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25話 信頼

時は数十分前に遡る。

 

「とんでもない魔法だね。『固有魔法』って。」

 

「はい!もしかすると花菜さんも使えるようになるかもですよ?」

 

「流石にそれはないっしょ。」


 藤崎花菜はユユから固有魔法の話を聞いた。その人本人しか使えないオリジナル魔法。

 種類も様々で、なかには世界の秩序を狂わせるような魔法もあるという。

 

「ちなみにそのユユちゃんの固有魔法の『幻想』ってどんな感じの魔法なの?」

 

 名前からある程度どんなにか魔法なのかは想像することができるが、実際どこまで魔法によって幻を見ることができるのか興味が湧いた。

 

「そうですね…。大方、先程使用していた感じの魔法ですよ。特定の人物に幻を見せたり、幻の物を作り出したり、そんな魔法ですよ。」

 

「ち、ちなみになんだけど、どのくらいまで幻想は再現することができるの?」

 

「だいたい、私が見たことある物は再現できます。触られると消えてしまいますが…。そして、対象となる相手に対して魔法をかけるときは相手の記憶から再現して幻想を見せることができます。ですので、花菜さんがいた、元いた世界も見せることも可能です!」

 

 ユユが目をキラキラさせて、言っていや、訴えてきている。

 

 ユユちゃんには悪いが私は元いた世界はもう2度と見たくもないんだ…。


 藤崎花菜は心のなかでそう思いながら、しっかりと地を踏みしめて歩いている足にそっと手をかけた。


「…?どうしました?歩き疲れましたか?」


「いいや、そんなことないよ!今度ユユちゃんには魔法お願いしていい?」


 強引で醜い話の逸られ方だと藤崎花菜は思う。だけど、心優しきユユは必ず許してくれる。その優しさをありがたく利用させてもらう。

 

「わかりました!その時は任せてください!」

 

 やはりユユちゃんは優しい子だとつくづく思う。

こちらが強引に話を逸らしたのを察して追及してこない。自分が逸らしたから何か別の話をしなきゃ。

 

「ちなみにユユちゃんは屋敷に帰る前のもう1つのお仕事って聞いている?」

 

「はい!聞いています!」

 

「ちなみにどんな感じに?」

 

「おほん。帰り道に盗賊か何かに絡まれているから、下っ端1人を夢を見せて気絶されてくれ。です!」

 

「うわ、少しアイツに似ているかも…。」

 

「本当ですか!」

 

 何故アイツに似ているだけでこんなに嬉しいのかは私にはさっぱりだ。

 が、ユユちゃんが喜んでくれているから、良しとしよう。

 

「けどさー、アイツってユユちゃんの固有魔法使えること知っていたの?それともユユちゃんが教えたの?」

 

 普通だったら教えて貰ってから言えることだが、あの社蓄クソ野郎の場合、そんな普通が通用しない。

 全ても見通しているような万物の目をしていやがるからな。

 もしかしたら…

 

「それがですね、教えていないはずなのに知っていたんですよ!はあ~さすがです。」


「マジか…。」

 

 もうホントにナニモンだよ、アイツ。人間じゃねえ。もう一種の化け物だよ。しかも、ユユちゃんのアイツに対しての絶対的な信頼はなに!?さっきから話しているが、全くアイツの事を疑ってなく言われている通りに動いているのは何故だ…。

 私は…まあ賭けに負けただけど、ユユちゃんの場合は信頼しすぎている。

 

「ねえ、ユユちゃんはどうして、アイツのことこんなに信頼しきっているの?」

 

 英雄だからです。とかそんな事言わないよね。それは色んな意味でアウトだからね。言わないでくださいね。

 

「だってそれはイクト君は…」

 


ドオオオオオンンン!!!

 


大きな爆発音みたいな音が鳴り響いた。

しかも、すぐそこで。

 「花菜さん!」

 

 私は頷いた。

 戦闘になったのだ。

 アイツの言う通りに。

 すぐさま、私達は走りだし少し狭い道へ入った。一本道になっていて小さい人影がいくつも見える。

 

「花菜さん!先程教えた通りイメージをしてください!風で相手を吹き飛ばすようなイメージです!」

 

「わかった!」

 

 すぐイメージすると、風が集まってきているのがわかる。無数の風が圧縮され、膨大なエネルギーの1つの玉になっているのがわかる。

 

「さあ、思いっきり解き放ってください!」

 

「おおおおりりりりゃゃゃああああ!!!」

 

「う、うわわわああああ!!」

 

 盗賊の1人が宙に吹き飛ばされた。

 そしてその隣にいた男が突然その場に倒れた。

 そして、私達は2人の後ろ姿まで追い付いた。

 

「マジだ…。本当に有言実行してる…。あんたホントに何者なわけ!?」

 

それは状況を把握してアイツに向かっていった一言だった。

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