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27話 一難去ってまた一難

「まぁーずは、藤崎花菜。彼女は大方、彼女と君の要望通りになるように仕立てるつもりだぁーよ。お勉強がてら、今はリュシルのそばぁーにつかせるとしよぉーか。」

 

「…異論無し。」

 実際にそれが一番だと思う。あいつはまだここの言葉もわからないからな。まずは勉強させるのがいい。


 ここは、国王室といって今おれの目の前にいる道化の野郎の部屋と言うまでもない。

 

 事がようやく一段落したから、今後について奴が一方的に話しているが、一応聞いておく。


 「ちぃーなみに君は今後にぃついて、どうしたぃーか教えてくぅれーないかい?」

 

 国王は何か試しているような感じで質問してきた。

 この手の類いは教えて動向決まるんじゃなくて、もう既に教えてる前からあらかた決まっている事を知りつつ、俺は道化野郎を見た。

 素性が全くわからないほどに厚くピエロの化粧をしている。その化粧には自分までも偽ってという覚悟の証なのか。…なんて、つまらない戯言はここまでとして、俺はどうしたいのかか。

 

 そんなのはとっくに決まっている。

 

「俺はさっさとこの異世界から戻って仕事をする。」

 

 俺は顔を反らし焚き火を見ながら言った。

 顔を反らしたのはわざとであって、臼微笑みをかましていて、さぞ楽しんでいるように見えるあの野郎が見るのも嫌になってきたからだ。

 

「しぃごと熱心はいいことだけどぅー、イクト君。きみはぁー働きすぎだぁよ。その顔と目が何よりしょぉーこさ。」

 

 顔と目?

 そんなわけないだろう?

 俺は数回しっかりとまばたきと顔をペタペタと触った。


 「いたって普通の目と鼻と口と耳が付いているだけだと思うが。」

 

 今度リュシルかユユに聞いてみよう。きっと良い回答が帰ってくる。ルルや藤崎花菜に聞いても、


 「はっ。人に見せられるような顔だとおもっているわけ?」

 

「ブサイクかイケメンかでいうとその目でブサイクにしている。」

 

 あの2人ならそう言う。

 1人にいたっては直接言われたのだが…。

 その2人よりはマシな回答が返ってくるだろう。てか、返ってきてくれ!お嫁に行けなくなっちゃうよ!?

 

「まぁー簡単にいぅとねぇー、イクト君の目ぇには光が見えない。」

 

この時だけはあのピエロ野郎も笑みは消え、生真面目な人に見えるほどの変わりようだった。

 

「いゆぅなら、目が死んでぇると言っとぉーか。」

 

 さっきの生真面目な雰囲気がなかったようにピエロ野郎はいつもの調子に戻った。

 

 俺はこのピエロ野郎の事がわからない。どんな意図があって、俺をここに呼んだのか。そもそも何故俺なんだ。これを言い出したら数えきれない謎が増えるばかりだ。

 

 俺は再びピエロ野郎を見た。

 

「うん?どぉーしんだい?イクト君?へぇーんな物でぇーもついていぃーるのかな?」

 

ピエロ野郎は、また臼微笑みながら聞いてきた。

 

「ああ…。変な目と鼻と口と耳がついてる。」

 

「いじわぁーるだあーね。イクト君は。」

 

やれやれ、とピエロ野郎はため息をついた。

 

 俺は表情から意図的な物を読み取ろうとした。人は多少なり感情が表情に出るときがあるが、あの化粧で臼微笑みしかしてこないから読むのは困難だと判断。てか、見ていたらなんだか腹が立ってきた。

 

「さぁて、イクト君のこぉーんごについぇてだか。」

 

 空気を変えるかのようにピエロ野郎はパンと、手を叩いた。

 そういうところは親子なんだよなー。と俺は感心した。俺はまだピエロ野郎の素顔を見てないが、リュシルとは顔は全く似てないと仮説を立てている。根拠はないが、直感がそう言っている。

 その分こんな仕草で親子っぷりを発揮してくるから不思議なもんだ。

 

「いぃーくと君は今まぁで通り使用人だぁーけど、国家防衛軍にも所属しぃてもらうかぁね。」

 

「は?そんなの嫌だけど。」

 

つい反射的に返事をしてしまったが、考えたところで返事はまずわからないのは絶対だ。

 

「そういぅーと思っていぃーたけどダメだぁーよ。国王命令だぁーよ。」

 

「ちっ。ここぞのばかり国王の権限使いやがって。」

 

「イクト君。少しぃーは君のたぁちばを考えよぉーね。」

 

 もう既に国家防衛軍には手を回していると考えていた方がいいな、この国王はそういうのは速いからな。まあ、駄々こねたってどうせ無駄だろうし、従うしかねえか。

 何かに抗うのは疲れるから従っているのが楽でいい。そしてなんといっても失敗しても人のせいに出来るのが最大のメリットだ。

 

「さて、イクト君のこぉーんごはこれくぅらいにしぃーて…」

 

いや、これくらいにされても俺は国家防衛軍にも配属されてなにすればいいんだ。説明も無しに…

 

「三人目について話そうか。」

 

強制的にかつ完全的にこの場の主導権は国王へ渡った。

 

「三人目の子はちょっと特殊でねぇー。まあ君らも特殊といえーば特殊だろーけど。」

 

 三人目…。

 恐らく予測はつくが、謎しか浮かび上がらない。

 まあそれが、面白いのだけどね。

 

「ちなみに、三人目を教えて貰っていいか?」

 

 単刀直入で俺は聞く。

 予測はさっきも言ったがおおよそはついているが、確信では無いから。

 

「ああー。いぃーとも。三人目は…」

 


その時、

 


思いっきり扉が開いた。

 

 話しの途中で遮られるようになったが、扉をイクトと国王は見た。

 

「どぉーしたんだいー。そんなぁーに慌てて。ユユ。」

 


そう。その先には血相を変え、呼吸が荒いユユの姿があった。

 

「失礼します!イクト君と国王様に至急伝えたい事がありまして!」


 思わず俺と国王は目を合わせた。



「イクト君が助けたあの少年、いや女の子が行方不明になってしまいました!」

 





その声は一切疑う余地もない事実を伝える真っ直ぐな声だった。

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