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毛玉幻獣グリ子さん  作者: ふーろう/風楼
第三章

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頼るのはやっぱり


 10分耐えてみせろと言われて1分しか耐えられなかった。


 それだけを見ると少し情けないことだったが、タケル達三人は素人同然……あらゆる経験と実力が不足している現状、仕方のないことだった。


 ハクトもそれは分かっていて……その1分で大体の実力を把握したハクトは、さて、どうしたものかと頭を悩ませる。


 このレベルだと初歩の初歩から教え鍛えていかなければならない……が、ハクトにはその時間がなく、資格もない。


 戦闘訓練であればユウカが教えられるかもしれないが、それ以上のことは難しく……ハクト達の手に余る状況だ。


 その上、タケル達の幻獣にはなんらかの上位存在の意図が関わっている節があり……敗北し、項垂れるタケル達のことをじぃっと見やったハクトは、うんと頷き、少し離れた所で、ハクトの容赦の無さにドン引きしているユウカへと声をかける。


「サクラ先生にお願いすべきだろう。

 幻獣の力は凄まじいし、才能もあるかもしれないが、それ以外が足りなすぎる。

 サクラ先生以上の指導者は知らないし……様々な資格とコネのあるサクラ先生の下で学べば、将来も安泰……仮に幻獣の力を使いこなせなかったとしても、それなりの仕事を紹介してもらえるはずだ。

 ……堅苦しいとか面倒だとか、そういったことを気にしている場合ではないと思う」


「あー……やっぱりそうなります?

 三人ともすでに社会人になってるのに、そこからまた学生になるのは厳しいかなーとも思ったんですけど」


「……いや、学生になれとは言っていないよ。

 サクラ先生の下なら社会人のまま学ぶことが出来るし、学びになるような仕事も回してもらえるだろう。

 鷲波さんだって同じような状況にある訳だし……今のままよりは確実に良い状況になるはずだよ」


 グリフォンの召喚者、鷲波タダシ。


 サクラ先生の下で学ぶ、一流の召喚者であり……たまに新聞などで見かける程度には活躍していて、彼のようになれるのなら、確かに良い選択肢なのかもしれないと、そんなことを考えたユウカは、タケル達の下へと駆け寄り、その辺りの事情を説明し始める。


 その間にハクトは一旦その場を離れ……施設内部にある公衆電話に向かい、そこからサクラ先生へと電話をし、事の詳細と……タケル達の特異さをしっかりと伝える。


 するとこんな言葉が受話器の向こうから返ってきた。


『連絡してくれて本当にありがとう、ハクトちゃんは良い子ねぇ。

 皆が皆ハクトちゃんみたいに素直に報告してくれたら良かったのに……。

 とりあえず、その子達のことは任せてちょうだい、保護して育てて、一人前にするまで面倒を見てあげますから。

 ……今、世界中で似たようなことが起きていて、その力を利用しようとか私物化しようとか、そんなこと考える子ばかりで、ほんと嫌になっちゃってたのよねぇ。

 ハクトちゃん達は本当に、聞き分けのいい子で助かっちゃうわ……とりあえずすぐに迎えをやるから、それまでその子達のことを見ておいてくれる?』


「……はい、わかりました」


 そう返してからハクトは受話器を置いて通話を終了し、ユウカ達の下へと足を向ける。


 するとそこではグリ子さんから貰ったらしい羽毛を服の何処かに刺し飾ったタケル達が、ユウカから格闘技の指導を受けていて……ハクトはその様子を黙って見守り、一段落した所で声をかける。


「今サクラ先生……四聖獣候補にもなった吉龍サクラ先生に連絡をしてね、君達の事情を話してきたよ。

 すると……君達のような境遇の人達が世界中に現れているとかで、サクラ先生はこれまでにもそういった人達の保護をしていたんだそうだ。

 ……君達の力を狙う良からぬ輩も多いとかで、ここは素直に保護を受けるべきだろう。

 サクラ先生は指導者としては超一流、並ぶ者なしと言って良い程の人物であり、心優しい人格者でもあり、君達の将来を保証してくれる有力者でもある。

 サクラ先生に保護されておけば、何の憂いも不安もなく、日々を過ごせると思うよ」


 するとタケル達は、それぞれこんな反応を見せる。


「サクラ先生の名前はユウカさんから聞いていましたけど……それ程の方なんですか?」


 と、タケル。


「将来を保証って……召喚者としてダメでもなんとかしてくれるってことですか?」


 と、サク。


「……サクラ先生の下で学べば私も四聖獣になれますか?」


 と、トモエ。


 トモエのまさかの野心に少し驚きながらハクトは、三人に言葉を返していく。


「サクラ先生は俺の師匠でもあり、あの学院の歴史に残るような人物で……今回のような状況においてサクラ先生以上の適任者を俺は知らないかな。

 そして召喚者としてダメでも、まず間違いなく生きていけるよう手配してくれる方でもある。

 幻獣と共に並かそれ以上の仕事を紹介してくれるだろうし、努力次第では一流企業への就職も夢ではないだろう。

 学院時代サクラ先生の推薦をもらえた学生は、どんな進路であっても希望通りというか、フリーパスをもらったかのように順調に進んでいたよ。

 ……そして、四聖獣に関しては何とも言えないかな。

 一流に学び、一流相応の実力を得たとしても、同じ時代に4人以上の天才が生まれたなら、それで席が埋まるのが四聖獣だ、気軽になれると言うことは出来ないかな。

 ……それでもまぁ、四聖獣を本気で目指すのであれば、一番確実な方法であるとは断言出来るよ。

 サクラ先生以外に師事したなら遠回りをすることになるだろうね」


 そんな言葉を受けて三人はそれぞれ納得したようで……真剣な顔となって頷く。


「よし、良い顔だ。

 グリ子さんの羽毛も受け取ったようだし……俺達に出来ることはもう無いかな。

 俺なんかの話をしっかりと真面目に耳を傾け、真剣に向かって来てくれた君達ならサクラ先生の下でも問題なくやっていけるはずだ、頑張ってくれ」


 そうハクトが激励すると、三人よりも早くユウカが言葉を返す。


「あ~、あの長いお話や、無茶な模擬戦ってタケル君達の適正とか覚悟を見るためだったんですね?

 な~るほど、なんだってあんな長話するんだろってずっと気になってたんですよー、なんかよく分からない内容も混ざってましたし」


 それを受けてハクトは軽く頭を抱える。


 ハクトが今日話していたことは、全て初歩の初歩で学ぶ、どんな試験でも出てくる可能性のある基本的なことばかりだったのだが……それをよく分からないなどと言ってしまうとは……。


 これは三人よりもユウカのことをなんとかしなければいけないかもしれないと、そうハクトが考え決意したことにユウカは気付くことなく、呑気な言葉を続ける。


「とにもかくにも、これで全部解決! タケル君達の未来も明るくなったってことでー……今日の晩御飯は皆で打ち上げパーティですかね?」


 それを受けてハクトはやれやれと首を左右に振り……それから改めてタケル達とついでにユウカに向けた基礎講座を、サクラ先生の迎えがくるまでの時間、徹底的に叩き込もうと決意するのだった。



挿絵(By みてみん)

お読みいただきありがとうございました。


そしていぬひろさんから200話記念イラストをいただきましたので掲載します


なんとも元気なフェーとユウカのダブルキック!


ユウカも素敵なのですがフェーの表情もたまりませんね

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