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躍る世界と黒兎  作者: 夢梅
第7章 姫は虹光の中で
34/65

宿屋

 宿屋に戻ってきた三人は、すぐに部屋についているバスルームで体をあたためた。浴槽はないが、コッツの雨のように優しく降り注ぐシャワーは旅人の体を十分に癒すことができる。

 果樹の螺旋階段を上った先、三階の角部屋がメルチェたちの部屋だった。

 木と同じ色のフローリングに大きな出窓、バルコニー。雨の景色は部屋の中を薄暗くさせるかと思ったが、土壁に塗られた黄色いペンキや天井のランプで、部屋はしっかり明るかった。

 「……」

 アシッドがハンモックに身を任せ、ゆらゆらと揺れている。なにやら悩ましげなメルチェの顔を覗き見て、三角の耳をパタパタさせた。

 「姫オーディション、受けてえんだろ?」

 アシッドの言葉に、メルチェが「えっ!?」と動揺する。お風呂上がりでまだ乾いていない癖っ毛が飛び跳ねた。

 「言わなくても顔に書いてあるっての。なあレビウ?」

 「ふふ、そうだね」

 レビウがメルチェの髪をタオルでくるんだ。優しく水気を拭き取ると、安いシャンプーの香りが雨の匂いに溶け込む。

 「僕はメルチェが受けたいなら受けて欲しいと思ってるよ。だけど……」

 

 ――姫オーディションは、ひと月以上先なの。


 白いシャトーの庭園で、リーシュは言った。

 ロンが去っていったあのあと、メルチェが姫オーディションの話を聞きたいと言うと、リーシュは庭園の奥に案内してくれた。そこにはお茶会用のテーブルと椅子があり、お菓子やお茶も用意してくれた。花の形をしたクッキー。ティーカップからも薔薇の甘い匂いが立ち込めて、そのフレーバーにレビウの興味がそそられた。

 「姫オーディションは、ひと月以上先なの」

 「ひと月……」

 メルチェは俯く。

 「ええ。詳細もまだ発表していないくらいなのよ。もうそろそろとは思ってるんだけど」

 アシッドは可愛らしいチェアにそぐわぬ偉そうなポーズでドカンと座り、花びらのミックスされたクッキーをパクパク口へと運ぶ。

 庭にはアーチやベンチや噴水にも薔薇が生い茂っていて、目を凝らすと少し向こうに池が覗けた。広場の池だ。水面に浮かんでいた花びらは、ここの庭園の薔薇だったのか。

 「結婚記念日があるのよ。タルモとわたしの」

 リーシュが優しい声で言った。メルチェはそっと顔を上げる。

 「そうなのね。オーディションにぴったりの日だわ」

 にっこり笑ったメルチェの表情。なぜだか少し曇っているのが気になった。けれど、リーシュは素直に言葉を受け取って、「ありがとう」とお礼を言った。


 「私、今回は参加しないことにする」


 宿の部屋、サービスでやってきたホットミルクが口をつけられないまま湯気を失っている。メルチェの髪にかかったタオルが、湿気を吸ってヨレヨレになっていた。

 「先を急ぐ旅なのに、私の都合で残ってもらうなんてできないわ」

 窓の外、雨がしとしとと降り注いでいた。やわらかく穏やかなその音が、耳の鼓膜に優しく触る。

 「俺は別に構わねえよ」

 すると、ハンモックに寝転んでいたアシッドが立ち上がる。

 「え? でもお前……」

 レビウが咄嗟に口を開いた。

 「いいっての」

 「もしかして気を遣ってくれてるの? 私なんかよりアシッドの事情の方が……」

 「だーっ! もう、いいって言ってんだろ!」

 明らかに自分たちの方が気を遣ってきているメルチェとレビウに、アシッドは大きな声を出す。

 「俺の親父を気にしてくれてんだろ。そんなんいいっての。やりたいことがやりたいときに舞い込んでくる保証なんてねえんだぞ」

 アシッドは大きな耳をガリガリ掻いた。長い毛が宙を舞う。

 そのとおり、メルチェとレビウが気にしていたのはアシッドがブリランテを目指している事情だった。父親が倒れて病院へ運ばれた。今も入院している。そんな手紙を受け取って、彼は王国まで旅をしているのだ。

 「……まあ、俺も行きたくなったらお前らなんかおいて先行くからよ。だからそっちこそ気遣うんじゃねえよ」

 メルチェとレビウは顔を見合わせた。

 「お互いしたいようにしようぜ」

 アシッドがそう言うと、レビウは「だってさ」と笑う。メルチェはとびきりの笑顔になって、アシッドに飛びかかった。

 「ありがとう、優しい狼さん!」

 調子にのるメルチェを、アシッドが面倒臭がる様子であしらった。照れ隠しだな、とレビウは思った。


 「あっ!」


 しかしその直後、大きな声が出る。

 「どうしたの? レビウ」

 不思議になったメルチェがハンモックを占領しながら目を丸くした。寝床を奪われたアシッドがその上へ座る。メルチェは「重い!」と騒ぎ出す。


 「お金がないの、忘れてた……」


 レビウの深刻な一言に、二人は真顔で固まった。

 「お金……」

 正直なところ、薄々勘づいてはいた。

 メルチェは旅に出る際、港町で暮らしていた頃のミルク配りの仕事で貯めた、少ない貯金を持ってきていた。けれどもうほとんどすっからかんだし、アシッドに至っては一銭も払っていない。というか持ってきていない。

 それなのに、宿代、買い物代、病院でのメルチェの治療費、ラクダ車の代金、アシッドの暴飲暴食……二人は自分たちにかかったお金を計算し始めた。

 今までほとんどレビウの持ち金で賄っていたこともあり、メルチェとアシッドはどんどん肩身が狭くなってくる。

 「今までごめんなさいレビウ!」

 「許してくれ! 俺たちはお前に捨てられたら終わりなんだ!」

 いきなり低姿勢になった二人。レビウは思わず呆れてしまう。けれど笑いをこらえられず、「もう……ほんと仕方ないなあ」と口元を押さえた。

 「ていうか、今さらだよ!」

 次には腰に手を当てたレビウに、「神様、王様、レビウ様!」と茶化してくるアシッド。レビウは「頭が高いな」と微笑んだ。

 「王様には跪かないといけないよ?」

 突然始まった茶番劇に、アシッドは床へと舞い降りる。

 「仰せのままに、レビウ様~!」

 言われたとおりに跪いたアシッドは、「王様の命令なら俺はなんだって食います」と胸を張った。レビウが「結局アシッドが得してるじゃないか」と突っ込んだとき、

 「ねえレビウ私は? 私にもなにか命令して!」

 とメルチェも意気込んだ。

 「えっ! メ、メルチェ、メルチェは……」

 予想外の命令要求に、小さな王様は思わずたじろぐ。

 アシッドがニヤニヤしながら、メルチェがワクワクしながらその命令を待っていると、レビウはメルチェの手を取った。

 「メルチェは僕のそばにいてくれればいいの!」

 その言葉に、アシッドは爆笑し始める。

 「お前さー! やっぱ王様って柄じゃねえわ!」

 「もう、うるさいなあ!」

 「レビウといえばやっぱさー」

 アシッドの言葉の先に、メルチェは見えるものがあった。


 「王子様!」


 思わず浮かんだ答えを口にすると、アシッドの「召使い!」という言葉にちょうど重なる。

 「王子様あ?」

 「召使い!? ありえないわよ、レビウが召使いなんて!」

 ギャーギャー言い合いを始める二人を見て、レビウはやっぱり呆れて、それでも可笑しくて笑ってしまった。

 「もう二人とも!」

 ハンモックをブンブン揺らされるメルチェを助けようとレビウが介入すると、アシッドが思いきりその肩を押した。バランスを崩し、ハンモックごと後ろに倒れる。レビウがアシッドの腕を咄嗟に掴むも、三人揃って床へと転がってしまった。

 「あははは!」

 楽しくて、笑い声がこだまする。

 メルチェは、シャロイの宿屋のたまご色のベッドではしゃぎ合っていたことを思い出した。もう随分と前の出来事のような気がして、自分たちがうんと遠くに来てしまったことを実感した。だけど私たち、うんと近くなったよね。レビウの言うとおり、ずっとそばにいようね。

 メルチェは自分たちの笑い声と雨音が合わさる中、今の記憶もしっかりと胸に刻んだ。いつかまた、今日を思い出す日が来るのだろう。


 「ひと月か」


 しばらくして、アシッドが言った。

 「ひと月ね」

 メルチェが返した。

 「はあ……」

 笑い疲れた三人は、深いため息を吐く。

 ひと月。

 ひと月以上この町で滞在するのに、いくらかかるのだろう。宿代、食費、そのほかにも……三人の思考は揺れるハンモックとともにゆらゆら揺れた。生活をするためにはお金がいる。生きていくためには、お金がかかる。


 「ひと月以上いられるなら、どこかで雇ってもらえないかなあ……」


 レビウがそうつぶやいたとき。部屋のおんぼろドアが勢いよく開いた。

 「聞かせてもらった!」

 突然現れたのは宿屋の店主。メルチェは「きゃああ!」と悲鳴を上げる。

 「ジジイ、お前プライバシーってもんが」

 「うちで働いてって! 半日働けば宿代にしてあげられるんよ!」

 客のプライバシーを守らない宿屋とはどういうものかと思った一同だったが、店主の言葉に「なんだって?」と思わず聞き返す。

 「だーから、一泊うちで泊まるのに、半日働いてくれるじゃあ宿代の代わりよ! 一日中働けばお小遣いにもなるってことよ!」

 レビウは少し考えたあと、「そのお話、受けさせてください!」と笑顔で言った。

 店主は「やったじゃあ!」と喜んだあと、「人手が足りんかったのね。力仕事と、キッチンよ」と言った。「力仕事と」でアシッドを指さし、「キッチンよ」でレビウを指さした。

 「キッチン! それなら僕の得意分野だよ」

 「え、待てよ俺も働くのか?」

 胸を撫で下ろしたレビウの傍ら、アシッドが焦って聞いた。「当たり前だろ」とレビウが答える。

 「私はなにをしたらいい!?」

 すると、メルチェが店主に向かって元気に尋ねた。ミルク配りなら経験あるけど――そうアピールしようとしたとき、店主のセリフが先を越す。

 「女手はそんないらんじゃあ、ゆっくりしてって!」

 メルチェは拍子抜けした。

 「で、でも私」

 「君たちはさっそく明日からよ!」

 メルチェの言葉を遮って、店主がレビウとアシッドの背中を叩いた。ルンルン気分で部屋を出て行く店主。アシッドが心底面倒臭そうな顔を浮かべるその横で、レビウはメルチェの様子を気にかけていた。


 .



 次の日、二人は朝早くから叩き起こされ、駆り出された。

 その音で起きてしまったメルチェは一人になった部屋で歯を磨く。今日もやはり雨模様。湿気た空気が寝起きの頭をぼーっとさせた。

 「ちょっとアンタ! これも持っていってよ!」

 「はあ!? どれだけ持たせりゃ気が済むんだよ!」

 「雇ってもらったんだから文句言わず働く!」

 「わーったよ! ったく!」

 廊下の方でルームクリーニングのおばさまたちに引っ張りまわされているのはアシッドだ。

 重ための布団や荷物なんかを大量に持たされ、一階から三階、三階から一階へと何往復も走りまわっている。力仕事と言うだけあってなかなか大変そうだが、生意気言いながらも言われた物はなんでも軽々運ぶので、朝から早速人気者になっている。本人はそんな人気いらなさそうだが……

 「なに見てんだよチビ」

 おんぼろドアから狼の姿を覗いていたメルチェ。ちょうど横を通ったアシッドが、おさげ頭をポコンと叩いた。

 「見慣れない姿だなあと思って」

 「うるせえよ」

 軽口を叩きフフフと笑う。

 仕事に戻りかけたアシッドだったが、なにやらメルチェが「あのねアシッド」と引き留める。しかし同じタイミングでおばさまから声がかかり、「またあとでな」と言って狼は結局仕事に戻ってしまった。

 「……」

 メルチェは口をつぐんで部屋に戻る。

 するとそのとき、フロントから電話があった。

 「はあい、もしもし」

 「おはようメルチェ。僕だよ」

 腑抜けた声で受話器を取ったメルチェは、電話口から聞こえてきた知っている声に「レビウ!」と明るい返事を返す。

 「今モーニングを作ってたんだけど、材料が余っちゃって。よかったら食べに来ない?」

 レビウは宿屋の一階に入っているレストランでキッチンを担当していた。手際がよく器用なので、彼も重宝されそうだ。

 最高のお誘いをいただいたメルチェは、急いで果樹の螺旋階段を駆け下りた。階段を中心にフロアは吹き抜けになっているので、途中下を覗くとレストランの前で黒板を書き換えているレビウと目があった。手を振ってくれる。

 「レビウおはよう!」

 嬉しくなって手を振り返すメルチェ。

 一階のレストラン前に着くと、レビウが席へと案内してくれた。どうやら今は空いているようで、料理長らしき人が悠長に林檎を剥いている。

 「じゃあ、今から作ってくるね。ちょっとだけ待ってて」

 メルチェが座った席はキッチンから少し遠い席だった。

 窓側なので、外の様子がよく見える。朝にふさわしい優しい雨。町を包み、遥か向こうの山頂を、白濁と霞ませる。

 メルチェは黄色いテーブルに用意されたナプキンを膝にかけた。そっとキッチンを覗き見ると、気が付いたレビウとカウンター越しに目が合って、彼はにこっと笑ってくれる。

 レストランの制服が似合っていて、フライパンを握る姿がかっこいいなあ……

 そう思うと同時に、メルチェは彼が今のような笑顔をほかのお客さんにも見せてしまわないように、しっかり祈った。レビウのファンは、自分だけでいい。

 「おまたせしました。レビウ特製、オムレツセットです」

 油の焼けるいい香り。

 美味しい空気が充満する頃、レビウがモーニングセットを持ってきた。

 みずみずしい山菜サラダと小さなバターロール、そして机に置いただけでふるふる揺れる、黄色くてやわらかそうな、生まれたての特性オムレツ。

 「う、うわあ~……! すっごくおいしそう……!」

 メルチェが感動している間に、レビウが慣れた手つきで紅茶を淹れてくれる。

 「自信作なんだ。めしあがれ」

 レビウがまたにこっと笑った。

 メルチェはオムレツにフォークを入れる。むらのない皮が破れた瞬間、とろりと半熟の中身が溢れ出す。慌ててすくって口に入れると、湯気と一緒に濃いたまごの味が舌にゆっくり纏わりついた。ほんのちょっとだけ混ぜてある塩とハーブが、いい具合に卵黄の旨味を引き立てる。メルチェは感動した。

 「おいしい~! 信じられないくらいおいしいわ!」

 予想以上の反応に、レビウは照れつつも嬉しくなった。オムレツ一つでこんなに喜んでくれるなら、毎朝いくつでも作ってあげようと思った。

 「……元気になった?」

 そして、そう聞いてみる。

 メルチェは思わず「え?」と聞き返し、朝食を食べる手をとめた。

 「勘違いだったらごめん。でも、昨日の夜から少し元気がないように見えたから」

 メルチェはオムレツの前で俯いた。

 「元気がないわけじゃないんだけど……アシッドのこと、本当によかったのかなって思って」

 やっぱりそのことか、とレビウは思う。

 「アシッドはああ言ってくれたけど、もしこのひと月の間でお父さんが体調を悪化させたら……アシッドがお父さんに会えなかったら、私……」

 メルチェは紙ナプキンをぎゅっと握った。

 「それに、私のわがままでひと月残ることになったのに、私だけ働かないなんてできないわ」

 メルチェがナプキンから手を離すと、少しちぎれた端っこが花びらのように床へと落ちた。そのあとティーカップへと手をかけるけれど、ただかけただけで、湯気を見つめて動かない。

 レビウはお皿を運んできたトレーを抱いて、「メルチェの気持ち、すごくわかるよ」と優しく言った。

 「でも、アシッドの気持ちもわかるんだ」

 俯いたままのメルチェに微笑み、彼はその場を少し離れる。カウンターに並んだ調味料の中から綺麗な小瓶をとってきて、アルミの蓋をくるくる開けた。

 「特にあいつは、自分のために気を遣われることが嫌いみたいだし」

 レビウがそう言う中、メルチェはカップの取っ手を人差し指でツーッとなぞった。

 「でも、家族の命なのよ。なによりも、大切な……」

 そして小さな声でつぶやく。

 レビウは「メルチェ」と萎れた花のようになった少女の名前を呼んで、

 「メルチェが自分のせいでアシッドの旅路を邪魔してしまうのが苦しいみたいに、アシッドも、自分のせいでメルチェの夢を邪魔してしまうのが嫌なんじゃないかな」

 と言った。

 メルチェがその言葉を聞いて顔を上げると、手元のティーカップの中、レビウの持ってきた小瓶の中身が傾いた。とろりとした黄金色の隠し味。それは糸になって注がれる。

 「今日の紅茶は梨のフレーバーだよ。この町で採れたんだって」

 メルチェはティーカップを上げる。鼻に抜けるいい香り。

 口をつけると爽やかな梨の風味が広がって、茶葉の渋みを消すマイルドな甘さを感じられた。これは、きっと隠し味。蜂蜜だ。

 「おいしい……」

 「ふふ、よかった」

 頬を染めるメルチェの表情に、レビウはちょっと安心する。

 「それにね」

 そして角砂糖のポットを回収しながら、黄金色の瞳を見つめた。

 「メルチェの夢だって、メルチェにとってはすごく大切なものでしょ。大切なものの大切さは、比べたりしなくていいんだよ」

 レビウはまっすぐな目をしていた。おそらく強めに元気付けてくれているのだろう。いつもよりたくさん、自分の気持ちを伝えてくれている気がした。

 メルチェはもうひと口紅茶を飲んだあと、「ありがとう」とつぶやいた。

 胸の奥があたたかくなる。レビウの紅茶はいつもそうだ。

 「私、このひと月でうんと頑張るわ。オーディションまでにも、自分にできること探してみる」

 「うん、メルチェならきっと大丈夫。それに、アシッドは自分が先へ進みたくなったら本当に一人でブリランテへ行くと思うよ。あいつは嘘をつかないから」

 レビウがそう言うと、メルチェは霧の晴れたような顔をして頷いた。

 「今度こそ、元気でたかい?」

 「うん。ありがとうレビウ!」

 「ふふふ、どういたしまして」

 二人が笑い合っていると、キッチンの奥からレビウを呼ぶ声が飛んでくる。

 「いけない、そろそろ戻らなきゃ」

 「そうよね。ごめんね、お仕事中に」

 「ううん! 来てくれてありがとう」

 「こちらこそ、素敵な朝ごはんをありがとう!」

 レビウがキッチンの中へと消えていったあと、メルチェは再びフォークを握った。少しだけ熱を冷ましたオムレツが、半熟の川を山菜サラダへと繋げている。胡椒の効いたドレッシング。少しだけ舌のしびれたメルチェだったが、彼の紅茶がその痛みを和らげた。

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