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毛玉幻獣グリ子さん  作者: ふーろう/風楼
第三章

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予言

 

 それからいくらかの言葉を交わし、満足したらしい叔父が帰っていって……それを見送るなりグリ子さんはタタタッと走り出し、家の中を駆け巡る。


 駆け巡りながら自分の羽根をそこかしこに飾ったり、潜ませたりしていく。


 そうやって家中に羽根を仕込んでいって、魔力を込めて……結界を強めていく。


 ハクトの叔父が敵対的な人物でないということは理解したが、それはそれ……自らの結界をあっさりと突破されてしまったことが許せなかったようで、その仕込み方には余念がない。


 リビングから台所、客間に風呂場にトイレ、押し入れに……そしてグリ子さんが階段に駆けていったのを受けて、リビングのソファでゆっくりと休んでいたハクトは驚き立ち上がり、階段の方へと足を進める。


 グリ子さんのあの体……というかあの足では階段を上るのは難しいはず、一体どうするつもりなのかと視線をやると、グリ子さんはその丸い体を……お腹の辺りをグイグイと階段に押し付けていて……押し付けたままスルスルと階段を上がっていく。


「ん? ん?? ん???」


 思わずハクトの口からそんな声が漏れる。


 あれは足でもって上がっているのだろうか、しかし動き自体はまるでエスカレーターで移動しているようであり、足で移動しているようには見えず……足そのものの動きも羽毛の中に隠れてしまっているせいで確認することが出来ない。


 そんなハクトに構うことなくグリ子さんはスルスルと滑らかな動きで階段を上がっていき……そうして二階のあちこちに羽根を仕込んでいく。


 ハクトはそんなグリ子さんのことを思わず追いかけていて……二階での仕事を終えたグリ子さんはハクトに構うことなく階段へと向かい……上がってきた時と同様に体を、今度はお尻の辺りを階段に押し付けて、そのままスルスルと降りていく。


「……こ、これならグリ子さんのベッドは二階に置いても良かったな……」


 そんな光景を見て、そんな言葉を口にするハクト。


 グリ子さんのベッドは現状、リビングに設置されていて……それは寝室がある二階への移動が困難だろうからという、ハクトなりの配慮だったのだが、どうやらそういった配慮は必要なかったようだ。


「キュンキュン」


 そんなハクトの思いやりを知ってか知らずか、一仕事終えて満足そうな表情をしているグリ子さんはベッドへと……ピョンッと飛び乗ってゆったりと寛ぐ。


「ベッドには飛び乗るのか……」


 階段もそうやって飛び進んでいたなら余計な疑問を抱く必要もなかったのだが……と、ハクトがそんなことを考えている折、電話が鳴って……ハクトは電話に出るために廊下へと移動する。


 そうして受話器を取ると、サクラ先生の声が聞こえてきて……挨拶を交わしたハクトは、それから始まる世間話に相槌を打っていく。


 サクラ先生が管理している施設に来てくれてありがとう、ドラゴンの遊び相手になってくれてありがとう、フェーに遊び相手が出来て良かった、ドラゴン達も喜んでいた、ぜひともまた来て欲しいといった、そんな内容の世間話に。


 長々と……サクラ先生のことを尊敬しているハクトでさえうんざりする程に続いたそれが落ち着いた折……長電話をしているハクトのことが気になったのか、グリ子さんがやってきて声をかけてくる。


「クッキュン、クキュン?」

 

『あら、グリ子ちゃんもお話したいの?』


 するとサクラ先生がそれに返事をし始め……大好きなサクラ先生の声を聞いたからか、グリ子さんは目を輝かせての嬉しそうな顔をし……ハクトが気を利かせて受話器をグリ子さんの方へと向けると、あれこれと会話をし始める。


 サクラ先生にグリ子さんの言葉は分からないはずなのだが、何故だか不思議と会話が成立していて……そのまま長話となりそうな気配を察したハクトが、受話器を自らの耳に当て、口を開く。


「先生……ご要件は?」


『ああ……そうでした、お話が楽しくて大事なお話を忘れていました。

 近々、広範囲の幻獣災害が起きそうでして……ハクトちゃんにも協力をお願いする予定ですので、準備の方をお願いしますね。

 お勤めになっている会社からはわたくしの方から連絡しますので、そちらについては安心してください。

 ことが終われば国からたっぷり……会社にもハクトちゃんにも報酬が支払われるはずですよ。

 それとユウカちゃんにもこのことを伝えておいてくださいね』


 そんな話をされてハクトは一瞬硬直するが……すぐに再起動して言葉を返す。


「さ、災害とはどういうことです? 何故起きそうだと?」


『ハクトちゃんも知っての通り、幻獣の中には予言の力を持つ子達がいるんですが……その正確性には疑問符がつきます。

 当たるも八卦当たらぬも八卦と言いますか、予言の内容も曖昧と言いますか……確率的に見ても信頼できるものではありません。

 ……が、国内の予言幻獣全てが同じ予言をしたとなると、疑問符どうこうと言っている場合ではなく、兎にも角にも備えをする必要があるでしょう。

 既に四聖獣他、国内の有力幻獣召喚者にはその旨連絡してあり……皆さんそれぞれに動き始めてくれています。

 そういう訳でハクトちゃんもお願いしますね』


「……分かりました、可能な限りの備えをさせていただきます。

 ……それでその予言の内容については教えていただけるのですか?」


『教えてあげたいのは山々なのですけど、政府の方が公表を渋っていまして……何かが起こるらしいことを伝えるのが精一杯なんです。

 四聖獣達は皆知っていますし……各都道府県知事や各協会長、警察屋さんなんかにも伝わっているそうなんですが……ごめんなさいね。

 とりあえず災害か何かが起きるものと思って、食料備蓄なども進めておくと良いかもしれませんね』


「……はい、分かりました。

 自分なりに打てる手を打たせていただきます。

 ……準備予算ということで事前にいくらか頂戴しても?」


『まー、ハクトちゃんったら、社会人になったせいかちゃっかりしちゃって……。

 分かりました、あなたの口座にあなたの分とユウカちゃんの分、送金しておきますのでそれを使ってください。

 領収書はしっかりと残しておくように』


「了解です」


 と、そう言ってハクトは受話器を置き……それからグリ子さんを伴って家を出る。


 このことは少しでも早くユウカにも伝えておくべきだろうと考えたからで……隣家のインターフォンを押したハクトは、大事な用事があるとの旨を伝えた上で玄関へと足を進めるのだった。


お読みいただきありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[一言] 自重を乗せた上で羽毛を波立たせるように動かして、移動しているようですね。 横回転方向に動かせば超級覇王電影弾みたいになるのでは。
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