21話 もう1つのまほう
これは俺が持っている価値観だ。
否定や批判は好きなだけすればいい。
そんな奴等には興味もクソもないから。好きなだけ叩くといい。
良い人と悪い人がこの世にはいる。
当然、良いことをすれは良い人と見られ、悪いことをすれば悪い人になる。
それでは問おう。
良いこととは一体なんなのか。
悪いこととは一体なんなのか。
人助けが本当に良い事なのか。
犯罪を犯すのが本当に悪い事なのか。
それは違う。
重要なのは、「その人にとって」だ。
所詮、人という生き物は自分にとって利益であるかないかで、行動する生き物だ。
もっと単純にいえば、自分以外の他人はどうでもいいのだ。
簡単な話だ。
良い人になりたければ、その人にとって良いこと、都合がいいようにすればいい。
そしたら、良い人になる。
逆に、その人にとって、悪いこと、都合が悪い事をすれば悪い人になる。
簡単だろ?
とある漫画の金髪の少年が同じ事を言っているが全くのその通りだ。
所詮、良い人悪い人は都合の良し悪しで決められる。
やはり、つくづく思う。
クソだな。
この世界は。
※ ※ ※
「ところでユユちゃん?私ってホントに屋敷に行くの?」
「はい…。そのように伺っておりますが…。」
「…まじかー。いくら賭けに負けたからって、そこまでは出来ないだろうと思って甘く見ていた私が甘かったなー。」
藤崎花菜はため息をつきながら、甘く見積もっていたことを反省していた。
今、ユユと藤崎花菜は大吹雪で辺り一面真っ白。ホワイトアウト化した都の中心街大通りを歩いていた。
ユユが自己紹介したあと、少し話をしただけですぐ意気投合して取り敢えず、予定通り屋敷に向かうようになった。その際、この吹雪の中歩きは困難だと思ったが、
「以外と使いこなせるようになると便利なんだね。魔法って。」
「そうですよ。今、花菜さんが使っている「風」は特に万能性に優れている魔法で、今みたいに吹雪を交わしたり、他にも燃え上がる炎の中もこの魔法だったら入れちゃうと、凄い魔法なんですよ。」
そう。今はユユから魔法のコツを教えて貰った藤崎花菜が「風」魔法を用いて吹雪の中を歩いている。無論、当の自分達は吹雪に吹かれておらず、風の力で吹雪は完全にシャットアウトした空間を歩いている。
「ところでユユちゃん。」
「はい。なんでしょうか?」
「あのー。…魔法についてもっと教えてくれない?」
「わかりました!まず、魔法には大きく分けて三種類あります。」
魔法の話になると待ってました言わんばかりにユユが目を輝かせてきた。
「えっ…と、私が今使っている「風」とさっき炎とか言っていたから「火」とか?」
「そうです。それと、あとは「水」の三種類です。スタンダードの「火」。上級者向けの「水」。選ばれし者の「風」。一般的にはこのような認識をされて大丈夫です。」
「ちょっと待って。選ばれし者ってなに!?」
「言葉通りですよ。花菜さん。「風」を使える者は限られているからです。私が知る限り「風」が使えるはリュシル様と花菜さんしか知りません。」
「……ホントに?」
「ほんとです!」
藤崎花菜の問いかけにユユはガッツポーズするほど肯定した。
多少、藤崎花菜は驚いたが、これも異世界召喚の恩恵だろうなと割りきり、歩みを進めた。
「あっ。あともう1つ魔法があります!」
ユユが慌てて、藤崎花菜を引き止めるように言ってきた。
「他にもあるんだ。ちなみにどんなの?」
魔法について興味はある藤崎花菜。
異世界といったら魔法。是非とも使ってみたいと思っていたから、正直なところ内心はさっきからハイテンションだったなのは秘密。
これは藤崎花菜だけが知っていればいい話。
それはそうとして、もう1つはなんだ?雷とか?毒とかかな?と藤崎花菜は魔法の想像がどんどん膨らませていった。
「もう1つの魔法。「固有魔法」があります!」
膨らんでいった想像が一気に破裂した。
「は、はい?」
よくわからなかったからもう一度聞いてみる。
「「固有魔法」があります。」
「こ、こゆうまほう…?」
「はい!」
「………ナニソレ?」
只今、王都大通りを北へ歩行中。
屋敷までは残り2.3キロメートル。まだまだその道のりは程遠い。




