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28話 盛大で簡素なフラグ

「そこにはいたか!?」

 

「いいや、いない。どこにいったんだ?」

 

「うーん。次は書庫を探しましょ。」

 

「わかりました。リュシル様。」

 

 リュシルと国家防衛軍数人は今日の晩御飯だろうか、空腹の者には香りの暴力となってやってくるクセのある香ばしい香りが立ち上る厨房を探し終え、次は書庫に向かおうとしていた時、

 

「あっ!イクト!」

 

 不安や心配なのからか、真っ青になって焦りしか感じられないリュシルに俺達は出会った。


 

この事の発端は数十分前に遡る。

 


 「イクト君が助けたあの少年、いや女の子が行方不明になってしまいました!」

 

ユユが扉を開けるなり息を荒くして言ってきた。

 

「…なに?」

 

「ほぉー。こぉーれはまたぶっ飛んだこぉーとをしたもぉーんだね。」

 

「…しかし、どうやって…」

 

 屋敷に来てからユユとルルが付きっきりでお世話をしていたはずだ。逃走を計るのも至難の技。

 

「お風呂を上がってから御姉様とユユが目を放した隙に…」


 ほんの気の緩みから出来る少しの隙を見逃さずに逃げ出したのか。これはこれでとんでもない才能がある。

 そして、知らない場所なのにこの屋敷を熟知している者達が探しても捕まっていないその逃走スキル。

 一言で言って天性的な才能。

 とんでもない少女だ。

 歳は詳しくわからないが、恐らく7~8歳だろう。金髪で愛らしくまた、可愛らしい顔立ちで体は7~8歳にしては線が細い。よく言えば小柄。悪く言えば成長が遅れているというべきか。

 

 ただどこか怯えているようにあの時は感じた。

 

「御姉様やリュシル様、その他の皆さんも今捜索しています。」

 

 正直、俺らが捜索に参戦しなくても見つかるんじゃねと思う。てか、めんどくさい。

 が、捜さなかったという事実はまずい。形だけでも加わった方が吉だな。

 

「おい、クソピエロ。この話しの続きは見つけた後だ。まずは、探しにいくぞ。」

 

 俺は立ち上がりながら、クソピエロ野郎に向かって話した。いや、指示したというべきか。

 

 「まぁーたく。イクト君は…。まぁイークト君にぃーは1つかぁーしがあるかぁーらね。いいだろう。探そうぉーじゃないーか。」

 

 やれやれとこれまた、ため息を吐きながら立ち上がった。

 

「わかりました。ひとまずリュシル様のところへ案内します。」

 

 と、ユユが1つお辞儀をして国王室を俺らはあとにした。


※  ※   ※

 

 「ここからは分かれて探しましょう。」

 

 リュシルがこの面子を取りまとめるよう積極的に案を出してきた。

 当然と言えば当然の案だが、なんといってもこの面子。

 俺はさておき、国家防衛軍の連中や自分の父親であり、この国の王にも臆せずに自分の意見を堂々と言えている、その事に意味がある。

 

「パパとユユちゃん。トークさんとクラリスさん。私とイクトでそれぞれ二人一組、主に北棟側を手分けして探しましょう。」

 

 ここの屋敷は広い。いや、大きいというか。東西南北にそれぞれ3階建ての学校みたいな横に長い建物があり、渡り廊下みたいな通路でそれぞれの棟へとつながっていて、各棟への行き来可能となっている。上空から見ると綺麗な正四角形ができているだろう。

 北棟は主に国王室や食堂、風呂場など、屋敷に住んでいる者が住まえる環境が整っている棟。リュシルやユユ、ルルなどもこの棟に各それぞれの部屋がある。

 

 次は西棟。西棟は来客用として活用している。1階には応接室と書庫があり、2階、3階は和式や洋式、大部屋といったホテルかのような宿泊室がズラリとある。

 

 そして、南棟。南棟は主に国家防衛軍がそこを拠点としているため、防衛軍一色らしい。これは聞いた話。いつかはこの目で確認はする予定。

 

 最後は東棟。リュシルやユユには絶対に入るな。死にたくなかったら入るな。とにかく危険だから入るなとさんざん入るなと言われている棟。実際に近づいてみたら、誰も入れないように入り口が封鎖されているのが確認できた。それだったら取り壊せよと思ったが、取り壊せない理由があるみたい。

 だが詳しくは聞いていない。リュシルやユユに聞いてもよくわかっていないそんな感触だった。


 二人一組となった俺とリュシルは書庫へと向かった。

 

 詮索魔法とかねえのかよ。と思いながら俺は2階にある書庫の中を探していた。

 

「こういったときに便利な魔法とかねえのかよ。」

 

 ぶつくさと言いながら探すが見事なまでに整頓されている本しかない。横縦ともに出っ張っている本はなく、少しでも出ていたらすぐにわかってしまうそんな神的な整頓だ。

 人間業じゃねーぞと整頓された本に圧巻されながら、探していた。

 

「イクトー?いたー?」

 

 書庫もそこそこ広いため、リュシルは向こうの反対側から探している。


 「いいやー。ここにいなさ…。」

 

 俺は下を向いた顔を上げると、違和感がある本棚に目が止まった。

 胸の高さにある本1冊が、綺麗に並んでいない。この1冊だけが少し前に出ている。

 俺は何も躊躇いもなく、その本を奥に押してみた。

 その本は奥深くまで押すことができた。

 不自然に思い試しに手を離してみた。そうしたら、この本を見つけた状態、少し出っ張っている状態元の状態へと戻った。


俺は確信した。

 

これはスイッチだと。

 

そして、この手はだいたい…


 「イ、イクトーー!!ちょっときて!!」

 

 リュシルが呼んでいる。向こうにあるのか。俺はそう思いながら、リュシルがいるところへ行くと、

 

「イクト…。あれ。」

 

リュシルが指差す先。さっきまでは壁だったところ。

 

 だが今は、石積によってできている通路が存在していた。隠し通路。テンプレ的過ぎるフラグ回収をした俺はこれまた確信した。


フラグが立っていることを。

 

俺があの少女を助けるフラグが。

 

俺が助けに行こうとしたときから。

 

 本当ならこんなお決まり的な事は他の者とかにやらせたいのだが、このフラグは俺がしないと成立しないフラグ。

 

 内心では溜め息をついたが、やるしかないんだよなと、開き直り、隠し通路事態知らなかった様子でおどおどしたり、かたや初めて見るその通路を興味津々に見つめているリュシルに声をかけた。

 

「この通路の先にあの子がいる。先に進もうか。」

 

「えっ!?ホントに!?それなら早く行こうよ!」

 

 こうして、俺とリュシルは隠し通路へと進んでいった。

 

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