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49話 試練の音

「あともう少しよ!」


 エルメスを先頭にミリヤを背負っているリュシルとユユは階段を駆け登る。下の方から轟音が聞こえたからはリガの流れが落ち着いた。

 イクトがやってくれた事は信じていたので、あの化物を倒した今、一息休憩を挟みたいところだが、そうもいかなかった。

 

 先程の轟音から著しく石段の老化が進みだした。石の破片が落ちてきている。かつ、登ってきた石段を振り返ると崩れ落ちている石段もあり、この石段が全て崩れるのも時間の問題。

 

「出口が見えたっす!」

 

 エルメスの言葉で顔を上げると光が差し込む出口がリュシルの目でも確認できた。

 が、それと同時にリュシルは虫の知らせだろうか、嫌な感じがチクチク心を刺す。だが、これは不安から来るものだと決めつけ、心の中に閉じこめておく。

 

「さあ、急ぎましょう!」

 

 イクトのためにも何としても脱出するためにリュシル達は出口に向かって石段の階段を登り続けるのであった。


 ※   ※   ※


 これもまた、水面から顔を上げるような息苦しさから意識が戻る。軽々しい感覚から元の重みのある感覚へと脳から指の爪先まで行き渡る。

 

「――――ハ。」

 

 視覚が先程まで後方で見ていた景色が突然切り替わる。右手に剣の重みがのしかかる。思わず落としそうになるが、なんとか持ちこたえ、地面に落ちている鞘をとり剣をしまう。

 

先程の剣撃のせいで、この地下街が崩壊してきている。

 

「さて、どうしたもんか。」

 色々考えたいがまずは脱出経路を模索する。リュシル達の脱出経路を確認するが、跡形もなく崩壊している。

あと実はもう一つ地上へと繋がる螺旋階段が存在した事を思い出す。それは、地下街の中央にある地下街を見下ろす事が可能の時計塔にある。ここから北東へ400メートルに位置している。



「っあぶねーな。」

落石を避け、地割れしているのも避けつつ、身の安全を確認しながら時計塔を目指す。テーマパークに来た気分になりそうになる奴がいそうだが、俺はそんな気分でもなければゆとりもない。俺が持てる危険予知能力を全開にして、なんとか命からがら時計塔まで約50メートル付近までたどり着く。

石橋を叩いて渡るように慎重に進んできた。

 時計塔の入り口が見え、大通りらしき一本道を進む。もう少しで、入り口へ行ける。


 が、またあり得もしない事が起こってしまった。

まず、確認しよう。

ここは、数年前にアインス王国が始めた「地下都市開発計画」で、アインス王国は極秘に進めていた。

その「計画」を知るものは限られている。アインス王国政治関係者か世界のあらゆる事を管理監視をする世界統合会の共々か。

 そして俺は後者と踏んだ。


「そこの者、止まれ。」

 

 他者を威圧するかの如く太く大きく低いその声は、完全に俺を敵視していた。数は5人。

 その5人とも鋼鉄な兜に、一切隙間はなく特に人の急所はより厚く鋼鉄が加工されている鎧に紅色のマントを翻している世界統合会直下『統合騎士』。

 

 世界の均衡を保つ役割を担っている『世界統合会』。その均衡を保つために世界のために、世界の中でも心技体を極めし者を集めた『統合騎士』。

 ただ今は存在だけが謳われているが、過去には何度も世界の危機を救った英雄である『世界統合会』。

 

「貴様は…何者だ?」

 

 『統合騎士』達は腰に携えている大剣に手をかける。その大剣は不死の竜の首をその剣で跳ねたとか、その剣に斬られた傷は一生治せないとか伝説の剣と謳われている大剣ばかりだと聞く。

 そのような武器に心技体を極めし者、これは誰しもが敵に回したくはない。どうにか、誤解を解かなければ。

 

「アインス王国、国家防衛軍所属アオキ・イクトと申します。」


 服装は、いつも日頃からそして異世界に召喚された時も着ていた黒に細い白ラインが入ったスーツ。だが、国家防衛軍に配属されてからは左胸付近に勲章を身に付けるようにしている。それだと何かと融通が効くからだ。

 

「アオキ・イクト…?」

 

 俺を観察する『統合騎士』。

 少しの沈黙の間が空く。胃に悪い。1秒が長く感じるような間。

 そして、『統合騎士』の視線が左胸に移る。俺は、自身を名乗った際に、これは異世界でも共通だった敬礼をし、今も崩さずじっと待っている。

 

「なるほど…。彼が噂の…。」

 

「…通りでここにいるわけだ…。」

 

小言で『統合騎士』同士が話している。噂とか言っていたが俺にとっては何の事だがさっぱり。

 

「申し訳ない。アオキ殿。この廃墟した地下街にテュランが出現したとの情報も受けたのだが、アオキ殿が対応したのであろうか?」

 

 友好的な態度に『統合騎士』が変わる。

 そして、この団のリーダーと思われる声は四十路っぽいが、外見はそのようには見えない年老えたおっさんが、話かけてした。

 

「…テュラン?そのようなのは知らないが、リガが暴走した者と思われる奴は斬って今はある者が治療している。」

 

 斬られたラロッシュ・アルテアは俺と契約した魔女が瞬時に強引にあの無機質の白部屋へ連れ込み理性修復を今も行っている。だから、今はあの魔女もちゃちゃ入れることもないのだ。

 

「ほう…。」

 

「ここまでになると後は時間の問題…。」

 

『統合騎士』達はぶつぶつと小言で話している。だが、俺はそんなのはどうでもいい。早く地上へ上がり、リュシル達と合流するのが最優先。『統合騎士』も俺の事を知っているみたいだし、この場を離れるとするか。

 

「それでは失礼し…」

 

俺が言うかけた時、

 


バリッ!!バリバリッッ!!



ガラスのヒビが割れたような不快で不吉な盛大な音が鼓膜を刺激する。

 

その音の発生源は地上。これはマズい。リュシル達が危険だ。

 

「こ、これは…。」

 

『統合騎士』のリーダーが顔を真っ青にさせ、冷や汗が額に浮かび上がっている。

 

「なんか知ってるのか!?」

 

「ああ…。あれは…。あの音は…間違いない。終焉の始まりの音。空間が割れ、時空を越え…災厄の神が目覚め、裁きを実行する…。」

 

これは歴史上に記載もなければありもしない。が、あり得るかもしれない、最も最悪で最も最恐の日。


天地創造の『8日目』の試練が、これから行われる音であった。

 

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