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33話 ミリヤという少女

「ところでイクト君?」

 

 あの話からしばらく経って、ミリヤがソファで遊んでいたのを眺めていた俺に国王が尋ねてきた。

 

「…俺は今忙しいのだが。」

 

 そう。俺は忙しい。

 ミリヤの遊んでいるのを見るので精一杯なんだ。それと、あまりクソ国王とめんどくさいから話したくない。


「あの部屋の化け物はどうやって倒したんだい?」

 

 構わず聞いてきた。俺の言い分は無視か。少しくらいの軽口を返してくるかと思ったが、ま、そんな事どうでもいい。

 

 あの怪物の事は濁している。

 リュシルにも。

 ミリヤにはあの時は見ていたが、あとから上手く説明した。怪物が消えるように逃げたんだよってね。

 

そして、当然ここも濁す。


「何度も言ってるだろ。あの怪物は逃げたんだ。」


 真実は言わない。いや、言わない方がいいときもある。今回がそうだ。あれは、俺だけが知っていればいいこと。

 

「ホントにそうかぁーね?」

 

「…ああ。」

 

「ミリヤちゃん?」

 

「なぁーに?」

 

まずい。まずい事になった。だが、国王がミリヤに降った時点で俺の負けだ。

 


「イクト君は強かったかい?」

 


「うん!すごーく強かった!」

 

ミリヤは目を輝かせながら、即答した。

 

「バーンとパンチしたらパリーンとやっつけたよ!」

 

 興奮気味にミリヤは語る。よほど、あの時のことは衝撃的だったんだな。

 だけどね、それはね。ミリヤ。

 

「あっ。この話は内緒だったー!…ごめんなさい。イクト…。」

 

 ダメだ。これ以上何か言うとミリヤが泣きそうだ。今回は許すとするか。まあ、素直に謝ったしな。

 

「別にいいよ。ミリヤ。」

 

そう言うと、一輪の花が咲くように、ぱぁーと笑顔を見せるミリヤ。

いや、ホントに可愛いのは正義だな。

 

「ただし、今回だけだぞ。」

 

「うん!」

「でねー。聞いて聞いて!イクトはシュンと移動して…」


 ミリヤは誰かに話したかったみたいで、あの時の話が終わらない。

 国王の近くまで走っていき、国王の机に手をかけて、ぴょんぴょん跳ねながら、国王に話している。その可愛らしい姿のお陰でこっちが心がぴょんぴょんするじゃ。

 

「そうーかい。そーぉかい。イクト君はほんとぉーに凄いねぇー。」

 

 国王もミリヤの話を嫌がらす、いや何かをずっと書いていたが、今だけは手を止めてミリヤの話を聞いていた。

 

「イークト君?彼女はそういぃーているけぇーど?」

 

「はいはい。ウソをついて悪かったですよ。」

 

 ふっ、と笑う国王。その笑みに腹が立ったがここはぐっと堪える。

 

「あの怪物は、ブログロールと言う魔獣だよ。と、言ってもあの魔獣はもう存在しない。あの1体しかいなかっただからね。」

 

 なるほど。だから、あんなタイミングで出現し、他を寄せつけない無類の強さがあったわけか。

しかし、ちとやり過ぎだろ。あのリュシルでも一撃で意識を狩られたんだぞ。


「…オリジナルにも程があるだろ。」


「あれは、私いぃーじょうのつぅよさになってしまぁーて、手におーえてきたよ。」

 

「おーそらく、あの怪物。ブログロールはこのくぅーにで、一番つよぃーよ。そーれを倒しぃ、しかも、はなぁーしによれば一撃じゃーあないか。相変わらず、さすがだあーね。」

 

 薄笑いしながら、絶賛してくる国王に嫌気が指す。

 

「もう、直接的な、物理的な力は自分の命に関わるときか、ミリヤの命に関わる時に運命を強制的に変える時にしか使わないと決めたんだ。」

 

「そぉーかい。そぉーかい。どうやら、ミリヤちゃんの事も理解しているよぉーだね。」

 

「…だいたいな。」

 

ミリヤ。

 

本名、大乗寺美莉耶。

 

歳は7歳。外見は正直なところ7歳に見えない。身長をそうだし、全体的に小さい。

 

だが、非常に賢く、自分の立場や立ち回りをしっかりと考えることに長けており、またその美貌も人を魅了するモノがあり、将来が楽しみな少女だ。

 

ただ、この少女は人の温かみを知らない。いや、知ることができなかったんだ。

 

こんなダイヤモンドの原石を磨かなくてどうする?

 

だから、俺は磨くと決めたんだ。

 

「ミリヤの教育等の関係は俺に一式任せてほしい。」

 

「君から頼まれなくぅーてもそのつもりだぁたし、なにより本人がぁ君じゃなぁーいといやがぁーるかぁらね。」

 

 ミリヤは俺と国王の会話がいまいち理解しきれてなくて首をひねって、?マークを浮かべている。

 それが、また可愛いくて、尊いのだ。恐らく俺は、近々尊死する。そんな気しかしない。

 

だが、何故。何故。何故、こんなに賢く可愛く素直な子が、




 

虐待、虐めを受けたのだろうか。




 正直、ミリヤを3人目として、この異世界の地に召喚させた国王の判断は賢明。救える命を救ったのだ。

 

ホントにあの世界は残酷。

 

残酷過ぎる。こんな子までにも。

だから、せめてここでは幸せを知ってほしい。

 

色々と、考えたら疲れたな。

 

「疲れたから少し寝かして貰う。ミリヤ。寝るか?」

 

「寝るー!」

 

ミリヤが走って俺のところまできた。

俺はソファに寝そべりその上にミリヤが寝そべる。


「わかったあーよ。静かにするとしよぉーか。」

 と、言って国王はまた何か書き始めた。



そして、数時間後。リュシル達、謎の部屋捜索隊が、残念そうな表情で「ただいま…。」と戻ってきたのであった。

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