5話 上司は選べない。
「…駄目ですわ。致命的に似合ってないのですよ。」
「…そ、そんなことないよ。ほら、人を見た目で判断したらいけないって言うじゃない。」
「リュシル様。それは誤魔化してるようで誤魔化していませんよ?」
「……そ、そんなことより、お仕事をしましょう!お仕事を!」
「いや、だから仕事をするから仕事の格好の試着をしているんだけど。」
そう言って俺は着ている使用人の服装を着直した。
あの強烈だった国王の部屋を出た俺らは、リュシルの案内で使用人室まで行った。使用人室はいたって普通の部屋でどこか実家のような安心感があった。
それから俺らは俺の教育係兼使用人長の人に挨拶に行った。が、俺の教育係の人…。
明らかに年下だった。
16か17歳ってぐらいの見た目で、服装は少しアレンジをしているメイドを着ており、その桃色の髪にとても似合っている。この世界にもメイド服があったんだと感心し、またリュシルには及ばないが、これまた可愛い子だなと思っていた。
容姿だけを見ると双子メイドの姉様の方を連想させそうな面影をしている。まさか、毒舌とか妹がいるとかそんな事ないよね?いや、あったら色んな意味でアウトだからね?お願いしますよ?
誰にお願いしたのかはわからないが、とりあえずこの子が俺の教育係。いわゆる上司になる。ここは一丁、社畜で鍛えられた、対お客様の挨拶でやってやるか。
「私、青木郁人と申します。よろしくお願いいたします。」
シンプルtheベスト。しっかり、礼は45度。声は少し大きめ。ゆっくりかつはっきりと。これは手応えあったな。完璧だわ。いや~ここで役に立つとは思ってもいなかったな。
「ハッ。」
「ファ!?」
俺の上司は俺の完璧な挨拶を鼻で笑い、哀れな目で俺を見ていた。それに驚いた俺は変な声を出してしまった。
「なにその挨拶。一体どこで習ったの?」
残念そうに俺の上司は言った。
「ルルちゃん。彼は例の召喚者よ。」
「リュシル様。それは彼の外見を見ればわかります。…あのクソ国王もまた変な者を召喚しましたね。」
なに、この子。いや、俺の上司。超ヤバイんですけど。リュシルは確か国王の娘さんだったよね?そのリュシルと一応敬語は使っているが対等に話しているし。しかも国王をクソ呼ばわり。まあわからんこともないが。しかもさらっと、俺の事をモノ扱いしてたよね!?
「まあ、細かいことは後で教えるとしてとりあえずその服装をどうにかならないの?」
服装?ああ…。スーツで来ちまっていたなそういや。…服装ねぇな。
「…どうにもならないです。」
「はあ…。こっちよ。」
そうして俺は衣服室へと、連れられて、似合わないってボロクソに言われていたところだ。
「少しはマシになったわね。」
「ホント、見違えるぐらい凄い良くなったよ!イクト。」
やっと俺に似合う使用人服があり、ようやく使用人っぽくなった。なんか、俺使用人してるって感じが出ていい。
「さて、私は勉強があるから戻るね。頑張ってね!イクト!
あとは任せたわよ。ルルちゃん。」
「はい。リュシル様。徹底的に鍛えます。」
なんか、俺の上司が変な事を言ったと思うが空耳だと信じておくとして、さすが国王の娘だな。お勉強か。凄いな。
「さて、リュシル様も戻ったことだし、…来たようね。」
俺の後ろから誰が来たようだ。
「紹介するわ。私の名前はクルリア:ルル。そして、この子は私の妹でこの屋敷の家事全般担当の…」
「クルリア:ユユと言います。よろしくお願いします!イクトくん。」
長い水色髪の少女がまるで天使のような笑顔で挨拶してきた。
俺はこの状況を見て、俺は言える。
はい。アウトーーーーーーーーー!!!!!