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毛玉幻獣グリ子さん  作者: ふーろう/風楼
第三章

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172/276

グリ子さんの


 ハクトがタコ料理に励んでいると、玄関の呼び鈴がなって……ハクトが手を離せないと見たグリ子さんが応対に向かう。


 ハクトも来客は恐らくユウカだろうと考えていて、ユウカであればグリ子さんの応対で問題ないと考えていて……料理の手を止めずに励み続ける。


「おじゃましまーす!」

「わふー!」


 そして予想通りの来客がやってきて……ハクトは「いらっしゃい」と声だけ返し作業を続ける。


 タコの刺身を作り、茹でダコを作り、一口サイズに切り分け……タコの唐揚げを作り。


 更に量が多すぎるからと酢漬けを作り……これも挑戦だと干しダコ用の下ごしらえをし……ついでにタコをたっぷりと入れたおでんを作り、鍋がある程度煮立ったなら弱火にしてからリビングへと向かう。


「もう少しで料理が出来上がるよ」


 なんてことを言いながらリビングに入ると予想もしていなかった、ソファの前に箱が山積みとなった光景が視界に入り込み……ハクトが何事だろうと首を傾げていると、それらの箱の整理をしていたらしいユウカが言葉を返してくる。


「色々お世話になってるから持っていけって、お母さんから色々持たされまして……なんかお菓子とかタオルとかそういうのが入ってるみたいです。

 それと……どっかにお肉があるはずなんですけど、どれか分からなくなっちゃってるんですよねぇ。

 冷凍庫に入ってたやつだから冷えてると思うんですけど……」


 なんてことを言いながら箱を持って振って中身を確かめ、次の箱を持って……と、そんなことを繰り返すユウカ。

 

「ありがとう、気を使わせたようで悪かったね」


 と、そんなことを言いながらハクトはフェーの方をちらりと見やり、フェーはそれを受けて鼻をすんすんと鳴らして肉を探し始める。


 そしてすぐに当たりをつけて、その箱を食んで箱の山から引っ張り出し……ハクトの下へと持ってくる。


 それを受け取ったハクトは台所に向かいながら、


「すぐに準備するからテーブルについていてよ」


 と、声をかけ……肉を冷蔵庫に押し込んだなら、用意した料理の数々をリビングへと運んでいく。


 料理の半分はテーブルの上へ、残り半分はグリ子さんとフェーの食器へ。


 ユウカにも手伝ってもらいながら配膳を行い、全員分の食器やお茶も用意出来たなら席につき、


「いただきます」

「いただきます!」

「クッキュン!」

「わっふー!」


 と、声を上げて食事に取り掛かる。


 釣りたて新鮮、そのまま食べても美味しいものをしっかりと手を入れているので、どれも美味しく、ハクトを含めた全員が驚き喜び、一心不乱といった様子で箸やクチバシ、口を動かしていると、電話のベルがけたたましく鳴り響く。


「……こんな時間に誰だ?……」


 休日の夕食時……こんな時間に電話してくる相手に覚えがないハクトは、食事を邪魔されたことで少しだけ不機嫌そうにしながら立ち上がり、電話の下へと向かう。


 ユウカ達はそんなハクトのことを気にしながらも、口を動かし続け……そしてすぐにその全神経を食事へと向ける。


 そうして一同が食事に熱中していると電話を終えたらしいハクトが戻ってきて……首を傾げながら戻ってきたハクトは、タコの出汁たっぷりのおでんをつつきながら口を開く。


「電話は課長さんからだったよ……。

 なんでもあの事件以来、不安で眠れない子が増えているとかでね……あのハニワの発表でいくらか緩和したものの、見逃せない数になっているらしいんだ。

 それで……何を思ったか課長さんはグリ子さんにぬいぐるみを作ってもらえば解決すると思ったらしい。

 ……グリ子さんのグッズに関してはそこらで勝手に販売しちゃっている訳だけども、そういうものではなく、グリ子さん『が』作ったものが欲しいらしい。

 ……それはまぁ確かにグリ子さんが作れば、子供達を守ってくれる特別なぬいぐるみになるんだろうけども、そういった力なら他の幻獣達でも良いだろうに……。

 子供の味方や子守の幻獣はかなりの数いたはずなんだがなぁ……」


「グリ子さんはこの辺りで子供に大人気ですから、当然じゃないですか?

 それにそこまで深刻な子って、そう多くはないはずですし……先輩の糸があれば簡単に作れちゃいそうですし? それで先輩達を頼ったんじゃないですかね?

 ……それとこれは根拠のない直感なんですけど、ああいう連中って悪夢を利用するっていうか、悪夢を通じて精神を弱らせたり支配したりしてきそうですから、そういうのから守ってあげるのは大事なことだと思いますよ」


 するとユウカがそう返してきて……ハクトは「なるほど……」と呻いて頭を悩ませる。


「クッキュン! キュンキュキュン!」


 そしてグリ子さんが……食事を通じて魔力を充実させ、キラキラキラキラとしつこい程に羽毛を輝かせたグリ子さんが、子供は守らなきゃ駄目でしょ! と、そんな声を上げてきて……それで決心したらしいハクトは、大きく頷く。


 それを受けてグリ子さんは体内に溜まった魔力を放出させ……次々と煌めく羽毛を抜き飛ばしていく。


 ただ抜くだけでなく新しい羽毛もしっかり生やし……抜いて飛ばして生やして、抜いて飛ばして生やして、魔力を補充するために食べて、抜いて飛ばして生やして食べてと繰り返す。


 そうやってリビングいっぱいに舞い飛んだ羽毛は、ハクトが糸を操ることで回収し、一塊にしていき……そのままなんとなくこんな感じか? と、予備の布などを取り出してのぬいぐるみ作りまで始める


 グリ子さんをそっくりの……ミニグリ子さんよりは小さい、ミニミニグリ子さんといった感じのぬいぐるみを一つ試作したなら、それをユウカの前に置く。


 そしてもう一つ作りフェーの前に置き、グリ子さんの前にも置き、3人のリアクションを見て……3人共特に作りに不満はないようなので、それを量産していく。


「わふーわふ!!」


 するとフェーが、自分のも作れ! 自分の魔力だって役に立つ! と、そんな声を上げてきて……それを受けてハクトは、そっと抜いたフェーの毛をいくらか織り込んだ、フェーのぬいぐるみもささっと、魔力で操った糸でもって縫い上げるのだった。


 


お読みいただきありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ハイ、ハイ、ハイ、ハーイ( ´ ▽ ` )ノ 私も欲しいです!!
[一言] ミニミニグリ子さんぬいぐるみ! 私も欲しい!!
[一言] 欲しい!綿毛グリ子さんの ヾキーホルダー〃
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