26 教官室は密談の場所
本来私は運動の方が得意である。魔法師の講義は申し訳程度にしか受けていない。それなのに今、魔法師の教官室に連れ込まれている。禿頭で髭もじゃの爺先生に呼ばれたのだ。
しかも、何故か部屋の中にはカールが居た。爺先生の計らいらしい。そういえば彼と講義以外で連絡を取る方法がなかった。
「すみません、教官」
「よいよい。この部屋が空いている時はいつでも使えばよい。科の違う教官と生徒では相談が容易でないからの」
カールに倣って私も頭を下げておいた。どうやら彼も困っていたらしい。
「で、本当に簡単な方針は決めたが、他のチームの情報を集めないと難しいだろう?」
先日はやる気がなさそうだったのに、何だか今日はやる気に満ちているようだ。前回より覇気がある。
「これは他のチームのリスト」
そう言って渡されたのはチームごとの名簿だ。これはすごく助かる。だが他のチームでも担当教官から渡されているという。なので、これを元にどうするかが問題になる。
「私たちすぐに狙われそうですね」
何しろたった二人だ。しかも生徒は一人。狙い目にしか見えない。
「うーん、コロ商会にまず連絡を取りましょう。カールの足のサイズを教えてくれるか」
「ああ」
チームは全部で七あり、それぞれメンバーを見れば傾向がわかり。狙われやすいのは当然私たちだ。生徒は一人だけ。しかも攻撃するのはカールだけしか許可されていない。
「陣はどれを刻むんだ?」
「カールの魔法属性は何? それで決めるよ」
「魔法属性……」
何故か首を傾げられる。
「あるだろ? ……ないの?」
まさか、と問えばきょとんとした顔で首肯された。どういうことかと問い詰めたいが、彼がこの学園に卒業も留まっている理由がここにあるようだ。二つ以上の属性を持つ者は聞いたことがない。もしかすると逆に特化した属性がないから満遍なく使えるバターンだろうか。
「基本的にどれでも使えるが、火や水は被害が出る。土は掃除が面倒だな。風にしとくか」
詳しく訊かれるのを嫌がったのか、カールは刻む属性を消去法で決めていく。風も被害がないとはいわないが、比較的少なそうなのでその案にのることにする。
「ただ風魔法には詳しくない。なんとなく想像はできるが、うまく使うには他に何が必要かな」
「吹き飛ばせばいいんだろう? 開けた場所に誘導してくれたら竜巻でとばしてやる」
何でもないことのように言うが、ストームの魔法は高難度だったはずだ。しかも開けた場所と言っても校庭以外の場所だと使用するには不向きだ。最悪建物が吹っ飛ぶ。それならまだ水か土の方がマシだ。
「手を広げたくらいの空間さえあれば問題ないぞ」
こともなげに言う。一体この男の自信と魔力はどこから出てくるんだ。
「そこは気にするな」
「わかった。気にしない」
変なことに巻き込まれるのは本意ではないし、私が知る必要がないなら気にしないことにする。だが頷くと、カールは変な顔をする。まるで珍妙な生物を見つけたとでも言いたげだ。
「気にしてほしくないんだろう? 私だってあまり突っ込まれたくないこともある」
転生者であることとか、特に気にしてほしくないことだ。彼もひとまず納得したようで、そうだな、と小さく返した。
それからはどうするかの話し合いだ。出来ること出来ないこと、そしてどうやって他チームに対するかの意見交換だ。チームは私たちを含めて七チームある。その中で私たちが狙うのは騎士のみで構成されたチームになった。
「混合チームは?」
「来たら迎え撃つ。しかし最初の狙いは騎士のみのチームだ」
カールが言うには魔法師がいないチームを倒しても単位がもらえないらしいので、一番人数の少ない私たちに絞ってくると考えているらしい。
ただ騎士と魔法師の混合チームも向かってくる可能性はある。
「あと、戦うのはカールだけだよね。騎士たちに体力で勝てる?」
見た感じでもやしのようなカールだ。非常にそこが心配なのだが。
「まあ、なんとでもなる」
ふい、と目を逸らされる。体力に自信はなさそうだが、それでも勝てる目算があるというならお願いするしかない。
「ああ、あと、もし負けても何度でも挑戦することは可能だ。その代わり目の敵にされる可能性もあるけどな」
軽い口調で告げるカールに私は顔を顰めた。
それはフラグというやつではないだろうか。




