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躍る世界と黒兎  作者: 夢梅
王国にて①
9/65

お妃様と白兎


 ―――――コツ、コツ、コツ。


 革靴が音を立ててレッドカーペットの上を歩く。黒に染められた美しいタイルにそれは敷かれ、踏む感覚は大変硬い。

 「失礼いたします」

 足音が止まった。大きな黄金の扉の前に彼は立つ。

 落ち着いた一重瞼を瞬かせたのは、一人の華奢な少年である。

 「いいわ。入りなさい」

 冷たい取っ手に手を掛け、ゆっくりと重い扉を開ける。

 ダイヤモンドのシャンデリアが鋭く輝き、少年の瞳にまばゆく映った。光は黒い。なぜなら、床も壁も天井もすべてが漆黒だからだ。窓の縁ですら黒光りをして、その中に広がる華やかな王国の風景だけが、カラフルな色を持っているように見えた。

 少年は、着ている黒のカッターシャツと白いベストを整え、今度はこの部屋のレッドカーペットを歩きだした。また革靴の音が響く。

 それに合わせて揺れるものがあった。後ろで束ねられた、肩の長さの黒髪だけではない。彼の頭に生えている、二本伸びた純白の長耳――――


 「ご報告申し上げます」


 少年はカーペットを進んだところで跪いた。

 深く頭を下げたあと、少しして顔を上げ直す。彼の見上げた先にいるのは、金色の装飾が施された、大きな席に座る女だった。

 女は頬杖をついていた。冷たい目線を少年に送り、銀のショートボブを鬱陶しそうに耳にかける。華美なドレスがよく似合い、首元や指、腕に嵌めた宝石のアクセサリーも十二分に相応しく思えた。

 頭の上にはティアラ。

 彼女は妃である。

 「例の件ですが、思いもよらない邪魔が入ったらしく」

 「あらそう……あの男のことだから、しばらく様子を見てるのかしらね。もう、早くしてくれなきゃ困るっていうのに」

 ため息交じり、「人でも減ってしまったことだし」と付け加えた妃の言葉に少年は顔を歪める。

 「まあいいわ。あなたはあの子の様子を見てきてちょうだい」

 妃がつまらなそうに自分の爪の先を見て言った。少年は「かしこまりました」と返事をし、思わず妃の爪を見る。深紅や黒がピカピカと艶めいていた。

 ゆっくり立ち上がり、礼儀よくおじぎをした少年。

 丁寧に踵を返して赤い道を戻っていく。妃の機嫌の悪そうなため息を背に、わざとらしいほど革靴を鳴らして部屋を出たのだった。

 廊下を足早に歩きながら、少年はチッと舌打ちをする。彼の進むスピードに比例して、足音も忙しそうについていく。

 そしてにわかに立ち止まった。

 また扉の前。ただ、妃の部屋とは格の違いがある。ドアノブだけが金色だった。

 「クソッ!」

 大きな音を立て、扉を思い切り叩きつける。扉の向こうに人はいないらしく、残響だけが虚しくこだました。彼はひどく苛立っていた。みっともないとは思いつつ、冷静でなんていられない。怒りだけでなく、心配や焦りもたくさんあること。彼は自分の不甲斐なさを感じていた。


 「……アイツ、いい加減にしろよ」


 低く呟いた少年は、再び廊下を歩き出す。革靴の音を鳴らして。

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