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絶対他人拒否領域の確立論

 ハヤトが学園に着く頃には昼飯時を一時間ほど過ぎていた。

 結局のところ、ハヤトは学園に居てもやることがない。勉学を教えてくれるはずの教師がまるで相手にしてくれないため、授業を聞くよりも一歳年下の妹に教わったほうが早いというレベルだ――ただし、出席しなければ進級できないためたまに参加はする――。そんな居てもただの時間の無駄の学園でも、たった一つだけ有意義に過ごせるスペースが存在した。


 それが――――図書館である。


 図書館は人との会話を必要としない絶対他人拒否領域を自動的に作り出し、存在する全ての生徒がその領域を形成しているために意思疎通の必要ない平和な世界ができあがる仕組みになっている。

 そして、何より本は嘘をつかない。書かれている内容に虚実は存在するが、それでもその虚実を捻じ曲げるようなことを本は絶対にしない。本はただ写し出された情報を媒体として他人へと何一つ欠くこと無く提供する一昔前の通信手段だ。通信手段に情報を捻じ曲げるなんて無駄な機能をどうやら人類は作り出すことはなかったようで、ハヤトは書籍を本当に信用していた。

 昨日借りた本の続きを早速読み始めたハヤトは、正夢という事柄についての難しい記述を流すように読んでいく。本の続きのうち半分を読み終えた時点でこの本のオチがなんとなく読めてしまい、少しだけ落胆した。

 結論からすれば、人類は未だに脳というものを解明できておらず、また正夢は脳の解明とともに分かっていくであろうということだった。しかし、一つだけ面白いことが書いてあることにハヤトが気が付かないはずはない。


 夢には精霊は存在しない。


 そんな一文を読み、ハヤトはなるほど面白いと思う。


 精霊は五大元素、つまり世界のありとあらゆる素材に付着する目に見えない存在と定義されている。精霊とは、火、水、木、金、土――あるいは火、水、地、風、土――に分けられる世界構造を支える、文字通りの世界に無くてはならない存在である。だが、夢世界はその世界構造に含まれてはいない。要するに、夢世界を作り出すのに土や空気は必要ないということだ。


 こういった事柄は他の本ではなかなか見られないものだった――そもそも、世界構造に一々触れる作品のうほうが稀ではあるが――。

 この一冊で時間にして約三時間ほど時間を潰した頃。外が騒がしいことに気が散って、ハヤトは何事かと思い外を見た。すると、そこには見たことがある可愛らしい女子と三名の男子生徒が抗議か喧嘩のような騒ぎを起こしていた。


「おいおい。何やってるんだ、アキは……」


 女子の方は妹のアキであったが、男子生徒はネクタイの色を見る限りハヤトと同じ学年の生徒、つまるところアキにとっては上級生に当たる人物たちだった。

 成績優秀で美人。そんなアキは滅多に怒らず、また喧嘩をしないことで有名だった。そんなアキが青筋を立てるほど怒りを見せて男子生徒に食いついていく。ハヤトは自分以外に本気で怒るアキを物珍しそうに見ていたが、どうしてそうなったのかはまるでわからなかった。

 珍しいアキを見たことでハヤトは尋常じゃない問題が起きているのかもしれないと思って、何もできないであろう自分は手を出さないほうが無難であるに違いない。そんな究極論を立てて、読書を再開した。

 しかし、


「先輩! やっぱりここに居ましたか! ちょっと来てください!」

「……なあ、フィール」

「なんですか、この大変なときに!」

「ここは図書館だ」

「それがなんですか!?」

「だから、会話は厳禁だ」


 初めてフィールと出会ったときと同じ言葉を繰り返すと、隼人の言葉に相当に感極まったのかフィールの体が揺らいだ。とも思っているうち、フィールが頭を抱えたかと思うとバカを見る哀れんだ目で俺を見つめて、思いっきり息を吸った。そして、


「先輩はバカですか!?」


 心の奥底から何の包みもなく、ただただ思いっきりハヤトを罵倒した。

 確かに、ハヤトでも大事のときにこんなことを言われればそう答えてしまうかもしれないが、流石に哀れんだ目までは加えないだろう。その代わり、冷たい目にはなるが。

 そんなこんなで、フィールとの再開を祝して、ハヤトはさっさと出て行けと目で伝えようとするが、自分勝手で気が強く、何を考えているかわかったものじゃないフィールは、お構いなしにハヤトの首を掴んで引っ張る。


「外でアキちゃんが! 大変な目に! 遭ってるんです!」

「く、首を締めるな……ちょ、おま……マジで、死ぬって……」


 十六歳の腕力と言ってもヤンチャな性格の女子の力は計り知れない。そんな腕力にハヤトはノックアウト寸前に差し掛かった。

 そら見ろ、と。今にも死にそうなハヤトに窓の外を指差して外で喧嘩をしようとしているアキと男子生徒の光景を無理やりハヤトに見せようとする。

 でもハヤトは、やっぱりな、と。息ができない状況の中で思う。外では、普通ではあり得ない景色が広がっていた。そう、例えるならば地面から雷が降ったような、そんな景色だ。


「う、嘘ぉ……」


 首を絞めていることすら忘れて、フィールはその異景に目を丸くして見入っていた。

 どういう経緯でそうなったかは不明だが、きっとアキのことだから勝手に触られたとか、気に入らないことを言われたとかで喧嘩に発展したのだろう。そうでなければアレほどまでに怒り狂うなんてことは考えられない。

 アキはとてつもなく可愛い魅力的な女性であるが、決してハヤト以外に媚を売らない。事故やちょっとした反動を除いて、許可無しで異性が触れれば天変地異を起こしかねないほどに怒り狂い、相手を再起不能にまで陥りかねない激情を持ち合わせている。

 その激情は若干十歳で同い年の男子の『悪戯で胸を触る』という破廉恥行為で、頭蓋骨にヒビと全身複雑骨折を素手で行うほどの過激さで。そういうこともあって暗黙の了解という名目で命を守るためにアキのファンクラブはハヤトよりも奥へは入らないというルールが存在していたのだ。

 もちろん、そんなことをフィールが知る由もなく、単に女子が男子に単純な力では勝てないという安易な考えでここに来たことだろうと考え至る。ハヤトは息苦しいのでフィールの頭を叩いて、手から逃れると酸素を供給する。


「……痛いです」

「自業自得だ。勝手にやってきて勝手に首絞めて殺害しようとか、今時の暗殺者は随分と大っぴらだな」

「暗殺者じゃないです。ピチピチの女子高生ですよ!」


 そんなことを話しているんじゃない。ハヤトはつくづく話の通じないフィールに嫌気が差しそうで差さないもどかしさに、もう一度フィールの頭を叩いた。すると目に涙を浮かべて上目遣いになってやめて欲しいと、目で意思疎通するフィールに少しだけ快感を得そうになる。

 力は入れてないし、音も大したことがないのに痛がるフィールに面白さを見つけそうになって、どうにかその道からは逃れたハヤトであったが、お詫びも兼ねて外の光景を簡単に説明する。


「フィール、精霊の五大元素を言ってみろ」

「え? えーっと、火、水、木、金、土……ですよね?」

「ああ、そうだ。じゃあ、さっきの光景はその五種のどれに近かったと思う?」

「……むしろ、そのどれにも属さないように見えますけど、アレは一体?」

「アキは五大元素はもちろん思うように扱えるけど、その他に人間が扱うことが難しいとされる『風』属性の精霊を使えるイレギュラーだ」


 風属性。風、とは空気の流れ。アキは小さい頃から精霊使いとしての才能を発揮して、よもや人類では扱うことが困難とされる風を読み、扱うことができる数少ない存在である。そして、風を身に着け、五大元素の中から水、金を織り交ぜた精霊機獣は雷を発生させる獅子の姿を模した一体の大型の機獣として現れる。

 その凛々しさはまさに王の姿勢。何者にも屈さず、何者にも劣らぬ輝きを放ち現界した。


「あ、あれが精霊機獣……ですか? あんなの、もう……」

「生物じゃないかって? 違うよ。アレには心臓はない。破壊するには召喚者であるアキを止めなければならない。何より、生物にして存在が濃すぎる」


 精霊機獣とは姿形のない精霊に無理やり形を与えたり、形あるものに精霊を植え付けることで完了するカラクリ人形である。それ故に、精霊をたくさん含んだ精霊機獣は強さに比例して存在の濃度が増していく。姿形は好きなようにすることができるが、思った通りにするには並大抵の努力では抗うことができないハードルが存在する。

 アキが召喚した獅子は扱いの難しい風属性と水、金属性の三種から成る最高レベルの難しさを誇る融合精霊機獣と分類される特殊な精霊機獣である。作り出すことはもちろん、維持することも大変なものだが、そのステータスは通常の精霊機獣とは比べ物にならないほど高い。


 アキの精霊機獣についての説明を長々とフィールに行ったがそんなことはすでに知っているという目で睨まれたので、ハヤトはそうですかと読書に戻った。


「って! そうじゃないですよ、先輩!」

「だからだな、フィール。ここは――――」


「あんたたち、ここは図書館だよ! 静かにできないなら出てってくんな!」


 どうやら図書館の司書に目をつけられていたようで、ハヤトとフィールは追い出されるように図書館から追放された。こうして、行き場所を失ったハヤトはその原因でもあるフィールに冷たい目で見た。

 申し訳ないと思っているが、そんなことは関係ないと。フィールはハヤトの手を掴んで走り出そうとする。が、ハヤトがそれを受け入れるかは別問題であった。


「どこに行く気だ?」

「アキちゃんのところですよ?」

「……なんで、そこまでお前がアキにこだわる? そんなに仲がいいわけじゃないだろ」

「? なんでって、先輩。じゃあ、さっきの事件の損害をアキちゃん一人に押し付ける気ですか?」


 フィールの言い分に、何を言っているのか皆目検討がつかないハヤトはふと廊下の窓からアキがいるところを見ると、あら不思議。精霊機獣は消えているが精霊機獣の余波で色々と吹き飛んだものが沢山あるではありませんか。

 ハヤトは、妹の才能に心を痛めながら、出来はしないだろうが現実逃避をするしか無い。そう思っていると、「さあ行きますよ」なんて言って強引なフィールにアキの下まで引きずられていくのだった。

 ハヤトはそんな状況の中でも自前の無関心さと諦めの同時発動によって現実逃避を確立しようとする。しかし、それもアキの精霊機獣を見て覚める儚さではあったが。

 アキが起こした強烈な精霊機獣――名を『世界にクー轟かせる雷鳴の産声ター』――の余波は地面を割り、ガラスを破壊し、壁にヒビを入れるほどの威力だった。図書館という割りと近い場所にいたために幸いにも他の生徒達が来る前にハヤトとフィールが駆けつけることができた。

 どれだけの天才なアキでも怒りで我を忘れていたとは言え、高電圧の電撃を何の防御もしていない人間にぶつけるなど罪の意識が出ないわけはない――ただし、大分にあるとは誰も言っていない――。

 案の定、駆けつけたハヤトとフィールから見たアキはいつもとほとんど変わらない様子であった。


「あ、お兄。どうしよう、お兄をバカにしたからクーちゃんにお仕置きしてもらったら、やりすぎちゃったみたい……」

「そもそも精霊機獣を出した時点でやりすぎだ。お前なら精霊にちょっと声かければこいつら程度なら倒せるだろ? それと、もう少し罪の意識を感じたほうがいいぞ……」


 あ、と。思い出したかのようにハヤトの提案を採用しなかったことに驚くアキ。当然、ハヤトは怒り狂ったアキを知っているので、そんな単純なことでさえも思いつかないことなどわかりきっていた。ゆえに、気が付かなかった事自体には驚きはしなかったが、昔からそういうところだけが治らないのが不思議で仕方なかった。

 さて。ハヤトは気を取り直して、自分のことを悪く言っていたという男子生徒の存命を確認した。生憎、生きていた男子生徒たちをそのままにアキが起こしたという問題をどうにかカモフラージュしなければならないと。誰かが来る前にどうにかしようと考えを巡らせる。

 だが、名案など早々に思いつくようなら今頃劣等生以下の扱いなど受けているはずもなく、然るべくしてハヤトの頭ではいい案は浮かぶ兆しさえなかった。


「いっそ、そこの男子生徒たちが暴れてたってことにすればいいんじゃないか?」

「……はぁ。先輩ってやっぱりバカですね。此処は体育館裏ではないんですよ? アレだけの雷鳴を聞いて窓から覗かない生徒は居ないと思いますけど?」


 確かに。ハヤトは除くとして、明らかな爆音が響いた瞬間、人間はその音源を見ようと自然と動くはずである。なればこそ、この光景を見たという人物が居てもおかしくはない。現に、ハヤトとフィールが図書館で事件の一端を見ている時点でそれは立証されていた。

 困ったことに、案も思いつかなければ対策すら取れていない。存在していないハヤトはいいとして、アキの成績に傷がつくのはハヤトとしても避けたいことでもあった。

 さらに言えば、この場のフィールもこの事件を広めたくないという考えがあったようで、不意にハヤトたちに助け舟を出した。


「一つだけ条件を飲んでくれるなら、この事件をなかったコトにしてあげてもいいですよ?」

「……なんだ、その満面の笑みは。一応聞くけど、その条件っていうのは?」

「先輩が私の言うことを一つだけ無条件で聞くことです」



「絶対に、ダメェェェェェェェェェエエエエエエエエエエエ!!!!」



 地面を割った雷鳴と同じくらいの悲鳴に似た雄叫びはアキの口から発せられたものだった。ハヤトでさえも聞いたことが無い音量の声に驚き、一体全体どうなっているのだ、と。ハヤトは怒っているアキをなだめた。


「ど、どうしたんだ、いきなり」

「ダメ! 絶対にダメ! その人、何考えてるかわからないし、可愛いし、胸も大きいし、なんかエッチな目してるからお兄に絶対よくないことする!」

「褒めるか罵倒するかどっちかにしろよ……。確かに、考えてることはわからないけど、こいつにも何か良くないことがあるんだろ?」


 そうハヤトが問うと。可愛いと言われたのがよほど嬉しかったのか、満足げな顔で胸を張って大きくもない背を大きく見せるフィールを引っ叩こうか本気で悩んで、面倒なことになる前に話させることにした。

 フィールの言い分によれば、ここでアキに問題を起こされると面倒なことになるようで、それはフィールにとっても芳しいことではないようだ。だから、お互いのために此処は助け合おうというのだ。


「じゃあ、俺がお前の条件を飲むっていうのは? お互いのためなら対価なんていらないだろ?」

「先輩は別口なので! ただ単に私の言うことを聞いてほしいだけですよ?」


 さらっととんでもないことをカミングアウトするフィールを今度こそ引っ叩いて、ハヤトとアキはフィールの案に乗っかった。

 かくして、フィールの案はこうだ。『逃げるが勝ち』。バレていようがバレていまいが、嘘を突き通せばいいという単純なものであった。


「……お前さ。自分が言ってた言葉の意味を本当に理解してるわけ?」

「はい、もちろん」

「じゃあ、なんでそんな馬鹿げた案が思いつくんだよ! お前、バカじゃないのか!?」

「バカにバカって言われたくありませんよ!」


 バカが二人、言い争っている間にも人だかりが出来上がっていた。流石に、この中を自分たちは無関係ですとポーカーフェイスを崩さずに突き進むのはハヤトもアキもできることではなかった。

 やがて、教師まで駆けつけて、完全に逃げられないと思った矢先、フィールがマイクを片手に集まった人たち全員に問いかける。


「えー、お集まりの皆々様。皆様がお集まりになられたのは先程の轟音のせいだと存じ上げますが、その轟音を出したのはそこの伸びている男子生徒たちで間違いありませんでしょうか?」


「「「「「もちろん!!」」」」」


「事件の概要ですが、そこの男子生徒たちが遊びで精霊機獣を召喚しようとした際に失敗。とてつもない轟音とそれに伴った余波によってこのような惨事が起こったと思われるのですが、いかがなものでしょうか?」


「「「「「文句なしの大正解!!」」」」」


「だ、そうですよ。先生方?」


 フィールの濁り一つ無い綺麗な笑みは華麗に嘘を伝える。教師は事件のことをまったく見ていなかったのか、了解したと言って伸びている男子生徒たちを担ぎ上げて何処かへ連れて行ってしまった。

 が。ハヤトが気になったのはそこではない。もう、フィールがこういったことをしても不思議ではないとさえ思えてしまうほどに感覚がズレてしまっているのかもしれないが、生まれつき色々とネジ曲がっているのでお構いなしに、種明かしを要求する。


「フィール。どうやってこんなことをした?」

「はい? 私はただ問いかけただけですけど?」

「問いかけただけで、ここにいる奴らが全員同じ嘘を付くなら、世界は戦争なんてしない。どんなトリックを使ったんだ?」


 と言われましても、と。困った顔をするフィールは、懇切丁寧に説明を開始する。


「ここにいるのは男子生徒です。女生徒は一人も居ません」

「ああ。それが?」

「男子生徒は全て、アキちゃんのファンクラブへ加入しているのが確認されています。なので、トリックというよりかは、ただの意思の統一に近いんですよね」


 ハヤトは、意思の統一などという事柄よりも妹のファンクラブに加入しているのが自分を除いた全男子生徒であることのほうが驚きであった。確かに、可愛い魅力的な女子ではあるが、それほどまでに男子を狂わせる狂気を孕んでいるのか妹は。そんな完璧すぎるアキに半分呆れて半分誇らしげにハヤトは聞いていた。

 しかし、意思の統一ということにもちゃんと疑問を持っていたので、その続きを聞いてみることにした。


「例えば、先輩は好きな人が事件を起こしたとしましょう。どうしますか?」

「縄で縛って騎士団に突き出す」

「……普通はですね、どうにかして助けようと考えるんですよ。それを逆手に取ったんです」


 ハヤトの迷いのない解答に呆れを覚えたのはフィールのみならずアキまでも同じく首を振ってなっていないと呟いた。当のハヤトはどう考えてもそれ以外の選択肢なんて無いだろ、と。そう思いながらフィールの言葉に耳を傾け続けた。


「好きな人を助けたい。なので、私がその道筋を立ててあげて、見事アキちゃんは救われました、はいパチパチパチ。さて、アキちゃん。そんな、頑張ってくれたファンクラブの皆様に一言!」


「え? え、えーっと。じゃあ、解散」


 仕組まれたようなフィールの言葉にアキの締めが加わって、解散と命令されたファンクラブのメンバーたちは言われるがままに教室へと戻っていった。

 ハヤトはファンクラブというものがどういうものなのかはよく分かっていなかったが、力になろうとして駆けつけて使われるだけ使われたら捨てられるという、使い捨てられる男子生徒を見て、「ああ、人生はかくもまあ無残なことをするのだろう」と思いつつ、今度からはもう少しだけ近づけさせてあげようかと同情する次第であった。

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