9話 異世界一日目終了
「えーーーーー!!!イクトにリガない!?」
「お、御姉様。それは、ほ、ほんとですか?」
「本当よ。流石の一言だわ。」
御姉様よ。その流石ってどうゆう意味の流石なんですかね。と思いながら食後の紅茶らしきモノも啜る俺。
そう今は食後のひとときである。
夕食はユユが作ったみたいでとても美味であった。肉じゃがに似た食べ物だったからどこか懐かしい感じ、味わいながら食べていたらすぐ無くなってしまった。もっと食べたかったな……。
そんな事はどうでもいいとして、夕食を食べ終わり、そしたらこの時を待っていたかのように御姉様が、あのリガの件をお得意の自分の事のように話し始めたのであった。
リュシルとユユはとても驚いているが、どうもただ1人はそうはいかなかったらしい。
しかも、プルプル震えている。
……絶対あのクソ国王笑っているだろ。いくらお面をしているからってバレているからな。覚えておけよ。ちくしょうめ。
上座に座っているピエロのお面を被った国王をじっと見ていた。
けどしかし、どうやって夕食を食べたのだろうか……。気になるな。……。
「いぇあああーあ。さぁすぅが、ふっ、ふふ。イクトぉくうん、ふふ。だぁあねぇ。ふふ……。」
完全にバカにしているな、このクソ国王。お面剥ぎ取ってやるぞ。後でホントに覚えておけよ。
さて、そんなクソ国王に対する反応はこのくらいにして、今、物凄い興味津々で俺を見ている方と、物凄くテンパっている方。その2人の方へと視線を移した。
「イクト。今ホントになんともないの?」
姉様いわく死人の俺を心配?してくれて話しかけたきたリュシル。まあ、その目からは半分が好奇心な目をしているのが伺えるが、目をつぶっておこう。目だけにね。
「まあ、なんともないよ。逆にここに来て何でか調子がいい。」
「そ、そうなんだ。けど、ちょっとでも何か異変を感じたらすぐに言うのよ。」
うちの母さんか。と思いつつもその気遣いに感謝しながら頷いた。
「御姉様。イクト君は……。イクト君は……。」
「ユユ……。クトイを労ってあげましょうね……。」
「はい。御姉様。」
慎ましい姉妹愛を魅せて貰ったが、御姉様。もうやめてください。色々と吹き込まないでください。お願いしますから。
「ところでクトイ。明日の仕事はユユと一緒に町の方へと買い出しに行って貰うわ。いい?お荷物になるんじゃなくてお荷物を持つのよ。」
どうやら、明日の行動予定が決まったが、ホントに一言多いな。この御姉様は。
「よろしくです。イクト君!」
「おう。」
ユユはホントにいい子だな~。姉様と大違いだ。あれだな。月とすっぽんの違いだな。本当に姉妹なのか疑っちゃうよ。
「さて、そろそろお開きとしましょうか。」
リュシルがパン。と手を叩いたら、皆が一斉に手を合わせて、
「ごちそうさまでした。」
風呂。
元々は衛生上の必要性や、宗教的観念から古くから水のある場所で水浴を行ってきたが、温泉を利用した寒冷を払拭するためや、一層の新陳代謝や老廃物の除去や排出をするため、温かい水や蒸気を利用して、温泉のない場所でも温浴が行われるようになった。そして、今現在では社交場としても扱われている。
「…………。」
「そぉーんなに見られるぅ~と、はずぃーかしいじゃないか。」
うん。いくら社交場としてもこれは無いだろ。てか、何でいんの?
「そーぉ怒らないぃでくれぇ~な。一緒にはいろぉーじゃないか。」
嫌だ。てか、もう既にお湯に浸かってしまっているのに、一緒に入ろうとかバカなのか。この国王は。まあ我慢するとするか。その代わり質問させてくれ。
「…なんでお面外さないんだよ?」
「いやぁ~これがないとぅ人とぅ話せなぃんだよぅ。」
もう、めんどくさいからこれくらいにして、ゆっくり風呂を堪能しよう。
「そーぉだ。イクトくぅーんに言いたいことぉ~があったんだよぅーね。」
いい加減にしれくれよ、まったく。
「…なんです?」
「君が思った通りに動いていいからね。僕は君の味方だからね。」
声のトーンを1つ落として、とてもさっきの道化っぷりがウソみたいに思えるような落ち着き、いや、冷酷といった方が合ってるオーラを一瞬見せた。が、すぐに、
「じゃあ~わたぁしは先にあがぅーるからねぇー。」
と、いつもの道化に戻り風呂出た。
なるほど。やはり、持っていたか。まあ、まだ、気にするときじゃないな。
それはさておき、邪魔者は消えたし長風呂するぞ。
「……ふっ。」
呑気な鼻歌が聞こえる浴槽を聞きながら男はすくりと笑い、そっとお面を外し、その赤い瞳はどこか遠いところを見ている目をして、また…ふっ。と笑い、またお面を着け直した。
そして、すぐその男はその場を後にした。
浴槽から奏でているとても呑気な鼻歌が、夜風のように心地よく、屋敷中に響き渡って、今日1日の終わりを告げていた。