分かる訳ではないが、それでも今度のために必要になるはずだと調べ……そして戦いが終わってから今までずっと黙っていたブキャナンがその翼でもって飛び上がり、ハクトの調査を手伝い始める。


「……アタクシも舐められたものでやすねぇ」


 そしてそんな一言。


 それが聞こえたのはハクトと、恐らくグリ子さんだけで……ハクトは冷や汗を流しながら調査を続けていく。


 ブキャナンは古くからこの国に住まう幻獣である。

 

 現存する中で最古の幻獣と言っても良い程の存在であり、何らかの危機の際には国家からの依頼で動く、四聖獣に並ぶ程の存在でもある。


 仮に何者かの思惑通り結界が破られて、ワラスボ宇宙人がここから逃げ出したとしても、ブキャナンがそれ以上の暴挙を許さないはずだ。


 というか、ブキャナンが本気を出していたなら速攻でワラスボ宇宙人を倒すか、封印出来ていたはずで……ブキャナンがここにいる時点で、何者かの思惑は成立しないことになる。


 だがそれでも何者かはそれを実行していた。


 ブキャナンを侮ったのか、何かがあってもブキャナンがどうにかしてくれると思っていたのか……だがどちらであれブキャナンからすると、侮辱されたようなものであり、ほんの少しだけ苛立ってしまっているようだ。


「な、舐めたと言いますか、大僧正がいるなら安心だと思ってのことかもしれませんよ」


 と、ハクトが返すとブキャナンは、


「事前に相談があったならまだ分かりやすが、何もなしでこれは舐めてくれたということでございやしょう。

 ……ハクトさんやユウカさんはアタクシにたっぷりの敬意を示してくださいますし、普段から良いお付き合いをしてくださっておりますし、お二方とも世のため人のために働いていらっしゃいますから、いくらでも力をお貸ししますし、多少砕けた態度を取っても友好の証としてありがたく頂戴しやすがね、そうでない人に利用されるというのは我慢ならない話でございやしょう。

 今回の件に関しましてはサクラ先生の動向にも思う所がございやすし……アタクシなりに動かせていただきたいと思いやす。

 なぁに、ハクトさん達にご迷惑はおかけしやせん、どうぞ美味しいご飯でも食べて疲れを癒やしながら朗報を待っていてください」


「……祝勝会は大僧正が戻ってきてからにしますよ。

 風切君もグリ子さんも、戦友の大僧正がいなかったらがっかりしますよ」


 ブキャナンの声に込められた力から、説得したり止めたりするのは無理だと悟ったハクトが諦め気分でそう返すと、それが嬉しかったのかブキャナンは、仮面の奥で目を細くし、いつになく嬉しそうな表情をする。


「そいつは楽しみでございやすねぇ……そしてせっかくの戦勝気分をがっかりさせてしまうのは忍びない話でございやすねぇ。

 ……分かりやした、大問題にならない程度に事を収めつつ、無事に帰還することをお約束いたしやしょう。

 いやはやまったく、ハクトさんには敵いませんねぇ」


 と、そう言ってからブキャナンは調査を終えたのか床に降り立ち……それから経文のような呪文を唱え始める。


 それからパーティ会場中に羽根を撒き散らし、魔力を唸らせハクトが回収しきれなかった残滓を浄化し始める。


 徹底的に塵も残さず、過去様々な幻獣と戦ってきたブキャナンは、一切の可能性を残さない徹底ぶりでパーティ会場を綺麗にしていき……最終的にはなんでもない埃さえも魔力でもって浄化してしまう。


 結果、経年劣化によりボロボロで薄汚れていたはずのパーティ会場が、それなりに見られる状態へと変化し……戦闘での破壊跡が残っていたりはするものの、パーティ会場らしい姿を取り戻す。


 それからブキャナンはハクトに指示を出し、ハクトが入口へと向かい……事前に決められていた通りの魔力での合図を外に向けて発する。


 すると結界が消えていき、封印が解除され、出入り口であるドアが開くようになり……そうして外で控えていた者達が、警戒心を顕にしながら流れ込んできて、綺麗になったパーティ会場を目にし……大いに驚き、ポカンとした表情を晒すことになったのだった。




お読みいただきありがとうございました。

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巨大もふもふグリ子さんにずっと抱きついていたい!
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