エレベーター
ピチョン、ピチョン、ピチョン。
「誰かー! 助けてくれー! 開けてくれー!」
ピチョン、ピチョン、ピチョン。
私はエレベーターの扉を革靴で繰り返し叩きながら助けを求める。
ピチョン、ピチョン、ピチョン。
昨晩エレベーターに乗り階下に下りる途中立っていられないほどの大きな揺れにみまわれた。
エレベーターの床にしがみつくようにして揺れが収まるのを待っていたら、エレベーターの外から何かがブチン!!と切れる音がしてエレベーターが急降下を始める。
エレベーターのワイヤーが揺れのせいで切れたのかもしれない。
底に激突する恐怖に身をすくませていたら非常ブレーキが作動したのか、ギイキキィィィィーという音がエレベーター内に響き渡りゴツン!!という衝撃音と共にエレベーターは止まった。
暫くして死の恐怖から立ち直り扉を開けようとしたがびくともしない、扉脇の非常電話で助けを求めようとしたが通じない。
ピチョーン。
スマホで助けを求めようとしても回線がパンクしているのか此方も通じなかった。
ピチョーン。
数時間待てば回線も復旧するだろうと真っ暗闇の中恐怖に震えながらエレベーターの片隅にしゃがみこみ、目を硬く瞑り時間が経過するのを待つことにする。
ピチョーン。
数時間毎にスマホで助けを求めようとするが回線が復旧しないのか通じない。
ピチョン、ピチョン、ピチョン。
そして今、早急に助けて貰えなければヤバイ事態に陥っている。
ピチョン、ピチョン、ピチョン。
水が天井から滴り落ちエレベーター内に溜まってきているからだ。
ピチョン、ピチョン、ピチョン。
数時間前足首の辺りまでだった水が今では膝上まで溜まっている。
ピチョン、ピチョン、ピチョン。
このまま助けが来なければエレベーターの中で溺死してしまう。
ピチョン、ピチョン、ピチョン。
「誰かー! 助けてくれー!」
ピチョン、ピチョン、ピチョン。