05 ハーゼンバイン王立学校の話
私たちの通うハーゼンバイン王立学校の説明をしておこう。
十五歳から三年間学び、それぞれの未来へ旅立っていく。貴族が主だが、特殊な技能を持った平民や、力のある商人の子どもも稀に通っている。
防衛科、技師技能科、経営科、家政科があり、私は防衛科に所属している。騎士や魔法師となりたいものや、腕に覚えのあるものは大体こちらである。授業は選択制なので、自分のとりたい科目を選ぶことができる。定員があるので希望が通らなかったり、教員から逆に指名があることもあるが。
技能技師科は腕に自信はないが、補助的な面でのサポートを得意とする者や日々の生活を楽にするために研究を目的とする者が多い。
経営科は主に跡継ぎとなる貴族の令息や令嬢が多い。令嬢は少なめだが、将来夫を支えるためにとか、自分が領地を背負って立つという気概のある者もいる。
そして家政科は執事やメイドなどを目指すものが多い。上級貴族の家に縁を繋ぐ意味でもこちらを希望する者は少なくない。
また科とは別にクラスがある。四科の生徒が混じりあったクラスで、共通の授業の時は一緒に受けるが、大体は科別となるので全員同じ授業は滅多にない。
私の場合はクラスは王子、ユッテ、クリスタ、ジビラと同じである。ただ私と王子は防衛科だが、ジビラは技師技能科で、ユッテとクリスタは家政科である。ちなみに経営科には学年が異なるがティモがいる。フェリクスは家政科らしい。
ユッテが言うには、それぞれの科に一人は攻略対象者がいるという。防衛科は言わずもがなの王子であろう。他の科はまだ聞いていない。ただ魔王は家政科にいるらしい。何故一番似合わなそうなところにいるんだろう。
ちょっとこのゲーム、やりたくなった。
ところで時に合同で授業があるときもあるのだが、防衛科、経営科、家政科の合同授業が週に一コマある。経営科の生徒たちをゲストとして家政科の生徒が持て成す。そして防衛科の生徒は会場でずっと立っている。一コマ一時間半ずっと立ったままだ。それは騎士や誰かの護衛となったとして、空気のように存在を消してその場にいなくてはならないからだ。
これがなかなかつらい。体は強張るし、足はむくむ。何よりお菓子とお茶の香りは毒だ。それを無視したとしても眠気が襲う。恐ろしい授業だと思った。しかし本当に恐ろしかったのは三回目の授業からだった。
初めの二回は私たちの忍耐が試されていると思った。三回目の授業で、本当の意味での授業内容を知ることになった。
家政科の生徒が経営科の生徒にお茶を振る舞い、私はそれを見ないように視線を逸らしていた。だって目の前にお菓子があるのに食べられないなんて直視したくない。その行動でまさか気づいてしまうなんて思っていなかったのだけど。
その時はガーデンテラスでの授業だった。逸らした視線の先には季節の花々が植えられていて、噴水のある中庭に続く道がある。その道の手前から、煙があがっていたのだ。
「か、火事?!」
思わず叫んだ私に皆の視線が集まったが、慌てて指差し事態を示した。近くにいた王子が(防衛科なので例外はない、と立たされていた)状況を見て、すぐに家政科と経営科の生徒の避難指示を出す。半分が避難誘導に動き、残りのうち更に半分が煙の発生場所の調査と、余った者たちが周囲の警戒をする。
煙を消し止めたところで教師が手を叩いて視線を集めた。
「初めてにしてはよく動いた。さすがにライナルト様は手馴れていますね。指示が的確でした」
教師は満足そうに王子を持ち上げた。それから視線は何故か私に移る。
「ホルトハウスもよく気付いた。視野が広いことはいいことだ。皆、こういう場でただ立っているだけでは防衛科として三流だ。問題がないか、常に注意を巡らせるように。今後の授業でも何かが起こるかもしれない。気を引き締めろよ」
変なところで評価をもらってしまった。それからこの授業の時の緊張感は倍になった。主に教師たちが何をしかけてくるか、という部分において。
ひとまずここまで。正直衝動のままに書いてしまったので続きまだ考えてないです。気が向いたらまた書きます。というかヒロインが出せるところまでいくのか、と少し疑問に思えてきた。出てくる気配がないよ…