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転生女子会の黒一点  作者: ケー/恵陽
一学年前期
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06 運動の後は栄養補給


「イチゴ君、お昼を一緒にどうかな」

 今日は防衛科の授業からそのままお昼休みになだれ込む。皆に混じって汗を拭きながら王子が誘ってくれた。

「あー……えーと……」

 しかし今日はユッテたちから誘われていた。王子を優先してもよいが、どうやっていけなくなったことを伝えよう。言葉に詰まっていると、王子が忍び笑いを漏らしている。

「アイルツ伯爵令嬢たちかい。いいよ、今日は彼女たちを優先して。その代わり明日はどうか」

「ありがとうございます。我が儘言って申し訳ありません。明日は是非ご一緒させてください」

 明日ならば特に誘いはなかったはずだ。

「いいよ。ここでは僕も一生徒だからね。強要はできないさ。じゃあ、また午後に」

 王子は何故か楽しそうにしながら待たせている護衛の生徒の方へ去っていった。

 本来ならば私は断れる身分ではないのだが、どうにもあの王子のフランクさとか、のんびりした領地で育ってきたせいか、身分に戸惑う。ホルトハウス領は距離でいえば王都からはげしく遠隔地というわけではない。ただ間に障害があって回り込んでいかないと辿り着かない場所なのだ。おかげで王都の流行りは年単位で遅れてやってきたり、一応貴族で領主の息子なのに泥だらけの子ども時代を送っていた。泥々になって帰ってきて、怒ってくるのは領民である友人たちの母親であった。時に容赦ない拳骨も落とされたりしたので、父よりもある意味恐ろしい存在だ。


 学校での食堂は基本無料で振る舞われる。朝昼晩のその日規定された食事だけならお金はかからない。ただ育ち盛りの男子や甘いものが食べたい女子はオプションをつけることができる。男子なら特に大盛やおかわり。女子ならデザートやサラダの追加だろう。

 ちなみに私は基本メニューに規定外のデザートと果物を追加した。この体になってよかったことは甘いものをたくさん食べても太らないことだろうか。どうもうちの家系は太りにくい代わりに筋肉もつきにくく、デブよりガリの心配をよくされる。私はスイーツで結構栄養を摂っているせいか、比較的標準体型に近い。だが上の兄や父は棒みたいな感じである。

「あ、イチゴ君! ここですわ」

 トレーを持ってうろうろしていたら、クリスタが手を振ってくれた。しかし名前を呼ばれた瞬間、周囲からの視線が集中した。好奇の視線だけならよいが、嫉妬混じりなどめんどくさそうなものもある。なるほど、クリスタは思いの外人気だ。

「こんな端の方にいたのか」

「うん。でもここ陽があたっていいんだよ」

 ジビラの隣に腰かけると、対面のユッテが笑みをくれた。

「もう三人とも食べたのか」

「さっき食べ終えたところです」

 ジビラが机の上にサッとメモを取り出した。メモを広げながら何故か私を見て焦った表情を作る。

「あ、あの、イチゴ君は食べながらでいいから、聞いててくれる?」

「うん。じゃあ、いただきます」

 実はお腹ペコペコなのだ。運動の後はおいしいご飯に限る。食堂のご飯はまずくもないが、特別おいしいわけでもない。普通だ。無難な味付けともいえる。オプションでスパイスなどを買うこともできるので、敢えて無難な味にしているのだろう。そう思うと意外とがめついな、この学校。

 ジビラは私が食事に口を付けたのを確認すると、皆に見えるようにメモを置いた。

「ユッテとクリスタと一緒に思い出してみたんだけど、これが攻略対象者」

 メモには王子を筆頭に五人の名前が記されている。

「ただこの通りの名前で正しいかは本人見つけてみないとわからないのよ」

「それに魔王の名前は誰も覚えていなかったので、もう一人攻略対象がいるかもしれない」

 魔王のルートは三人とも最後まで見たらしい。ただしその時見たはずの名前は今世でどんだけ唸っても出てこなかったという。出てこないものは仕方ないので、わかる人から調べていこうと結論に達した。ちなみにこのゲーム内での攻略対象者は皆一年生だ。三年間がっつり親交を深め、卒業式前にハッピーエンドを迎えるのがセオリーらしい。

「明日ライナルト王子にお昼誘われているから、この、ディーター様も見てみるよ」

 ディーター・アンハイサー。王子の護衛で侯爵家の二男。彼も対象だ。

「誘われるの、案外早かったわね」

「そうでもないと思うわ。イチゴ君と呼ばれるようになったのは入学直後だもの。きっと見極めていたのね」

「緊張しそうです。でもお話聞かせてください」

 三人それぞれに私のことを気にしてはくれているようだ。明日は明日にならないとわからない。

 だがその前に私も彼女たちの知恵を借りたいことがある。



流行ジャンルの恐ろしさを知る…。アクセス数びびるわ。

お読みくださり、ありがとうございます。

感想やらレビューをなしにしているのは基本的にこの話不定期の予定だからなのと、感想をいただいてもその返事をするのが面倒なものぐさだからです。すみません。お気に召したらこそっと読んでくれたら、それだけでうれしいです。

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