犬を信じろ
前回のあらすじ
人類の危機を、己の決意を友に語ろうと重く口を開いた新暦北世。しかしその親友達は人類ではなかった。
刻一刻と迫りくる木星からの使者達、その影に隠れた地球に忍び寄るもう一つの手、コーギーの尻、世界の命運はいかに。
本来、侵略前の調査任務を行う工作員が己の存在を、目的を、決意を語るのは勇気と相手への信頼が必要である。北世は大切な友人達と彼女達の暮す母星を守るため、美味しいご飯を守るためにその事実を語った。しかし現実はどうだ?地球に隕石が墜落して人類が滅亡するよりもずっと確率が低いであろう事、広い地球に幾多も存在する学校の同じクラスに友人として宇宙人と邪神と人工知能、それも全員何かしらの形で現在の人類を害そうとしている者たちが集まっているではないか、確率がへそで茶を沸かし計算式の膝が笑っている様が目に浮かぶ。
だがこれは運命であり偶然であり同時に必然でもある。あらゆるものにある引力が己と同じものを引き寄せ『現人類に仇なすもの』を一箇所にまとめたのだ。これによって木星のからの侵略も邪神による破滅も人工知能による支配もある意味白昼の元に晒された事になる。
「…北世ってさ、コーギーの尻に祀ってるけどそれって木星にある宗教なの?」
「や、流石に北世ちゃんだけでしょコーギーのケツ崇めてるのは。私嫌だよ?コーギーのケツに祈りを捧げる木星宇宙人」
恐る恐る口を開いた夕神に文目院襟左も続く、まず侵略よりもコーギーの尻信仰を気にするあたり夕神の神としての感性が見えているような気もする
「コーギーのおしり教は木星最大の宗教だよ!変じゃないよ!!」
バン、と机を叩き新暦北世はコーギーの尻に五体投地をする正当性を語りだした
「地球時間に合わせると今から千年以上昔、木星に生きたコーギーがやってきたの!!!宇宙を漂って!木星にコーギーが来たんだよ!?やばくない?!?」
やばいとは思う
「そんで、私達の先祖はそのコーギーのおしりに可能性と希望を見たんだって!それ以降木星ではコーギーのおしりは神聖なものとして崇めてるの!ね!!!すごいでしょ!!」
熱く目を輝かせながら語る北世に対して対象的に夕神と襟左は何とも言えない顔をしていた。未知なる宇宙、別の惑星に暮らす異種族が崇めるのがコーギーの尻。よりもよってコーギーの尻になのだ、もっと色々あっただろう、太陽とか彗星とか他の惑星とか木星の核とか。
「コーギー、尻、宇宙を漂う...うっ!過去の記憶と人間への恨みが頭をよぎる...!」
「襟左ちゃん!夕神がなんか中二病に侵されてるよ!!主に頭がやばい!!」
「大丈夫、夕神ちゃんも北世ちゃんもおんなじくらいやばいから」
頭を抑え、夕神は記憶を呼び起こしていた。人を惑わし人を狂わし歪めに歪めて毒の底に沈めた、そして忌まわしい人間達が愚かにも神たる己を深い深い下層次元に沈める様を、音も思考も消えてゆき己が存在することを認識できない退屈も虚構の底で漂う様を、彼女は思い出していた。そしてそこから徒歩で地上界に帰ってきた時のルートもちゃんも思い出していた。
「そのコーギー、多分知り合い」
「私達は夕神のお知り合いのおしりを崇めていた...?」
ザワ、ザワ、と一人で呟く北世と遠い目で空を見つめる夕神を見ながら襟左はふと呟いた
「コーギーのケツを神聖なものとして崇めるならコーギーのケツの画像送って神聖なものが生きてるから地球侵略やめましょって連絡すれば?」
「「それだ!」」
生物が住むのに向かない木星、ガスの中に潜み光を求めた木星宇宙人達をまとめ上げる宗教のちからによって地球は神聖な地、聖域に指定され、これによって地球侵略は一旦白紙となる事が決定した。
よくここまで読めましたね、本当にありがとうございました。