日常(4)
アディ視点です。
ーーアディ視点ーー
私アディ-ルルクスは、三日前にタナタロの街の冒険者ギルドに派遣された。
辛い試験勉強とおっかないギルドのお偉いさん方との面接をくぐり抜き、ようやくたどり着いた現場業務。
私には教育係として、シルト先輩という二十歳程の若い男性がつけられた。
細身で程よい長身の元冒険者だった。
このあたりでは珍しい黒髪だった。
私よりひとつ歳上なだけなはずなのに、彼の静かな語口からは、ずっとずっと歳上に感じられた。
兄がいたらこんな感じだろうか。と言った印象も受けた。
優しそうな先輩で良かったなぁ、と思ったいたら実際は結構、いや、かなり厳しかった。
一日目には私のもっていたダンジョンに関する知識を一新されられ、二日目には全ての業務内容を覚えさせられた。
特に先輩のもつダンジョン深層の知識は凄かった。
私がまた冒険者になろうかなと考えさせられるほど魅力的な話もしてくれた。
ただ、量が多くて覚えるのが大変だったけど。
お陰様で、現場に出る前からヘロヘロになってしまった。
でも、シルト先輩が好意で教えてくれているのは伝ってきた。
さらにシルト先輩は、口だけではなく凄く手際がよかった。
書類の作成スピードが私の三分の一くらいだった。
大したことないって言っていたけど、ほかの職員の人に聞いても、シルト先輩の評価は高かった。
でも、シルト先輩に一番驚いたのは彼のランクだった。
三ツ星。
冒険者の中では、大きな目標とされるベテランへの入口だ。
私も冒険者時代には、二ツ星の上位として活動してたから、そこそこの実力はあると思っていたけど、三ツ星との差は隔絶したものだった。
私の攻撃は全て避けられて、逆にたったの二撃で組み倒されてしまった。
なんで冒険者やめちゃったんだろう、と思わなくもなかったが、聞くのはやめておいた。
人には色々事情があるのだ。
私と同じように。
目下、私の目標はシルト先輩。
先輩と同じ時間に上がれるようになるのが今年の目標だ。
でも、私がこんなこと考えているうちに先輩は仕事を終えてしまった。
帰り際にお疲れ様とだけ言ってくれた。
私も挨拶を返そうと思ったが、先輩はさっさと帰ってしまった。
気を取り直し机に向かう。目の前に積まれた書類たち。
ペシペシと頬を叩き、気合を入れ私は残された仕事に取り掛かった。
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