01 転生女子会(間違いではない)を始めましょう
衝動で書いてしまったお話なので、まあ気楽に読んで下され。恋愛とかなんだとかよりも、自分だったらどう書くかということを考えていてできてしまったお話です。
嘘だろ。本当勘弁してくれ。
そう、嘆いた私は悪くないと思う。
此処はかつての日本と異なる世界。
そこに私や彼女たちは転生した。
いつの頃からかぼんやり前世日本の事務員をしていた記憶を思い出していた私の今世は、田舎の下級貴族の第三子。しかしそれはただの記憶で、まあ酪農盛んな故郷でこっそりチーズのお菓子を流行らせようとか画策したりはしたけども、基本この世界に準じた生活をしていた。ちなみにお菓子はまだ流行っていない。前世でも今世でも私の料理の才能は壊滅的らしい。
王立学校に通うのも田舎貴族とはいえ義務であり、三番目ともなれば親や兄たちに迷惑かけないようにどうせなら騎士でも目指そうとか考えていた。間違っちゃいないだろう。
ただ問題は同じ学年に第三王子がいて、そして同じ日本の転生者が三人もいたことだ。
何故転生者とバレたかというと、私の住む領地では手に入れられないものを学校の食堂で食べたからである。前世から私は食べることが好きだった。けして太ってはいなかった。運動も好きだったから、その後に食べるご飯の美味しさがたまらなかったのだ。
我が領地は辺鄙な場所で王都からは馬車を乗り継ぎ漸く辿り着く。海はなく、逆に山を取り囲む土地である。内地故に、且つ交通の便の悪さで食材は限られている。牛と鶏と山菜や木の実はあるが平地になる野菜や果物はなかなかお目にかかることがない。
そんな私の前世の好物はイチゴだ。
今世で口に出来なかったから気にしていなかったが、食堂で見つけてしまったのだから仕方がない。イチゴにしては青みがかっていて丸かったその果物に私は換気の声をあげたのだ。つい、イチゴじゃん!、と。
おかげでバレた。その時は王子から「それはエーアトベーレというんだよ。イチゴってなんだい?」と突っ込まれてしまった。仕方ないのでうちの田舎ではそんな風にいう事があるんです、と濁したがその際名前を聞かれてしまった。ホルトハウス領は確かに田舎だがそんな言い方はしない。帰ったら濁して伝えておこう。
その時は逃げたものの、実際バレたのが判明したのは翌日のことだ。入学して間もない時期、クラスメイトたちもまだ誰が誰か覚えきれていないのに、女子に呼び出された。
女子、である。
今世の私は残念ながら男である。
不細工とは言わないが、平凡も平凡薄味の顔をしていると自覚はある。呼び出される覚えが一つしかなくて怯えたのはまだ三月前の思い出だ。
案の定呼び出しは前日のイチゴ事件のことであった。今でこそ友人であるユッテは率直に転生者であることを聞かれ、本人にも打ち明けられた。しかもそれを三回こなした。
おかげで今、三人の転生女子と前世女子の私での女子会(と仮に呼ぶ)が定期的に開かれている。
そこで冒頭の叫びに戻るのだが――私がわかっていたのはただ転生していたことだけ。何かのゲームか小説の世界などとは思っていなかった。それが今日の女子会 (いいよね)で実は乙女ゲームの世界だったことが判明した。
そんなことは知らないままでいたかった。
実際私や他の三人は名前すら出てこないモブの存在らしい。しかし三人は知っていた。そして第三王子が攻略対象で、ゲームなら今度の長期休暇を終えた後、転入してくる予定であるということを告げられた。
関わりたくないが、王子とはイチゴ事件以来、妙に懐かれている。
「イチゴ君、だからちょっと会議するわよ。ヒロイン対策会議よ」
そう言った友人ユッテにジビラとクリスタもふかーく頷いた。