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24話 リオドイテヨテベス

「あなた達に構ってる暇はないの。どいてくださる?」

 

 凛とした姿から発せられている声はあの老若男女が魅力する声とはどことなく違い、またリュシルの雰囲気がほんのさっきとがらりと変わったのが、感じとれた。

肌とかがピリピリするそんな感じの変わりよう。


「おー、こわこわ。ってどごぞの貴族かと思えばこれはこれはリュシル様ではありませんか。」

 

「おー!今日は大物が釣れましたね!兄貴!」

 

「やりましたね!兄貴!」

 

 兄貴。

 なるほど。

 あの奥にいる会話の主導権を握っているのが親玉ってことか。

 

 種族は俺らと同じ人間種。

 親玉の背丈は180ってことか。あとあの筋肉。鋼のようだ。ボビービルダーかよ。

 うん…。その前にあのTシャツはなんだよ。

 可愛らしい熊さんが真ん中にプリントアウトされているTシャツとか。絶対、笑わせにきているだろw

センス良すぎw

しかも、パッツンパッツンの熊さんじゃないかw


「ちょっと待って!イクト!あの人の…ふふっ…服…ふふ」

 

どうやら、この国の王女もお気に召されたみたいだ。てか、あんなの見て笑わない奴とかいるのか。

 だいたい、盗賊といったらターバンを巻いていて露出度が多めの服装をきているだろ。しかし、なんだよ。この盗賊は親玉以外、厚め長袖のフードや挙げ句には防寒コートまで着ている奴までいるぞ。防寒対策バッチリじゃねーか。

…本当に盗賊なのか…。


 「ふふっ…き、気をつけ…ふふ…イクト…ふふっ。この…盗賊は…ふふっ…有名…ふふ…だから…ふふっ…」

 

 姫様は完全にツボに入ったみたいらしい。これは抜け出せるのに時間がかかると思うが…。

 

「…っ!」

 ゴオオオオ!!!

 

 リュシルが瞬時横へ緊急回避した。

 

 リュシルの元いた場所はおびただしい炎で包まれていた。

 

 「笑ってんじゃねーぞ!このメス豚が!」

 

この炎を巻き起こした張本人、あの鋼熊さんの親玉野郎が怒りの頂点に達していた。

沸点が低いなと思うところがあるが、なんつう魔法の威力だよ。

 リュシルが避けなかったら真っ黒に焼けているぞ。炎は消えたが、辺り一面黒ずみとなっているのが伺えるから魔法の威力が改めて伝わる。

 

「リュシル…。」


 先程一度は和やかになったリュシルだが、この一瞬で完全に戦闘モードに入ったのが見てとれる。笑みは一切消え、冷酷で冷徹でありその無情なほどまでの無表情はまさしく、この吹雪に舞い降りた雪の女王。まさに、『雪女』だな。

 

「イクトは安全なところへ下がっておいてね。直ぐに終わらせるから…。」

 

 淡々として感情も全くこもつていない言葉だっただが、どことなく安心感が俺にはあった。


だってリュシル"達"が負けるわけないだろ?

 

「おおおおりりりりゃゃゃああああ!!」

 

バカでかい声が後方から聞こえてきた。

 

「う、うわわわああああ!!」

 

 そのでかい声と同時に盗賊の1人。防寒コートを着ている奴が宙に吹き飛ばされて、その隣にいた紺色のパーカーを着ている男が突然その場に倒れた。


いや、正確には気絶した。

 

そして、後方から2人こちらに向かってきた。

 

「マジだ…。本当に有言実行してる…。あんたホントに何者なわけ!?」


 「お疲れ様です。イクトくん!予定通り助けにいましたよ!」

 

とても元気があり活発的な声と全てを優しさで包み込むような声。2つの声。見た目は幼い印象の2人だが、1人は俺と同じ境遇でここまで孤軍奮闘でどうにか生き延びて、王を夢見る女性。

 そして、もう1人は姉を絶対的に親愛しており、また固有魔法の使い手である。

 これほどの援軍、…2人しかいないが、心強すぎる。

 


藤崎花菜とクルリア・ユユが後方からやって来たのであった。

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