第六話「複雑」
「千秋、校門でね」
「あぁ」
テニスラケットを持つと千秋は一条君と部活へと向かう、
それを私は教室の扉で送る。
さてと、私も行かなきゃね…!
「ひよりー!部室行こー」
「うん、分かった~」
私は鞄を取りに行こうと自身の席に向かう、
すると複雑そうな表情を浮かべる鈴の姿が目に入る。
「鈴…?」
声を掛け数秒後、遅れた様に鈴が私に気づく
「――あっ、真冬?どうしたの?」
「いや、何でも無い…。ただ鈴が気になって」
やっぱり男子バスケ部のマネージャーは大変なのかな、そう思い私は声を掛けたのだ。
「大丈夫だよ。試合が近いなって考えただけだからさ」
じゃ、私行くから!っと鈴は自慢のポニーテールを揺らしながら教室を去る。
その後ろ姿を見て浮かぶのは先程の表情、
試合が近いと言うだけであんな表情になるものなの?
そう思いつつ、私は彼女と同じ部活動である坂月君の姿を探す。
(――居た!)
丁度教室から出そうな所だった、それを私はひよりに一言掛け追う。
「坂月君!」
「あ、皇。どうした?」
「あの…、鈴に何かあった?」
「鈴?あぁ、柚樹の事か。別に…特に変わった様子はねーと思うけど」
悩む仕草をすると坂月君は何時もとは違った真剣な表情を浮かべ
何かあったのか?と真面目なトーンで言う。
「…ただ、気になっただけだよ」
私の見間違い、そう言う理由でその話を終えた。
けれど…
(やっぱり、あれは…見間違いじゃないよね)