28 転生女子会(ではなくただのお茶会)にご招待
ちょうど小腹がすくおやつ時、私たちは揃って招待客を出迎える。
ライナルト王子にディーター、それにガスト先輩と私の同室の先輩であるティモとフェリクス。後はエリーゼ・ハック子爵令嬢とホルストも招待している。
エリーゼ嬢は学校にもう少し慣れてもらいたいのと、どんな人物か知りたいからだ。ホルストは単純に兄たちに報告していると言っていたから見てもらった方が早いだろうと混ぜた。あと勝手に私の作戦会議もしたいからカールも追加した。
「給仕はいないのか?」
「ええ。いつも自分たちだけですから」
王子の疑問も当然だろう。普通はサロンに従者や侍女を控えさせている。しかし私たちはそんなこ出来るはずがない。彼らには窮屈だろうが今回だけだ。気楽に楽しんでもらえるように願うばかりだ。
「……おい」
「え?」
「何故オレも招待されたんだ?」
眉間に皺を刻んだまま首をひねるのはカールである。勝手に呼んでしまったので、家政科のユッテとクリスタが少し焦っていた。試験じゃないから大丈夫なはずだ。
「折角だから親睦を深めようかと思って。あと毎回爺先生に部屋借りるのもどうかと思うから相談したい」
「爺……ああ、なるほど」
うっかり心の中での呼び名が口をついた。理解したということは他の人にもそう呼ばれているんだろうか。
「さて本日もユッテ作のおいしいお菓子よ。さあ、味わいなさい」
ミルクレープを各々の前に並べる。洋菓子系は似たようなお菓子があるので、それを前世の記憶を頼りにアレンジしたのがユッテの作るお菓子だ。
言い方はまずいと思うが、ユッテの菓子はどれも絶品である。皆は苦笑いしながらもお菓子に手をつける。最初に口にしたのは好奇心丸出しで落ち着きのないガスト先輩だ。フォークで大きく切り出して、層になった断面に目を瞠る。しかし口にすぐにミルクレープを含んだ。
皆が栄えある勇者を見つめる中、ガスト先輩は顔を輝かせる。
「おいふぃぃ~! びだべもぎれえぇ~!」
口をもごもごさせる彼女にそれぞれが手と口を動かし始めた。私たちは誰も顔がゆるんで仕方がない。
「やったわね、ユッテ」
「喜んでもらえてよかったね」
「さすが、ユッテ」
「わたくしたちがお菓子会をする理由がわかったかしら」
皆の輝かんばかりの表情に、ユッテは赤くなった顔を必死で隠そうとしている。一人、ローザリンデ嬢は方向性が違う気がするが。
「これはおいしいね。作り方を教えてもらうことはできるのかな」
王子は気に入ったようで、城の料理人にでも作らせたいのだろう。ディータ―は甘いものが好きそうではないが、ミルクレープは口に合ったようだ。口元は優雅だが、手がおそろしく早い。すぐに終わってしまいそうだ。
「あ、あの、あたしにも作れますか? 教えてもらっても、い、いいですか?」
「スヴェン! ボクも、ボクも!」
一口目を含んだ残りを大事そうに味わいながら、エリーゼ嬢がキラキラした目でユッテを見つめる。こんなに真っ正面を向いているのは初めて見る。いつも俯きがちで自信なさげなのだが、甘いものは好きなようだ。
ホルストはそう言うだろうと思っていた。コロ商会は食べ物も売っているがこれは売る前に腐るのでは、と思ったがユッテに交渉してレシピを売りたいそうだ。後はそれに合う飲み物や食器をセット販売したいらしい。商魂魂すごいな。
「へえ、すごいなあ。おいしい」
「こんな美味なものをいつも食べているのか、お前は。少しは先輩に分けてくれようとは思わないのか」
フェリクスは普通に褒めてくれたが、ティモは若干切れ気味だ。しかも私に対してそう言われても困るところだ。へらっと笑っておいた。
「アウラ―、ちょっと」
カールは何故か制作者を呼ぶという行為。教員の呼び出しに今度は青くなりながら近づいていったユッテは、暫く小声で何かを話すとホッとした顔になった。どうやら彼も作り方が気になったらしい。そしてこの女子会(けしてお菓子会という名前で決定はしてないと思う)で作ったお菓子を今度教えてほしいと言われたようだ。家政科の講師ということは、カールもお菓子が得意なのだろうか。
「ホルトハウス君、ありがとうね」
各々に堪能して落ち着いてくると、それぞれに雑談を始めた。ユッテは王子たちに囲まれている。
「いえ。きちんと調べてもらいましたから」
ガスト先輩は私が欲している情報を調べてきた。というかその前に一度直球で何の情報が欲しいか訊かれたので、答えておいたら十分なものをくれたのだ。
「でも先生と二人のチームって今まであんまり聞いたことないけど、大変だね」
「相談するにも一苦労で困ってますよ」
「そうだな」
行儀は悪いが、自分のティーカップを持ってきて、カールが同じ席に着く。
「フィッシャー先生はどこかの控え室はあるんですか?」
「教官室に席はあるから、そこくらいか? だが大体昼間は色々なところでいるから戻れるのは朝の出勤時と昼休憩と帰宅前だけだ」
そんなにいろんなところに駆り出されているのか。お疲れ様です、と心の中で労っておく。
「なんならボクが場所提供しましょうか?」
カールに続いてホルストも近くに椅子を引っ張ってきた。
「場所?」
「コロ商会で借りてるサロン部屋」
「そんなもん借りてたのか」
「商談相手は生徒から教師までそれぞれです」
しれっと話しているが、コロ商会の進出すごい。しかしホルストには睨まれた。どうやら今は私と同じように魔法陣のついた靴を刻みたい魔法師教師が多いらしい。あと用具のおばちゃんから主婦の味方的な商品の大量発注があるという。
「借りて大丈夫なのか」
「先に連絡いただければ、それかちょっと待ってくれれば仕切りで区切りますから」
カールは賛成のようだ。このまま爺先生の教官室を借りるのも申し訳ないしな。
ふんふんと楽しそうに頷いているのはガスト先輩で、何故か挙手して発言を求めた。
「よろしければあたしも情報提供しましょうか?」
先輩曰く、情報とは日々変わるもの。今回はそれぞれのチームの特徴と長所短所を聞いている。騎士チームを狙うのは決まっていたが、そのチームでもどんな戦いを仕掛けてきそうか、突出した力を持ったものがいるか、などだ。しかしもう少し時間があれば各チームのメンバーの特徴も洗い出してくれるらしい。
「あ、でも講義的には駄目なのかな」
チーム戦という講義で、他の科の力を借りるのはどうなのだ。
「問題ない。外野の力も含めてそのチームの力だ。そもそも相手を調べるのに人に聞いたりもするんだから協力者を作るのは当然だ」
それは知らなかった、と呟くと講師は誰もいいとは言ってないが、駄目とも言っていないと屁理屈が返ってきた。
「じゃあ、あたしが色々調べますよ」
「ボクは部屋使う人に一言説明するようにしますね」
「ガスト、アウラ―からお菓子のレシピをいただく予定なので、その菓子を報酬にしようか?」
カールが軽率に尋ねると、満面の笑みで彼の手を勢いよく振る先輩が出来上がった。
「あ、ボクにもください、それ!」
便乗する商人が身を乗り出す。
こうして外野メンバーを含めて、改めてチームが結成されることになった。
去年は創作お休みしてました。今年はまたぼちぼち書くことにしますー。




