4話 ジョブチェンジ
アインス王国領域内------。
「そっちに行ったぞ!」
辺り一面、緑に囲まれた森のなかを駆ける4人の若者。4人共、白をベースとした同じような服装をしていて、背中には片手剣に近い剣を背負っている辺りから騎士か王国軍なのが見てとれる。
「どこに行った!?」
1人の若者が見失った。周りを見渡すが、5メートルから10メートル、大きいものでは30メートルぐらいあるんじゃないのかと思わせる樹木が無数にあるだけだった。
そもそもここは立ち入り禁止エリアなのか草は膝辺りまで伸びきっており、道という道はろくにない。非常に人が歩くのが困難な場所だ。
「いたぞ!」
少し身長が高くがっしりとした1人の
若者が見つけた。その若者はすかさず右手を前に出して、
「フレア!!!」
と、唱えると瞬時に右手の先から数個の火の玉のような物体が出現し右、手の先の方にいる、茶色のボロボロフードを被った得たいの知れない人物に向けて撃った。撃たれた火の玉は風を切り、数十メートル先にいる人物でものの数秒で当たりそうとしたその時、
火の玉が消えた。
しかも撃った全て火の玉が。
「ちっ。やはりか!」
その現象に何か心当たりがあるのか、その若者は顔をしかめ、声を張り上げた。
「"風"が使えるぞ!!この異世界人!!」
異世界人と言われているその人物は被っていたフードをまた深く被り直しつつ深林を駆けていた。その人物を追っていた若者4人も深林の奥深くまで入っていった。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
さて、念願の異世界召喚を果たした俺は今、国王室という部屋に来ているのだが、もうこの異世界もダメかもしれない。と思いつつあった。
だって……
だってだって……
「いやはや、こうじっと見られると照れますぞい。」
変なピエロのお面を被った自称:アインス王国国王がいるんだから。
リュシルが部屋に入る前に「ここが国王の部屋よ。………うん。」と言っていたのを思い出した。
なるほど。あの時の謎の間が理解できた。そりゃそうなるよな。だってピエロのお面を被っているんだからな。
なんだっけ?確かピエロのお面を被ったバンドがいたよな。KONOYO NO OWARIだっけ?知らないけど。
その真似事?コスプレの一貫なのか?
服装は、あの廊下とか見てきたからさぞ、今は消えた芸人だけどリンゴにペンを刺すだけでブレイクした芸人みたいな金色の服装なのかを予想したが、そうでもない。いたって常識を考えている服装だな。だが国王であって、ちょっと派手だが。……マジあのお面何なの。
「いや~。こうして素顔を隠さないと人と対等に話せない性質でぇね。」
俺の疑問を感じとってかお面を被っている理由を言ってきた。
なるほど。それだったら納得がいく。だが、どう考えてもおかしいだろ。ピエロのお面とか。てか、この異世界にもピエロいるのか?
「このお面が1番しっくりくるしお気に入りなんだぁよ。」
知るか。そんなの。もう色々考えるのも疲れてくるからもう、自分がいいんならそれでいいという結論にしとこう。
「まぁあ、色々と積もる話があるぅと思うが、とりあえずイクトくぅん。君はここの使用人として、働いぃて貰うからね。じゃあ後は、リュシルよろしぃくね。」
いやいや、なんで使用人として、働かなければいけないんだ?異世界召喚で屋敷で使用人として働いても死に戻りとかそんなの出来ないからね。
てか、俺の意見とかはどこにいったの?
決定事項なのか確認のためにリュシルの方を見たが、リュシルも賛成しているように見えて、「しっかり頑張ってね。新米使用人さん。」とか、トドメのエールを送ってきた。そのエールを受けとてもやる気に満ち溢れてきた。が、それと同時にどうやら俺は社畜から使用人へとジョブチェンジをさせられたようだ。
こうして、俺は異世界召喚の現実を見るのであった。