13 楽しい恐ろしい武術トーナメント
ちょっと短いですが…
試験月に入ると、いろんなところで教本を開いたり、体を動かす人を見かける。経営科はメインが座学なので、ひたすらぶつぶつ言っているか、書き物をしている者が多い。技師技能科も座学だが、あそこは論文か実物での提出試験もある。図書室か研究棟に閉じこもってしまって、姿を見ていないものがちらほらいる。ジビラは双六の活用を論文で示すらしい。また家政科も座学メインであるが、教師を相手に実地試験がある。給仕のマナー、正確さ、美しさ、もてなし空間の作り方、色々見られてしまうのだという。
そして防衛科は座学よりも実技がメインだ。驚いたことに、ローザリンデ嬢も防衛科だった。彼女は魔力が高いので、魔法師の資格を取りたいという。
実技試験でもある武術トーナメントは他の科の試験がすべて終わった後に行われる。ついでに言うと、王宮官吏や騎士団、魔法師団の上官も見に来るのでスカウトされることも夢ではないのである。おかげで三学年の先輩方は殺気立っている。そこに食い込もうというのだから、なかなかつらいものである。
「ユッテ、大丈夫か?」
青い顔した彼女は今しがたすべてを終わらせて、サロンで休んでいるところだ。今日は私しかいないので、たどたどしい手付きでお茶を淹れた。お菓子は学校支給のものしかないのが申し訳ないが。
ちなみにクリスタとローザリンデ嬢はいま別の座学の試験で、ジビラは論文について教師に突っ込みを受けているところだ。
ユッテがのろのろとカップを持つ。私も口に含むと瞬間苦い顔になってしまった。茶葉を入れすぎたのか渋くなっている。
「ユッテ、ごめん。渋かっただろ、淹れ直すよ」
彼女の方に手を差し出すが、ゆるり首を振られた。
「大丈夫。今は逆に栄養ありそうだからこのままでいいよ」
それでもやはり渋かったのだろう、ひきつった笑顔だった。
「イチゴ君が淹れてくれた貴重なお茶だもの。飲むよ」
申し訳なさでいっぱいだ。せめてお茶をおいしく淹れるくらいは勉強しよう。
「ところでイチゴ君は試合準備はいいの?」
「うーん、後は体調を万全に保つくらいしかやることはないな。気分転換に双六でもする?」
何気なしに呟くと、ユッテがやっと楽しそうな顔をしてくれた。
「でもあれは何かを賭けないといけないでしょう? 賭けられるようなもの、ないよ?」
そんなことを言ったら私もないが。
「イチゴ君はそうだね、今度の試合で必ず一度は勝ってよ。それがわたしにとってはご褒美かな」
双六の盤面を広げながらユッテが笑う。やはりユッテは元気な方がよい。
「難しいこと言うなあ。じゃあ私にとってはユッテのお菓子が最高のご褒美だよ。勝ったらチーズケーキ作ってくれる?」
「材料支給してくれるなら」
「もちろん」
ホルトハウス領は酪農が盛んなのだ。なんてことない。
私とユッテの二人だけど、双六はとても楽しかった。結局勝負はユッテの勝ちだった。
おかげで私は一回戦、ユッテのために勝たなければならない。
武術トーナメントの日を終えないと、私たちの長期休暇はやってこない。
その日、雲のない青空の下、試験は大きな歓声の中で始められた。




