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男は夜の街を当てもなく徘徊していた。
乗り気でない付き合いの飲み会の帰り。
帰りのタクシーを拾おうとしたところ、いつもならすんなり見つかるというのに、今日に限って何故か一台も見つからない。
あっちじゃないかこっちにいるんじゃないかと歩き彷徨い続けているうちに、いったい何処へ行けばいいのかわからなくなっていた。
気がつけば路地裏のさらに裏、といった風体の道に迷い込んでいた。
大人一人で道がいっぱいになるほどの道幅しかないところだ。
――ここは何処だ?
考えていたが、ふと気付いた。
自分の前を誰かが歩いている。
男だ。
その男はまだ五月の初旬の夜だと言うのに、半そでのシャツを着ている。
自分と同じ酔っ払いなのだろうか。
それとも地元の人なのか。
地元の人なら何か知っているかもしれない。
男は前を歩く半そで男に近づいて行った。
そのときである。
ぼとっ。
半そで男の右手のあたりから何かが落ちたように見えた。
そしてよく見てみると、さっきまで確かにあった半そででから出ていた右手がない。
――えっ?




