29話 必然な運命
周りは薄暗く、そこは長年使われないのか埃っぽく、苔が石積にされた通路のいたるところにある。
RPGでいうと、中ボスやレアアイテムが眠っていそうなダンジョンみたいな通路だ。石積がしっかりされている通路だが、何故か薄暗い程度で10メートル先はしっかり見える。
これも異世界の御都合的なやつと受けとめて先へ進む。
そう。
受け止めていかないともうやっていけない。
まず、トイレのドア開けたら異世界だし、そして目の前には美少女が待っていたし、そしてなによりこの異世界の地で生きてるし、言い出したらキリがない。
割りきっていくしかない。
「…リュシルはこんな通路あったと知っていたのか?」
答えはもう既にリュシルの表情、態度を見ればわかっているが、一応聞くだけ聞いてみる。
ここの通路に入ってから、見るもの全てに興味津々で好奇心のお化け化としているリュシル。
「こんなのあるなんて、ぜーんぜん知らなかった~。凄いね!」
ご機嫌で何よりだ。
知らない地を行くとわくわくする気持ちは十分にわかる。だって、俺もわくわくしているから。
ワクワクすっぞ。と言いたいくらいね。でも、そんなことは言わないけどね。
そんな事よりこの後を考えよう。
この通路はどこかに繋がっている可能性が高いと考えていい。
ただの一本道。
少し下り坂になっている他には特になにもない。強いて言うなら石積の通路だから少し肌寒いところくらいだ。
隠し通路のお決まりだったら、経験値が多めに貰える中ボスがいる部屋があるか、レア宝箱かギミックがある部屋へ繋がっている。
だから、この先は多少なりめんどくさい部屋があると考えていい。てか、だいたい…
「イクト。」
「…なんだい?」
「…今、すごーく死んだ魚の目をしているよ。大丈夫?」
「…へ?」
「あっ。今、戻った!」
パアッと満面の笑みを咲かせるリュシル。
よくわかるね。そして、見ているなと思う。てか、戸惑う。
今まで誰もそんな事見ていなかったから。いや、見て見ぬふりをしていたが正解か。まあそんなことはどうでもいいとして、心配してくれていたのか。…なんか申し訳ないな。
「イクトはたまにそんな目になっているよ。隠し通路を見つけたときもそうだったし。」
「え。それって高確率でなってない?」
思わずツッコミを入れてしまった。
だってものの、数十分前にもなっていたって事でしょ。もうたまにのレベルじゃないよ。いつもだよ。いつも。
まあ無意識でなってしまっているからどうしようにもできないだけどね。
「泣きたいときは泣いてもいいんだからね。」
「あれっ!?なんか変な気使わせてしまった!?」
「ふふっ。さてと、イクトの目も戻ったことだし、先に……」
リュシルがどうやらこの通路のずっと先にある小さな光に気づいたようだ。
「イクト!あれ!」
俺にも知らせるかのようにその小さな光の方向をリュシルは指を指した。
「ああ…。出口だな…。」
一体どんな部屋が待ち構えているんだろうか。
獣とか来られたら、こちらはリュシルさんがついているから、その心配は多少は無いが、問題はトラップがあるかどうかだ。正直、即死系のトラップだったら無理ゲー。
ここはもう運を頼るしかない。
「ほら!イクト早く!」
リュシルはもう出口の近くまで来ている。
なにも知らないってホントに凄いなと思う。こっちはビクビク警戒しながら進んでいるのに。
「イクトおそーい!」
ようやくリュシルに追いついた。というか、リュシルが待っていてくれてた。
ここまでの通路等に変化はない。視界も良好。だが、なにが起こるかわからない。
油断は禁物。
最大限の警戒体勢で進むのに変わりはない。
「先に行くね。」
そういってリュシルは目を輝かせながら走って出口を出た。
まったく。なにがあっても知らないからな。と、思いつつ俺もリュシルに続いて恐る恐る出口を出た。
一瞬、視界が真っ白になった。が、すぐに目が慣れ周囲が見えてきた。
よし。まずは即死トラップは無し…。よかった。そうだ。リュシルは…。
リュシルは無事だろうかとリュシルを見るとリュシルはある一点を目を真ん丸と開いて見ていた。いや、一点に視線を奪われさせられていた。
そして、俺もリュシルの見ている方向を見るとその一点に目を奪われた。
そこには…
水晶体の中に閉じ込められていた、その純白の髪からはその人の誠実さ。また雰囲気からはおおらかさ。
そして、顔立ちからは美しさや品の高さなどが一目でわかる完璧な女性が安からに眠っていた。
運命ーーーーー。
それは、心理状態や環境条件など見えない変数がもたらす予測できない必然な出来事。
この出会いも必然な運命なのかもしれない。




