おはよう、早く寝ろとあれほど言っただろう。
清々しい晴天、時刻は8時過ぎ。少女は緑の髪を揺らしながら自転車を走らせていた。
「あーもー!嘘嘘嘘でしょー?!また遅刻だー!!!」
ガシャガシャと自転車カゴを鳴らし、遅刻確定の中、校舎前の上り坂を必死に漕ぎ上げる彼女は木星から来た侵略者だ。
世界は幻想に満ちている。道ですれ違った青年は不老不死かもしれないし横断歩道の向かいで晴天の中、傘を差す美しい子供は吸血鬼かそれとも兵器か、はたまた商店街前で風船配りをするあのキグルミに中身などないのかもしれない。
平穏の中にこそ不穏は潜み日常の中にこそ非日常は息をしている。不可思議を追いそれら倒するものがあれば復讐劇に飲まれたものいる。
彼女もそうだ、母星の為に地球を侵略し人間の自由を奪い権利を殺し力を押し潰す為にここにやってきた地球外生命体、木星からの使者、恐怖の宇宙人。安い映画に使われるチーフなキャッチコピーに相応しい地球侵略計画と宇宙人
しかし彼女は地球で出会った友人達の為に母星からの攻撃を阻止しようとする優しき侵略者なのだ。
自転車を駐輪場に止め、鞄を片手に教室へと猛ダッシュ。勢い良く扉を開けた教室の黒板には『新暦北世、放課後職員室!』と大きく書かれていた。
「ウソダドンドコドーン!!!」
崩れ落ちる膝、落ちる鞄、ガクリと肩を落とした新暦北世の背を蹴飛ばす影。
「ギャン!」という悲鳴と共に額を床に叩きつける北世の背後、その背を蹴り飛ばした犯人の大魔鎌夕神はニンマリと笑い北世に声をかける
「オッス!今日も遅刻お疲れ!」
なんと忌々しい笑顔だろう、チェシャ猫なんて可愛いもんではなく邪神とかそこらへんの笑みだと北世は心の中でそっと中指を立てた。
「おはよ!!!好きで遅刻してるわけじゃないんだけどね!!おはよ!!!!おはよ!!!!」
「おはよ!!!遅刻もおはよも一回でいいよ!!!!ばーか!」
「おめーがばーか!!!」
低レベル、争いは同じレベルの存在同士にしか起きない典型例です。
「おはよう、朝からはしゃぐな犬達。」
窓際の席から声が上がる、椅子の背に体重をかけつつゆらゆらと揺れながら声をかけた文目院襟左に北世はにっこりと笑い返事を返す
「おはよー!!!私がチワワ並に可愛いのは知ってるよ!」
「ブルドッグの間違い?頭大丈夫?」
「土佐犬はおだまりあそばせ!!!」
北世と夕神の騒がしい掛け合いとそれを見守り時々合いの手をかけて加速させる襟左 、いつも通りの日常。いつも通りの朝、近々木星からやってくる破壊の軍団達が夢だったらよかったのに。
日の傾いた空から降る真っ赤な光が放課後の教室を照らす中で新暦北世は深く、深呼吸一つ。
いつも通りの日常を、初めての親友たちを殺したくないその一心で木星宇宙人はルールを破る意思を固めた
「二人共、真面目に聞いてほしいんだけど...」
新暦北世は、たとえ彼女たちに笑われたって怒られたって泣かれたって絶対に二人は二人だけは誰を殺したって助けたいからずっと生きててほしいから
「実はアタシ、地球侵略しに来た宇宙人なの!」
「ウチも実は地上界滅ぼしに来た邪神なんだよね」
「は???私も人類管理しようとしてる人工知能なんですけど」
大切な友人達にこれから地球に来る危機を伝えようとしたら人間がいなかった件について、解決策をください神様!
最後まで読んでいただきありがとうございました