03 憧れのあの人に近づきたいから
乙女ゲーム転生だと宣ったユッテだが、タイトルは覚えていないらしい。他の二人もそうだったのでそういう仕様の転生なのだと思うことにした。
ただゲームの内容は割りと覚えていたらしい。とはいっても、彼女たちがいうには世界を救わないといけないとか、悪役令嬢が非業の死を遂げるとか、そういうのはほとんどないらしい。そう、ほとんど。
一つだけ隠された魔王を見つけてしまうルートがあるらしいのだが、そのルートで失敗すると世界を魔王に壊されてしまうという。失敗とはつまり、ヒロインの死だ。魔王である人物の好感度を上げていくと、終盤近くで魔王と誰かが争っている場面に遭遇する。そこで選択を間違えると魔王の代わりに殺されてしまうらしい。正解を選んだなら、魔王がヒロインを庇い、自身のことを明かすイベントが発生する。そこでヒロインは魔王を受け入れ、結ばれるのだ。
それにしても魔王が人に混じっているとは信じられない。この世界は魔法がある世界である。私も少なからずその恩恵を賜っている。それでも魔王はお伽噺にしか存在しない。
「まあ、いないならいないでいいのよ」
実際いるかは彼女たちも懐疑的のようだ。ただ記憶にある名前を学生名簿で探そうと思っているらしい。
「それよりもまずヒロインがどんな子で、記憶持ちかどうかが問題ですね」
「攻略対象の方々もきちんと把握すべきです」
なんだかクリスタとジビラも乗り気だ。
「そういうわけで、ゲーム内容のすりあわせはわたしたちでやろうと思う。ただイチゴ君には攻略対象の方々を調べて欲しいの」
「調べる?」
「簡単な性格とかでいいから接触した印象を教えてほしい。わたしたちは気軽に話しかけられないからさ。ほら、ライナルト様とか」
ユッテがなにかを隠しきれていない顔をしている。
「ユッテ、実は王子様たちと仲良くしたいの?」
「そ、そりゃあ! だってこのゲームのビジュアル素敵だったんだもの!」
カッと真っ赤に熟れたユッテをフォローするようにクリスタとジビラも言い募る。
「イチゴ君も前に見てたら綺麗って思うようなイラストだったんだよ」
「そうですわ。美しいものを愛でたい気持ちは万国共通ですわよ」
別に責めるつもりはないが、考えてみれば憧れのあの人と直接お話しできるなんて、と言わばアイドルと知り合いになるようなものなんだろう。それならわからなくもない。
「仕方ないな。でも私にできる範囲しかできないからね」
三人は嬉しそうに頷くと、誰から調べようとかどうやって調べようとかきゃいきゃいし始めた。
「ちょっと、私は誰か知らないんだからちゃんと教えてくれよ」
「わかったー!」
元気よく返ってきた返事にちょっと不安になるが、それでも楽しそうならいいかと私は彼女たちを眺めた。




