プロローグ
白犬狼です
こういうのは初めてで上手くかけているかわからないですが、読んでくれると幸いです。このシリーズは少し長く続くのでぜひとも楽しんで頂ければと思います。
タイトル通り北欧神話関係のお話ですが、北欧神話がわからない人でも楽しめる作品になっております。
0話
月明かりに輝いた刃が、隙が出来た黒一色の人型を胴体を切り裂き、荒れた息が白く染まっていく。
周囲から聞こえるのは断末魔や剣がぶつかり合って出る金属音のみで、どれぐらいの時間がたったのかも分からずただ作業の様に敵を切り裂いていく。
「チッ―――」
だが、敵は倒しても倒しても敵は留まることを知らず、それどころか敵の数はどんどん増え続けているように感じる。
「くっ―――」
少しの隙を狙い敵の一体が俺を狙い剣で斬りかかってきた。
咄嗟に地面を後に蹴り刃を避けるも、体に身に着けたチェストプレートに微かに当たってしまった。
「はあぁぁぁ!!」
地面を前に蹴りその勢いを利用し、敵の胴体を切り裂いた。
ここまでどれぐらいの時間が過ぎただろう。限界も近くなり、息も次第に荒くなってきた。仲間の断末魔さえももう聞こえず、思考もまともに働かなくなっている。
だが、それと同時に僕は捉えていた。遠くの方で、敵と敵との僅かな隙間から全身を漆黒の鎧を身に纏い、巨大な大剣を握りしめた騎士の様な奴が。
その異様な威圧を持っている黒騎士こそが敵側のいわゆる長だ。もう俺に迷いは一片もない。「奴を殺す」その考えだけが思考を埋め尽くした。
「そこ、どけぇーー!!」
無くなりかけの体力を振り絞り、剣を限界まで加速させて立ちふさがる敵を次々と切り倒しながら黒騎士へと突進した。
その最中もチラチラと視界に映るあいつは直立不動してこちらを鎧越しに見つめている。遠くからでも分かる奴の威圧は近づくにつれて押しつぶすかの様に強くなり、それに反応してか体が僅かに震え出す。
「せりゃぁぁ!!」
恐怖を吹き飛ばす様に大声を上げ体の震えを紛らわせ、一気に奴がへと距離を詰め、ついに奴の姿を間近で捉えた。顔まで強固な黒色の鎧で包まれた奴は、まさに黒騎士と言うにふさわしい。
「死ね!!」
奴への殺意を込めた刃を奴の胴体の鎧の隙間めがけて突き出した。まっすぐに突き出した剣先は一直線に黒騎士へと向かっていく。
だが、奴は持っていた大剣で刃を防ぐと左足で僕を胴体をへ蹴り飛ばした。
「ぐわぁ!!」
強く地面に打ち付けられ大地を転がった。物静かな空間
痛みを堪え剣を使いなんとか立ち上がると、目の前に黒騎士が大剣を握りしめたままこちらを見ていた。
「お前は、何故そこまでして私を倒そうとする?」
黒騎士はそう僕に語りかけてきた。冷たく、何人も殺してきた化物と思えないほどの、冷静な声で。
「私は救済しているにすぎない、私からすれば少年、お前は救済を邪魔している存在にしかならない」
「ふざけるなぁぁぁ!!」
頭に血が登り剣を奴に不規則に振り下ろした。何度も何度も、奴への怒りと殺意を剣に込めて強く、速く、激しく、自分の限界が壊れるほどの力で。
だが、そんな刃は奴の鎧を掠る事さえ出来ず奴の大剣によって阻まれた。その動きは大剣と思えないほど身軽でこちらの攻撃を無へと返していく。
そして、奴の右斜め上から刃を振り下ろした瞬間―――
奴はその刃を大剣で受け止めると大剣を真上に持ち上げ、必然的に隙が出来た僕の剣目掛け、両手で強く握りしめた大剣を横へと振り下ろした。
甲高い金属音を上げた僕の剣は、乱雑な断面を残してそのほとんどが弾け飛んだ。
「なっ――!!」
呆然と頭が真っ白になった僕に奴は追撃の刃を胴体目掛けて放った。ほとんど刃が失われた剣でなんとか受け止めるもそのあまりに強い衝撃に大きく後ろによろめき、膝をついてしまった。
そして、奴は膝をついた僕に大剣の剣先を向けた。
「抗うな、お前もすぐに私が救済してやる」
奴は大剣を振り上げそして、
「さらばだ……少年」
大剣を振り下ろした。戦意喪失し、覚悟を決め、諦め、目を閉じた。
しかし、痛みは一向に来ない。恐る恐るゆっくりと目蓋を開くと、白く輝く美しい細剣が大剣を受け止めていた、そして細剣は大剣をつたり奴の体を切り裂いた。
後ろへよろめいた黒騎士は体制を崩し、膝をついた。
「やるな……小娘」
細剣をたどると、白髪に白い服を身にまとった少女が右手に細剣を握りしめていた。だが、初めて見るその少女は剣士と言うにはあまりにも無防備で、鎧はまだしも、チェストプレートさえもつけていない。
「大丈夫? 立てる?」
少女は振り返り、僕に手を差し出した。手を握り、少女の力を借りて立ち上がる。
「君は……誰?」
だが、少女は僕の質問に答えず背を向けると、ブツブツと何かを唱えはじめた。そして少女が何かを言い終わった瞬間。
「……!!」
僕の後ろに黄色に輝く魔法陣が現れた。その形は少しずつ姿を変え、最終的に魔法陣は光を放つ空洞の様な姿へと変化した。
「そこに入れば逃げられる。時間は私が稼ぐ」
少女は背を向けたまま僕にそう言った。
「なら君も……」
「私は行かない、一人で行って」
少女は僕の言葉を一切として聞き入れず、ただその言葉を繰り返した。
「行かないなら、俺も戦う!!」
もはや体力は皆無に等しい、だがいくら強くても少女一人を置いて逃げるのは僕には到底できないし、仲間をもう失いたくはなかった。
「二体一か……面白い!!」
黒騎士は立ち上がると、先程とは比べ物にならないぐらいの強い威圧を放っていた。
地面に突き刺さっていた仲間の剣を引き抜き、再び強く握りしめ、戦闘に備えたその時。
「ごめんなさい」
ささやくほどの小さな声で少女はそう言った。
「今なんて……」
少女に聞き返したその時、無言で僕の腕を掴んできた。
「おい、何を……」
そう問いかけても、少女は何も言わずに掴んだ手を緩めようはせず、無言で僕の腕を引っ張り抵抗しようにも少女とは思えないほどの力で振り解くことさえできない。そして、
「ごめん……」
空洞のように変化した魔法陣へと僕を投げ飛ばした。ゆっくりと時間が遅くなったかの様に落ちていき、不思議と徐々に意識が遠くなっていく。
完全に意識が消える直前、最後に見たのは少女が涙を浮かべて小さく口を動かしている姿だった。
白犬狼です
最後まで読んでくださりありがとうございます。
この次回から実際の北欧神話に少し沿っていきます。間違いがあるかもしれませんが暖かな目で見守ってください。この作品は北欧神話知り尽くした人でもできるだけ楽しめるようにしています。