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53話 荒れしき世界

天地想像の7日目。

旧約聖書の創世記にそれはしるされている。


1日目 暗闇がある中、神は光を作り、昼と夜が出来た。


2日目 神は空(天)をつくった。


3日目 神は大地を作り、海が生まれ、地に植物をはえさせた。


4日目 神は太陽と月と星をつくった。


5日目 神は魚と鳥をつくった。


6日目 神は獣と家畜をつくり、神に似せた人をつくった。


7日目 神は休んだ。


 ここまでは、俺も記憶として知っている。想像主神の七日間の出来事を唄っている。が、8日目とはなんだ?何が起こっているんだ。俺は『統合騎士』の奴等から今から起こり得るのは神の8日目だと聞かされた。

 

「今すぐに地上に行きこれ以上被害を食い止めたい。アオキ・イクト。協力してくれないだろうか。」

 

 先程まで不穏な感じの『統合騎士』達だったが、あの大地がひび割れた音が響いてから、突如、友好的になった。それほどにその事態が深刻なのか。

 

「はっ。承知致しました。このアオキ・イクト微力ながら協力させて頂きます。」

 

 俺はまた敬礼をし協力の意欲を見せる。俺にとっては好都合。化け物染みた『統合騎士』はなるべる敵には回したくなかったから。

 

「では、ここから脱出する。この時計塔が地上と繋がっているはずだ。」

 

「ええ。その通りです。」


 こうして、俺は大波乱のあった地下街を世界最高峰戦力『統合騎士』達と脱出する事となった。

 

※  ※  ※

 

同時刻。

 

現実世界、太平洋沖合いにてーーー。

 

「ふう。ヒヤヒヤ下っすけどなんとか、UBのおかげで、『統合騎士』との戦闘は避けてくれたっすね。『郁人』さん。」

 

この地下街の出来事を全てモニタリングしていた天才、千賀光一はハラハラしていた気持ちを落ち着かせる。

 

「それにしても、最初から替え玉していたとは流石ゆかりないですね。」

 

盗賊に仕掛けていた替え玉作戦も絶賛する。そして、彼は彼が送り込んだUBの方へ視線を向ける。

 

「やっぱり連合軍で来ましたね。あのUBはギリシア神話の再現っすよね?」

 

 訪ねるように千賀光一は前方映し出されているスクリーンに向けて目を輝かせている白衣を来た一人の女性に言う。

 

「ふっ。ふっ。ふっ。そうですよ。あの巨大怪物UBはギリシア神話のオリュンポス十二神の一角。戦争の災厄を司る軍神。アレウスです。しかも本来の姿での登場なんて感激感動です。」

 

興奮しながらズレかけたメガネをかけ直し、再度映し出されている巨大アレウスに酔いしれる。

 

「けど、なんか段々縮んできてませんか?」

 

千賀光一は連合軍に総攻撃を食らっているアレウスの状態を気にする。

 

「ああ。これは逆にしたんですよ。」

 

笑みを浮かべメガネを女性は輝かせる。

 

「逆と言いますと、縮めば人の姿になり本来の力を発揮することが出来ると?」

 

千賀光一は適当に逆手を取って考えてみた。

 

「その通りです。千賀氏!流石、生粋の天才ですね。」

 

「え、そうなの。」

 

「はい!人となってしまったアレウスを止められるとしたら彼の最後を知る者しか出来ないでしょう。」

 

 両手を上げ興奮の最高潮に達した彼女は喜びを爆発させる。

 

「これ『郁人』さんなら解決しそうじゃありませんか?多分この化け物の正体はアレウスと気づくだろうし。」

 

「まあ、そうでしょうね。彼はなに考えているのかヤバイ人ですから。」

 

彼女は思い出したかのように彼の実績をぶつぶつと復唱する。やれやれと千賀光一はタメ息を尽き、なんとか出現させることが来た。アレウス型UBが簡単に倒されないよう祈りつつこの試験結果を待つことにしていた。

 

※  ※  ※

 

場所はアインス王国付近の中心街から少し離れた荒野。

 

「人の姿になった…。」

 

 その変化に動揺は隠しきれなかった。それもそのはず、拘束用バリスタは瞬時に避けられ、その拘束隊いや周囲の大地までもが簡単に吹き飛ばされた。

 体を白い布丈だけの軽装。右手には大剣。金髪にその圧倒的美貌。それに伴う圧倒的威圧感。


「人員を固めろ。先程とは違うぞ。防御に専念せよ!」

 

 クルザードは店員達に指示を出す。大盾を持つもの部隊が前線に現れるが、アレウスには関係無かった。風を翻して、瞬時に大盾部隊の前の大地めがけて大剣を振り下ろす。衝撃波と共に大盾部隊は吹き飛び、呆気なく壊滅するが、時間稼ぎになった。

 

「この時間稼ぎ、感謝する。」

 

 ネロ・クラウドが奥義である『剣の加護』をフル活用した、強大で巨大な剣を出現させる。

 また、ハンズ・トレースは先程の魔法で構成された無数の剣を出現させる。

 

「ははあああ!!!」

 

 ネロ・クラウドはその巨大な剣を振り下ろす。だが、そこに少しの隙が生じるが、それはハンズ・トレースの無数の剣でアレウスを足止めする。が、アレウスにとってこれは苦でもない普通の攻撃にしかなかった。無数の剣はほぼ全部の剣は、自分のスピードで避けられる。そして、巨大な剣に対しては真っ向から斬りかかった。その間に無数の剣が体に突き刺さるがお構いなしにネロ・クラウドの巨大な剣を簡単にへし折ってしまう。

 

「嘘だろ!!」


 ネロ・クラウドが急ぎ、無数の剣を出現させ攻撃に転ずるが、避けられ防がされし、一気に距離を詰められる。ネロ・クラウドは剣で生成した大盾を出現させる。が、先程の巨大な剣に対して力負けしないその大剣によって簡単に盾は砕かれてしまう。

 

「ネロー!!」

 

ハンズ・トレースはネロ・クラウドに向けて叫ぶ。ネロ・クラウドが斬られるその時ーーー。


光が走った。

 

そして、突き刺さる。

 

 ネロ・クラウドを斬りかかろうとしたアレウスの動作が止まる。

「こ、これは…。光の槍!!」

 

 ネロ・クラウドはその2本アレウスの心臓を貫いている光の槍の正体を知っている。が、アレウスは一度は止めた動作がまたネロ・クラウドを斬りかかろうした。

 

「お願い。氷って。」

 

 美しく透き通った女性の声が響く。すると、アレウスを中心とした氷が一帯を独占する。

 

 アレウスは凍りつけられ、天候はいつの間にか吹雪いていた。そんなのか可能なのはあの方ただ一人。

 

「ふう。どうにか間に合ったっすね。」

 

「そうね。ここから私も本気で聞くから覚悟して。侵入者。」

 

世界でも名が通っているアインス王国防衛軍所属、エルメス・エドワードとアインス王国第一王女。雪原の姫こと、リュシルがようやく参戦するのであった。

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