放課後の約束
「よし、連絡はこれくらいだな。この後は、帰宅か学校見学のどちらかだ。各自で判断してくれ。では、解散!」
HRが終わると、悠は松野に話しかけ、二人で教室を出て行った。
「俺も帰るか・・・」
クラスを見渡すと友達と話しているやつや黙々と帰る準備をしているやつなど様々だ。新しい学校知らないメンツの現状では放課後の生活の仕方でも結構なばらつきがあるようだ。迅も帰る支度を始めた。
「お前、なんか部活か委員会はいるか?」
「とりあえず、今日見て回って決めようかなって思ってる」
「だよな~、せっかくの高校生活なんだし、なんかしたいよな~」
「どうせ、運動部に入って彼女作りたいとかだろ?」
「いいじゃん!別に!お前も彼女欲しいだろ?絶対、部活してるやつのほうが持てるじゃん」
「委員会は?」
「生徒会とかならよさそうだよな~」
「でも、委員会とか絶対だるいぞ、この学校、結構行事とかすごいから委員会のやつらは大変らしいし」
クラスからどこからともなくそんな話が聞こえてきた。たしかに、委員会がだるそうなのには同意だが部活に入ったからといってモテるとは限らんだろ。部活の中に自分よりもうまい奴がいたらジ・エンドだ。
そいつにばっかフラグが立ってあとはモブ確定だ。よって、俺は帰りまーす!家に帰って趣味に没頭だ。
「忘れ物はないな。携帯持った、財布持った、おやつのバナナ持った、よし。」
最後にもう一度クラスを見渡した。クラスに残っているかばんは半分くらいでクラスの半分のやつがすでに帰ったことが分かった。教室を出て、下駄箱で靴を履き替える。
「おっと・・・・」
下駄箱を交換していたことを忘れていた迅は間違って、一番下の下駄箱を開けてしまった。中にはとてもサイズの小さい上履きが入っていた。
「あいつも帰ったのか」
如月の下駄箱を閉じ、今度は自分の下駄箱を開け靴に履き替えながら如月も帰るとは意外だなと考えていた迅。なんとなく如月は部活をするだろうと考えていた迅。
正門から学校を出て最寄りの駅に向かって歩いていった。
「・・・・ん?」
学校から出て数分、前方に腰くらいまであるブロンドのロングの髪をした小さい高校生を見つけた。なぜ高校生かわかったかというと、自分と同じ高校の制服を着ていたからだ。歩き続けていると、やがて追いついた。
「・・・・あっ」
「さっきぶりだな」
「追いかけてきたの?」
「そう見えるか?」
「・・・見えない」
「正解だ」
「じゃあ、何でここにいるのよ」
「家に帰ってるからだが?」
「むっ・・・・そうじゃなくて!私のほうが先に学校でたのに何でここにいるのってこと!」
なるほど、確かになんでだろうか・・・そう考えながら迅は足元をなんとなく見た。
「あ~、なるほどな」
「なにがよ?」
「たぶん・・・歩幅だな。」
「・・・歩幅?」
「あぁ、歩幅って身長の半分かそれより少し短いくらいなんだ」
「へ~、馬鹿にしてる?」
「してない。それに俺は割と歩くのが速いらしい。お前との距離が縮まってもおかしくないってことだ」
「ふ~ん。でも今は私と同じくらいの速さじゃない。おかしい。」
「いや、お前と話したいから速さ合わせてるだけだが?」
「ふぇ?」
「あっ、赤くなった。」
「な、なってない!」
ほんと、ちょろいな。正直、狙ったわけではないんだが・・・まだ、いまいちこいつの照れる基準が分らんな。
顔をほんのり赤らめ、髪を指に巻き付けながらいじり、照れているのを隠そうとする如月を見ながらそんなことを考える迅。
「一人で帰るほうがよかったか?俺は割と暇してたんだが・・・」
「べ、別に~?、一人のほうがいいわけではないし?、だ、だからって別に話しかけられたのがちょっと嬉しかったりしないし~?さみしかったとかないし?ないし!」
一人でいろいろ聞いてもないのに暴露しだす如月。あほだな。
「そんなにさみしかったなら明日から一緒に帰るか?」
唐突にそんなことを口走る迅。
「ふりゅあ?なな、な何言ってるのよ!?」
「あー、悪い悪い、冗談だ。」
「・・・・冗談?」
「ああ、悪い」
「・・・そう」
如月が慌てるから冗談にしたんだが、意外に残念そうな表情をする如月。正直、どっちでもいい。俺も帰るときには話し相手はいたほうがいいがいなくてもいい。
「・・・ねぇ」
「ん?」
「・・・・って」
「いいぞ」
聞こえなかったが、なんとなく話の流れからして言いたいことはわかった迅。
「・・え?」
「一緒に帰るんだろ?俺は別にいいぞ」
「聞こえたの?」
「聞こえてないと思いながらあんな小さい声で言ったのか?お前、案外めんどくさいな」
笑いながらそう言う迅。
「だって、なんか恥ずかしいし・・・」
「別に一緒に帰る約束くらい誰でもするだろ?」
「・・・そっか」
「ああ、そうだ」
「そうね!」
きれいな笑顔でそう言う如月。
「・・・いいな」
「ん?」
如月を見てついついそんなことを言ってしまった迅。
「なんでもない」
「・・・そう?」
「ああ」
「じゃあ、約束ね!」
「はいはい」
如月との一緒に帰る約束は予期せぬ事態だが案外楽しい約束ができたなと感じる迅。それは如月も同じようで少し彼女の表情にも笑顔が見える。
こうして二人の距離は意図せず、縮まったのだった。
「忘れるなよ?」
「忘れないわよ」
「・・・そうか」
「なぜ?」とは迅は聞き返さなかった。なぜなら、隣の彼女も自分と同じ気持ちなのだろうと思ったからだ。
並んで歩く二人の間にそれから会話はなかった。少し赤くなった二人の顔はきっと赤い夕焼けのせいだろう。そんなことを二人とも考えながら家に帰るのだった。
少しづつ仲を深めていきたい!
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